医療反腐敗をさらに強化へ 5月から医師のリベート60万円で刑事責任の可能性

2026/04/23 19:00

2026年5月1日、中国で医療分野の反腐敗を一段と強化する新たな司法解釈「汚職・贈収賄刑事事件の法律適用に関する解釈(二)」が施行される。最高人民法院と最高人民検察院が共同で公表したもので、医療業界における不正行為への刑事責任追及が大きく変わる可能性がある。

同解釈では、医療分野を含む領域において法人による贈賄(単位行賄罪)を重点的に処罰対象とし、情状に応じて厳罰化する方針が明確にされた。また、これまで公務員とは区別されてきた非公職者の収賄についても、公務員に準じた基準で定罪・量刑を行うとされる。

とりわけ影響が大きいのは、医師など非公職者に対する収賄罪の適用基準である。従来よりも厳格化され、「金額が比較的大きい」と認定される起点が3万元に設定された。これにより、医療反腐敗の対象は一部の管理職層から一般の臨床医へと広がる見通しとなった。

医療業界では近年、「無償提供」を装った不正取引が問題となっている。典型例として、医療機器メーカーが病院に設備を無償で提供する一方、試薬や消耗品の購入先を自社に限定させることで、継続的な収益を確保する手法が挙げられる。検察当局が公表した事例では、こうした行為が競争を歪める不正行為として是正措置や行政処分の対象となっている。

山東省では、医薬流通企業が病院に複数の検査機器を無償提供し、その後の消耗品購入を自社に限定させていたケースが確認された。数百万元規模の売上を上げていたが、最終的に違法所得の没収と罰金処分が科された。同様に、別の医療機器企業が分析装置の無償提供と引き換えに試薬購入を条件付け、違法所得を得ていた事案も摘発されている。

また、「超低価格入札」と呼ばれる手法も横行している。設備を極端に低価格、場合によっては名目上1元で落札し、その後の消耗品供給で利益を確保する仕組みである。こうした行為は調達の公正性を損ない、医療費の上昇や患者負担の増加につながると指摘されている。

これらの行為が続いてきた背景には、構造的な要因がある。企業にとって、消耗品は高頻度で使用される安定的な収益源であり、機器を入口として市場を囲い込む強い動機が存在する。また、「無償提供」や「低価格リース」などの形式をとることで、合法と違法の境界が曖昧になりやすい。さらに、医療機関、メーカー、販売業者など複数の主体が関与し、取引が見えにくい点も監督を難しくしている。

医療機関側にも受け入れの動機がある。特に中小規模の病院では設備投資の予算が限られており、無償提供は診療能力向上の手段となる。一方で、消耗品のコストは保険や患者に転嫁されるため、直接的な負担が小さい構造となっている。

これまで、こうした事案の多くは不正競争防止法などに基づく行政処分にとどまっていた。しかし、新たな司法解釈の施行により、刑事責任の追及が本格化する見通しである。医療分野は単位行賄罪の重点対象とされ、変則的な利益供与も処罰範囲に含まれる。追及可能期間も原則5年、重大案件では最大20年まで遡及可能とされた。

専門家の間では、今回の制度変更により「行政処分で終わるケースは減少する」との見方が出ている。一方で、司法解釈はあくまで基準を示すものであり、実際の適用には捜査や裁判の運用が重要になるとの指摘もある。

今回の制度強化は、医療機器メーカーや医薬品企業に加え、医療機関や医師個人にも広く影響を及ぼすとみられる。医療反腐敗は今後、特定の対象にとどまらず、業界全体を対象とした包括的な段階へと移行していく見込みである。

(中国経済新聞)