中国勢半導体産業台頭に、日本企業の危機感

2026/04/27 12:00

近年、中国の半導体産業が急速に台頭し、日本企業に強い危機感が広がっている。特にパワー半導体分野では、中国企業による安価で高品質な製品の拡販が、日本メーカーの市場シェアや収益を脅かしている。三菱電機の漆間啓社長は、中国勢の攻勢を「低コストのチップ開発を急ぐ必要がある」と繰り返し警鐘を鳴らし、ロームや東芝との事業統合協議に踏み切った。この動きは、日本パワー半導体業界全体の再編を象徴するものであり、中国の国家戦略がもたらす構造的脅威に対する防衛策だ。

 中国の半導体産業台頭の背景には、政府主導の強力な政策がある。「中国製造2025」では、半導体の国産化率を2025年までに70%に引き上げる目標を掲げ、国家IC産業投資基金(Big Fund)を通じて巨額の補助金や低金利融資を投入した。2024年時点で、中国の半導体製造装置の国産化率は4%から21%へ急上昇。米国などの輸出規制を回避するため、成熟プロセスやパワー半導体に注力し、EV(電気自動車)市場の拡大を追い風にサプライチェーンを内製化している。

 特に注目されるのは炭化ケイ素(SiC)パワー半導体分野だ。Omdiaのデータによると、2024年のSiCパワー半導体販売額上位10社に中国企業3社がランクインし、合計シェアは約8・8%に迫った。BYDはロームを抜いて世界5位に浮上し、揚州揚傑電子科技(Yangjie)なども量産体制を強化中だ。中国政府はSiCウエハーやエピ成長装置の国産化を推進し、EV最大手BYDが自社内製化を進めるなど、価格競争力を武器に国際市場に食い込んでいる。これに対し、日本企業の輸出は対中を中心に微減傾向にあり、2023年をピークに構造的な縮小リスクが高まっている。

 こうした中国勢の攻勢は、日本パワー半導体メーカーに直接的な打撃を与えている。パワー半導体は家電からEV、鉄道、送配電網まで幅広い用途を持ち、省エネ性能が鍵となる。三菱電機は高電圧領域で国内トップ(世界4位、シェア約4・6%)を維持するが、車載向け比率はわずか12%と低く、EVシフトの停滞の影響は相対的に小さいものの、全体市況悪化は避けられない。ローム(車載比率50%)や東芝(40%)はEV需要減で打撃を受け、ルネサスエレクトロニクスがSiC事業から撤退するなど業界全体が苦境に立たされている。

 三菱電機の漆間社長は、こうした危機感から国内メーカーへの統合を呼びかけてきた。中国に負けない低コスト開発と高付加価値化を目指し、「省エネ性能で中国製を凌駕し、適正収益を確保する」と強調する。原料調達や開発部門の一本化によるコスト削減、生産能力の効率化が期待される。2026年3月27日には、ローム・東芝・三菱電機の3社がパワー半導体事業(東芝はアナログ半導体含む)の統合協議を開始した。デンソーによるロームへの買収提案(約1・3兆円規模)がきっかけとなり、統合実現で世界シェア単純合算2位(Infineonに次ぐ)となる可能性がある。

 しかし、再編の道は平坦ではない。ロームは工場再編による固定費削減をメリットに挙げるが、三菱電機は福岡・熊本の新工場をフル稼働させる積極投資を進め、生産能力の多寡を巡る調整が難航する恐れがある。かつて三菱電機がデンソーとの協業を模索した際も、生産ノウハウの主導権争いで頓挫した経緯がある。各社が独自技術を確立しているパワー半導体業界では、統合後のシナジー発揮に「各論反対」の壁が立ちはだかる。

 一方で、日本企業の強みも依然として大きい。高電圧・高信頼性領域での技術力や、材料・製造装置分野での世界シェア優位(シリコンウエハー、フォトレジスト、EUV関連装置など)は、中国の国産化努力を上回る。EV市場の中長期成長やデータセンター需要拡大を捉えれば、省エネ性能で差別化し、価格競争を回避する戦略が有効だ。三菱電機の26年3月期見通しでは、半導体事業売上高2900億円(前期比1%増)、営業利益420億円(3%増)と好業績を維持しており、好条件を引き出せば統合参加の意義は大きい。

 中国台頭の影響はパワー半導体にとどまらない。SMICやYMTCなどの中国企業が先端プロセスで進展を見せ、製造装置の自給化も加速。米中対立下で日本は同盟国として装置輸出管理に協力する一方、国内半導体復権策(ラピダス支援、TSMC熊本工場など)を急いでいる。政府は経済安全保障の観点から補助金拡大や産官学連携を強化すべきだ。

 今後、日本企業は危機感をバネに再編を成功させ、規模の経済と技術革新を両立させる必要がある。中国の補助金依存型成長は「内巻き」(過当競争による非効率)を招くリスクもあるが、EV内製化やサプライチェーン構築は着実に進む。日本のパワー半導体が「最後の砦」として生き残るか、それとも液晶・太陽電池の二の舞いとなるか、2026年の統合協議の行方が鍵を握る。日本企業は個社の利益を超えた「日の丸連合」の実現で、中国勢に真正面から対抗できるのか。グローバル競争の激化の中で、技術力とコスト競争力の同時強化が、産業存続の唯一の道だ。

(中国経済新聞)