テンセント・ホールディングス(香港証券取引所コード:00700/80700)は8月、2025年6月30日までの第2四半期(4-6月期)の未監査連結業績を発表した。人工知能(AI)分野への継続的な投資が奏功し、売上高と利益はいずれも2桁の増収増益となった。

馬化騰(ポニー・マー)董事会主席兼CEOは「AIが当社の中核事業全般を支えている」と強調。長期運営タイトル『王者栄耀(Honor of Kings)』『和平精英(Game for Peace)』ではプラットフォーム化とAI活用が進み、新作『三角洲行動(Delta Force)』も好調で、ユーザーアクティブ率と収益の双方を押し上げた。広告事業では基盤モデルの高度化により投放効果が向上し、マーケティングサービス収入が大幅増。微信(WeChat)内のAIネイティブアプリ「元宝(Yuanbao)」も利用拡大が続き、基盤モデル「混元」の能力強化が進んでいる。

業績概要(Non-IFRSベース)
第2四半期の総収入は1,845億元(約3兆8,745億円、前年同期比15%増)、粗利益は1,050億元(約2兆2,050億円、同22%増)。営業利益は692億元(約1兆4,532億円、同18%増)で営業利益率は38%に上昇。株主帰属利益は631億元(約1兆3,251億円、同10%増)となり、一部の一過性要因を除けば20%増となった。
IFRSベース
営業利益は601億元(約1兆2,621億円、同18%増)、営業利益率は33%。株主帰属利益は556億元(約1兆1,676億円、同17%増)。
設備投資は191億元(約4,011億円)と前年同期比119%増。期末時点で現金保有額は4,684億元(約9兆8,364億円)、フリーキャッシュフローは430億元(約9,030億円、同7%増)。
また、6月末時点で上場投資先(子会社除く)の公正価値は7,143億元(約14兆8,503億円)と、第1四半期末から600億元以上増加。非上場投資先(子会社除く)の帳簿価値は3,423億元(約7兆1,883億円)だった。第2四半期には香港市場で約38.88百万株、総額約194億香港ドルの自社株買いを実施した。
AIの全社展開
微信エコシステムでは、コンテンツ閲覧時のキーワード自動検索、微信小店のAIチャットボット、動画チャンネルの自動テキスト要約などを追加。利用者体験や事業者の運営効率が向上した。
ゲーム事業
AIを活用してゲームコンテンツ制作を高速化し、よりリアルなNPCやバーチャル隊友を実装。AI駆動の精密マーケティングで新規プレイヤーを獲得し、既存ユーザーの参加度を向上させた。ミニゲーム基盤の技術改良により互換性や画質、読み込み速度が向上し、総取扱高は前年同期比20%増。

国内では『三角洲行動』が2024年9月の配信開始以来好調で、2025年7月には平均DAUが2,000万を突破し業界トップ5入り。海外ではSupercellの『クラッシュ・ロワイヤル』が過去7年で最高の月間売上を記録。『PUBG MOBILE』や新作『デューン:アウェイクニング』も収益に寄与した。
広告・マーケティングサービス
収入は358億元(約7,518億円、前年同期比20%増)。広告制作、投放、推薦、効果分析の全工程にAIを導入し、クリック率・コンバージョン率・ROIを改善。動画チャンネル、ミニプログラム、WeChat検索での商業需要が拡大した。
映像・音楽
Tencent Videoの有料会員は1億1,400万人、Tencent Musicは1億2,400万人と、それぞれ市場での優位を維持。
フィンテック・企業サービス
収入は555億元(約1兆1,655億円、同10%増)。商業決済の取扱高が回復し、消費者向けローンや資産運用サービスも好調。企業サービスではGPUレンタルやAPI利用などAI関連需要が拡大。
混元モデルの進化
データ拡張や合成技術で学習データの質と多様性を高め、事前学習・事後学習の双方を最適化。3Dモデルは幾何精度やテクスチャのリアリティ、指示適合性で業界トップを維持し、Hugging Faceランキングで1位。ゲーム開発、3Dプリント、デザイン業界での採用が進む。
(中国経済新聞)