中国のコーヒーチェーン大手、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー、Luckin)は、中国のコーヒー市場を劇的に変革した存在だ。2017年に創業したこの企業は、わずか数年で店舗数を爆発的に拡大し、2025年末時点で総店舗数3万1489店に達した。これは1日平均約24店舗の新規出店という驚異的なペースを意味する。売上高は前年比43%増の492億8800万元(約1兆1300億円)、営業利益は50億7300万元(約1167億円)と、堅調な業績を上げている。中国国内が3万888店を占め、海外市場もシンガポール(81店)、マレーシア(70店)、米国(9店)と着実に進出を進めている。

かつては不正会計スキャンダルで存続の危機に陥ったが、そこから見事な復活を遂げ、米スターバックスを店舗数・売上高で上回る「中国最大のコーヒーチェーン」となった。その背景には、低価格戦略とデジタル化を軸とした革新的なビジネスモデルがある。
■創業の背景
ラッキンコーヒーの物語は、2017年6月に遡る。創業者である銭治亜は、元UCAR(中国のライドシェア企業)の幹部で、ライドシェアのビジネスモデルをコーヒー業界に応用するアイデアを持っていた。UCAR創業者の陸正耀がシード資金を提供し、北京で最初の店舗をオープンした。当時の中国コーヒー市場は、スターバックスが支配的だったが、消費者は高価格に不満を抱いていた。平均年収が低い中国で、スターバックスの一杯30元(約600円)は高嶺の花だった。
