中国の電池企業、マレーシアに総額4200億円超の投資を加速

2025/05/4 10:52

中国の電池関連企業が、マレーシアへの投資を加速している。2024年以降、現地での新工場設立や生産ラインの導入が相次ぎ、これまでの累計投資額は200億元(約4,200億円)に迫る勢いだ。背景には、グローバルなサプライチェーンの最適化と、成長著しい東南アジア市場における競争力強化がある。
2024年4月、中国企業による新たな進出が立て続けに発表された。4月24日には、金陽股份が総額9,000万米ドル(約6.5億元)を投じ、マレーシアにリチウム電池精密構造部品の生産拠点を建設すると発表。建設期間は36カ月を予定している。4月14日には、新宙邦の関連企業がマレーシア・ケダ州の投資発展局と覚書を交わし、電子化学品プロジェクトへの投資意向を明らかにした。
また、2月には海四達が2.5GWhの円筒型電池工場を新設するため、約7.5億元を投資すると発表。2026年第一四半期までに21700型全極耳生産ラインを稼働させる計画だ。星源材質は、未使用の調達資金20.8億元をマレーシアの湿式セパレーターおよびコーティング設備プロジェクトに充当する方針で、総投資額は50億元に達する見込み。生産能力は年間20億平方メートルを目指す。
この動きの先駆けとなったのが、億緯リチウムエナジー(EVE Energy)だ。マレーシア工場はすでに稼働を開始しており、今年2月には現地で初のセルが出荷された。投資総額は4.22億米ドル(約30.7億元)にのぼり、電動工具や電動バイク向け円筒型電池を中心に年6.8億セルの生産能力を誇る。
中国企業がマレーシアを選ぶ理由は明確だ。両国は長年にわたり堅固な貿易関係を築いており、中国はマレーシア最大の貿易相手国、マレーシアは中国にとってASEAN域内で第2位の貿易パートナーだ。近年、マレーシア政府は外資誘致に注力しており、税制優遇や法制度の整備、電動車分野の戦略的支援など、積極的な施策を打ち出している。
特に、EV産業に対する支援は顕著である。マレーシア政府は《国家行動計画2020》を通じて、EVと電池産業を重点分野に位置付け、EVの輸入税・関税免除を2025年まで延長。また、EV解体・組立に関連する税優遇は2027年まで継続される。政府は「マレーシア国内にEVエコシステムを構築し、海外投資家への支援を強化する」ことを明言しており、すでにボルボやメルセデス・ベンツといった欧州系自動車メーカーの地域生産拠点も設立されている。
マレーシアは東南アジアでも稀な、自国ブランド(プロトン、ペロドゥア)を有する自動車生産国であり、2024年の新車販売台数は過去最高の81.67万台に達した。EV市場の成長も著しく、純電動車の販売は前年同期比45.3%増、EVの市場浸透率は5.6%に上昇している。
政府は、2030年までにEVの販売比率を15%、2040年には38%、2050年には80%まで引き上げることを目指し、同時にEV製造の国内比率を90%とする国家エネルギー転換ロードマップを策定している。インフラ面では、2025年までに1万基の公共充電ステーションの設置が計画されている。
こうした動向を踏まえると、マレーシアは今後、中国をはじめとするアジア電池企業にとって、単なる製造拠点にとどまらず、EV関連産業の戦略的ハブとしての重要性を高めていくことは間違いない。

(中国経済新聞)