バイトダンス、売上28兆円でも利益急減 AI投資が招く「成長と収益の乖離」

2026/04/27 10:30

2025年4月20日、インターネット大手のバイトダンス(ByteDance)の業績を巡る一報が市場に衝撃を与えた。「2025年の純利益が前年比で70%以上減少した」との報道である。抖音(ドウイン)とTikTokという巨大プラットフォームを擁し、「高収益神話」とも称されてきた同社の収益動向は、中国のみならず世界のテック業界に強い影響力を持つ。それだけに、今回の報道は資本市場と業界関係者の双方に大きな波紋を広げた。

もっとも、同時に示された別のデータは、単純な業績悪化とは言い切れない複雑な実態を浮き彫りにしている。2025年の同社売上高は約1860億ドル(約28兆円)と推計され、前年比20%増を記録。Tencent、Alibaba Group、Baiduといった中国IT大手を上回り、国内首位に立った。特に海外売上は前年比約50%増で、全体の30%を初めて突破。TikTokの電子商取引(EC)事業が成長の主軸となっている。

この「増収減益」を巡り、同社副総裁の李亮はSNS上で説明を行った。純利益の大幅減は国際会計基準に基づく数値であり、優先株やストックオプション関連コストの変動が影響していると指摘。そのうえで、抖音のEC事業の成長鈍化や新規事業投資の拡大により、2025年下半期の営業利益率がやや低下したことは認めたものの、「実態としては売上・利益ともに成長している」と強調した。

とはいえ、経営面の圧力が高まっている点は否定できない。現在、ライブコマースは成熟期に入り、流入トラフィックの獲得コスト上昇や利益率の低下が進行している。加えて、人工知能(AI)や大規模言語モデルといった新領域への投資が急増し、短期的な収益とのミスマッチが顕在化している。

実際、利益低下は2025年第3・第4四半期に集中しており、AI投資の急拡大と時期が重なる。2026年4月、クラウド・AI事業を担う火山エンジンの責任者である谭待は、大規模モデル「豆包」の1日あたりのトークン使用量が120兆を超えたと明らかにした。業界の試算では、これに伴う計算資源コストは1日あたり5000万~1億元(約10億~20億円)規模、年間では300億元(約6000億円)を超える可能性がある。

さらに、2025年の設備投資額は1500億元(約3兆円)を超え、そのうち約900億元(約1.8兆円)がAI関連インフラや半導体、大規模モデル開発に投じられた。日次ベースでは4億元(約80億円)以上に相当し、売上の成長と利益の伸びが大きく乖離する要因となっている。

事業構造を見ると、国内と海外で明確な分化が進んでいる。国内売上の伸びは約20%にとどまり、海外の50%増と比べ見劣りする。広告事業も成長鈍化が顕著で、抖音の広告成長率は30%超から20%未満へ低下した。中国の短編動画ユーザー数はすでに10.74億人に達し、普及率は95%を超えるなど、市場は飽和状態にある。

競争環境も激化している。抖音の1日あたり利用者数(DAU)は7億人を超え、動画号が6億人規模、快手が続く三強構造が形成されている。もはや新規ユーザー獲得ではなく、既存ユーザーの価値最大化が競争の中心となり、広告単価の伸び悩みも見られる。

加えて、EC化の進展はユーザー体験にも影響を及ぼしている。コンテンツと販売の境界が曖昧となり、「動画10本中7本が商品紹介」といった声も出るなど、プラットフォームの性格変化が指摘されている。苦情件数の増加もあり、広告誘導やカスタマー対応、未成年保護などの問題が浮上している。

一方、新たな成長領域である地域密着型サービス事業は、2025年の流通総額(GMV)が約712億元(約1.4兆円)と59%増を記録。ただし、Meituanとの競争激化に伴い、補助金や営業投資がかさみ、年間200億元(約4000億円)以上を投入。その結果、50億元(約1000億円)超の赤字となり、全体収益を圧迫している。

海外事業は引き続き好調だ。TikTokの広告収入は331億ドル(約5兆円)で40%超増、EC事業の流通総額は1000億ドル(約15兆円)に迫る勢いだ。ただし、その裏では規制対応コストが重くのしかかる。米国ではデータ安全対策として50億ドル(約7500億円)以上を投じ、さらに年間10億ドル(約1500億円)規模の運用コストが発生。欧州でも一般データ保護規則(GDPR)対応や制裁金、データセンター投資などでコストが急増し、利益率は米国の半分程度にとどまる。

また、TikTokのEC事業は急成長しているものの、低手数料(1~2%)や物流補助の影響で収益性は国内より低い。インフラ未整備や越境決済の課題もあり、利益創出には時間を要する見通しだ。

こうした中、同社の戦略の中核を担うのがAIである。最高経営責任者(CEO)の梁汝波は、AIを「PCやインターネットを上回る機会」と位置づけ、「豆包」や企業向けのモデル提供サービス(MaaS)事業を次の成長の柱とした。ただし、現時点で「豆包」は無料提供が中心で直接的な収益はなく、火山エンジンも依然として投資先行の段階にある。

さらに問題視されているのが、資源配分の偏りである。AI投資を優先するあまり、抖音やTikTokの製品改善やユーザー体験への投資が抑制され、アプリの動作遅延や広告過多、コンテンツの同質化といった課題が顕在化している。海外でも一部市場で投資縮小が進み、ユーザー成長の鈍化につながっている。

バイトダンスの強みは本来、アルゴリズムとプロダクト力によるユーザー基盤にあった。しかし現在のように「基盤技術偏重・フロント軽視」の投資構造が続けば、その競争優位そのものが揺らぎかねない。

増収を維持しながらも利益が急減するという現象は、同社が「次の成長曲線」を模索する過渡期にあることを示している。AIへの巨額投資が将来の収益源へと転化するのか、それとも既存事業の収益力を損なうのか――その帰結は、世界のテック産業の行方を占う試金石となりそうだ。

(中国経済新聞)