6月29日、中国稀土集団有限公司は、傘下の上場企業「中国稀土」における一部の取締役や幹部の人事異動をめぐるネット上の情報に対し、「事実無根」とする公式声明を発表した。
声明では、「今回の人事異動は、企業統治構造の最適化および経営効率の向上を目的とした正常な組織調整であり、すべて制度と規制に基づき透明かつ適切に実施された」と強調。対象者は引き続き集団内の他部署で任務にあたっており、業務に支障は出ていないとしている。また、事実と異なる情報を流布し、世論を誤導あるいは市場秩序を乱す行為については法的措置も辞さない構えを示した。

一連の声明の背景には、6月23日に発表された人事の急な変動がある。中国稀土の公告によると、董事長(会長)である楊国安氏をはじめ、取締役の董賢庭氏、郭恵浒氏が辞任。いずれも株式を保有していないとされている。また、副総経理(副社長)であった賈江涛氏も辞任し、後任に徐建新氏が就任。総経理(社長)を務めていた閻縄健氏は党委書記に異動し、新たな総経理には梅毅氏が就いた。
集団側はこうした人事を「内部のポジション調整」と説明しているが、SNSなどでは「技術者の流出防止や知的財産保護と関連しているのではないか」「中米間の稀土交渉とタイミングが合致している」といった憶測も飛び交っている。
実際、6月27日には中国商務部が中米両国による稀土輸出に関する補足的な相互理解(補充了解)を確認。これにより、中国側は対米輸出申請を法に基づいて審査し、米国側は一部の対中制限措置を緩和する方針を明らかにした。これにより、貿易摩擦の一部が緩和される兆しが見られたものの、中国は「管理政策そのものは変わらず、民間用途に限定して条件付きで輸出を認可する」と強調している。
中国稀土集団は、2021年12月に江西省贛州市で設立された中央企業であり、中国アルミ業集団(中鋁)、中国五鉱集団(五鉱)、贛州稀土集団が保有する稀土関連資産を再編・統合して設立された。さらに、中国鋼研科技集団有限公司、有研科技集団有限公司という技術系企業2社が加わることで、持株の多様化を実現している。集団は国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)の直接監督下に置かれている。
主な業務内容は、稀土資源の採掘、精製、加工、及び関連製品の輸出入であり、「中国稀土」および「広晟有色」という2つの上場企業を傘下に持つ。中国の稀土産業の再編・集中化を象徴する存在であり、戦略物資である稀土をめぐる国家安全保障・産業政策の中核的役割を担っている。
今回の人事異動とそれに続く公式声明は、中国が稀土管理に対して引き続き厳格な姿勢を保ちつつも、国際的な協調の兆しを見せる中で、国家戦略と企業運営の境界線に改めて注目が集まっていることを物語っている。
中国、ハイエンド医療機器の発展を加速へ、国家薬監局が10の支援措置を発表予定
中国国家薬品監督管理局(NMPA)はこのほど、「ハイエンド医療機器の革新発展を支援するためのライフサイクル全体における規制最適化に関する施策」(以下、「施策」)を審議・承認し、近日中に正式に発表する見通しだ。
この「施策」には以下の10の具体的な方策が盛り込まれている:
1,特別審査手続きの最適化
2,分類および命名原則の明確化
3,規格体系の継続的な整備
4,登録審査要件の明確化
5,コミュニケーション・指導および専門家諮問の仕組み整備
6,製品上市後の監督要件の細分化
7,市販後の品質と安全性監視の強化
8,産業発展の動向把握
9,規制科学研究の推進
10,国際的な規制調和の促進
これらの施策は、中国のハイエンド医療機器産業にとって、今後の発展を支える重要な支柱となるとみられている。
中国医学装備協会の楊建龍副事務局長は、「今回の施策の発表は、関連企業にとって大きな追い風となる。特に審査・審批の迅速化や制度の刷新といった点で、非常に大きな意義を持つ」と述べた。
さらに、上海市衛生・健康発展研究センターの金春林センター長は、「リスクに応じた監視体制の構築が鍵となる」と強調。「とりわけ高リスクの製品──たとえばブレイン・マシン・インターフェースやAI手術ロボットなど──については、積極的なモニタリング体制の導入が必要であり、UDI(医療機器のユニーク識別コード)の埋め込みを通じたトレーサビリティの確保や、安全性の年次報告を義務化することが望ましい」と提言した。
市場の見通しも明るい。前瞻研究院の予測によれば、国民の健康意識の高まりとともに、ハイエンド医療機器に対する需要は急速に拡大しており、2030年までに世界全体の市場規模は1.8兆米ドルを突破、中国国内の市場規模は2.8兆人民元(約60兆円)に達すると見込まれている。
高齢化の進行、慢性疾患の増加、AIやロボティクスなどの先端技術の進歩といった複合要因により、ハイエンド医療機器は医療産業の「次の成長エンジン」として注目されている。中国政府が今回打ち出した10大支援策は、制度面・技術面・市場面における一体的な発展を後押しし、同国がグローバルな医療技術革新の舞台で存在感を高める一助となることが期待されている。
(中国経済新聞)