吉利、EVの「Zeekr」を日本で売り込み

2024/08/28 13:30

中国は電気自動車(EV)の成長が著しく、ここ数か月は国内販売台数の半分以上を占めるまでになっている。ところが激しい競争の中、各社はつぶし合いを演じており、利益が生まれにくくなる中、当然のごとく海外進出に走り始めている。

こうした流れを受け、利益確保を狙う欧米各国の一部で、「追加関税」により中国製EVを締め付ける動きが見られている。しかし、それら西側諸国の中でただ一つ中国のEVを受け入れている国がある。それは「自動車王国」の日本である。

ビッグサイトにて展示されたZeekerのEV自動車(解体版)

トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、スバル、スズキ、ダイハツの乗用車メーカー主力8社は、2023年の生産台数合計が前年比7%増の2545万台で、このうちトヨタが1000万台以上を占めている。この中で、日本国内の生産台数は16%増の857万台であった。

それでは、国内の年間販売台数はどれほどか。

2023年は447万台で、うち外国車が24.8万台だった。外国メーカーはいずれも日本に製造工場がないので、この24.8万台はすべて輸入車であり、このうちベンツ、BMW、アウディ、VWなどドイツ系が59%となっている。

それでは、これら輸入車のうち中国車はどれくらいか。

公開されたデータでは1446台で、それも全部BYD車である。そのほかに一汽の「紅旗H9」も数十台を売ったとされている。

日本で中国車を売るのは大変なことで、BYDの1446台は並大抵の結果ではない。なにしろ日本は自動車王国である上、ガソリン車へのこだわりが強くてEVに対する評価は今も余り芳しくない。マスク氏率いるテスラでさえ2023年の販売台数は6000台余りにとどまっている。

それでも、日本市場に参入し少しでも王国の一角を占めることは、どの国の自動車メーカーにとっても勲章に値するものなのだ。

中国の吉利汽車も同様であり、パリオリンピックで大きくPRしたEVの「Zeekr」を売り込むべく、今年の秋か冬に日本で店を設けると発表している。

「Zeekr」は、2021年4月に連続走行距離732kmという「001」初披露している。ポジションは高級車でテスラなど同クラスのEVと争うものである。

「Zeekr」の副総裁である陳禹(Chen Yu)氏はメディアの取材に対し、「国土交通省に車検など輸入手続きを申請中であり、年内には東京や関西地区で販売店を設け、2025年には納車開始の予定」と明らかにした。

「Zeekr」はまず、「X」と「009」の2車種を発売する予定である。中国での売値は前者が20万元(約405万円)、後者が43.9万元(約890万円)だ。

吉利は、今年7月に東京で行われた「テクノフロンティア 2024」で「Zeekr」のカットボディーを披露しており、強い自信が示されている。私は会場でこの車を取材したが、多くの日本の自動車メーカー技術者が盛んにその姿をカメラに収めていた。

このイベントではまた、別の中国製EVで話題沸騰中であるシャオミの車も初めて日本に姿を現し、ポルシェのようなスタイルが注目を集めた。シャオミは今のところ日本への進出予定を明らかにしていないが、消息筋によると2025年に販売店を開設する予定という。

2025年は、間違いなく中国製EVによる日本市場争奪への「初年度」となる。日本にある外国製のEVは現在、ドイツのBMW、中国のBYD、韓国の現代、アメリカのテスラのみであり、もし来年に「Zeekr」やシャオミが参入した場合、市場をこじ開けられるかは未知数である。一方でトヨタ、ホンダ、日産など国内メーカーも2026年には全固体電池のEVを本格的に売り出す予定であり、業界は活況を呈し、攻め落とすにはかなりの苦労を要するだろう。

(文:徐静波)

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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。中国第十三回全国政治協商会議特別招聘代表。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者クラブ会員。