中国、2035年に温室効果ガス7〜10%削減へ 「炭素総量管理」時代へ移行

2026/05/11 17:30

上海現代サービス業連合会と第一財経が共催する「2026企業持続可能発展大会」がこのほど上海で開催され、上海科技大学は会場で「中国エネルギー転換報告2026」を発表した。

報告書は、上海科技大学が独自に構築した一般均衡モデル「ETAM」に基づき、中国のエネルギー転換シナリオを包括的に分析したもので、「第15次五カ年計画」初年度におけるエネルギー革命と産業高度化への学術的支援を目的としている。

報告書によると、中国では2026年、気候ガバナンスとマクロ経済運営の枠組みに大きな転換が起きた。中国政府は2035年の国家自主貢献(NDC)目標を正式に確定し、温室効果ガスの純排出量をピーク時比で7〜10%削減する方針を打ち出した。これにより、中国は従来の「炭素排出原単位管理」から、「炭素排出総量管理」へと大きく舵を切った。

また、中国で10年以上続いてきた「エネルギー消費総量・原単位の二重管理」は、「炭素排出総量・原単位の二重管理」へ全面転換された。報告書は、これは単なる指標変更ではなく、規制対象をエネルギー投入量から温室効果ガス排出そのものへ移行させる構造改革だと指摘している。

これにより、風力、太陽光、水力、原子力など非化石エネルギーは、従来の「気候対策コスト」から、高品質成長を支える「中核エンジン」へ位置づけが変化したとしている。

報告書では、中国は2030年に二酸化炭素排出量が約110億トンでピークに達すると予測した。対象には化石燃料燃焼と工業排出が含まれる。2035年には97億トンまで減少し、ピーク比12%減となる見通しで、2060年にはネットゼロ排出を実現するとしている。

エネルギー構成では、2030年までに化石エネルギー比率を75%未満に引き下げ、非化石エネルギー比率を25%超へ高める計画だ。石炭消費比率は2025年比で8ポイント低下し、絶対量でも7%以上減少すると予測している。

2030年時点のエネルギー構成では、風力発電比率が8.06%、太陽光発電が5.75%、水力発電が9.64%、原子力発電が3.48%へ上昇すると試算した。

さらに2035年には、炭素排出とエネルギー消費の完全な切り離しを実現すると分析している。蓄電技術や水電解による水素製造技術の大規模実用化によって、再生可能エネルギーの出力変動問題を解決するとした。

2060年には、風力・太陽光発電比率が46%、原子力発電比率が約17%へ上昇する一方、化石エネルギーは約25%まで縮小する見込みだという。

一方、残る化石燃料由来の排出については、CCS(二酸化炭素回収・貯留)、DAC(大気直接回収)、BECCS(バイオエネルギー+CCS)などの技術によって完全相殺すると予測した。年間約32億9600万トンの二酸化炭素除去能力を見込み、最終電力化率は81%に達するとしている。

報告書は、中国の脱炭素化で最も難しい分野として工業部門を挙げた。特に鉄鋼業では、中国は「二重路線戦略」を採用していると説明した。

新規投資分野では、西北部の再生可能エネルギー集積地帯や沿海部の高付加価値産業集積地で、水素還元製鉄(H2-DRI)を推進する。一方、既存高炉については、高効率ガスタービン複合発電(CCPP)を活用し、高炉ガスの有効利用やCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)との組み合わせで段階的脱炭素化を図るとしている。

また、中国全国炭素市場は、従来の「排出原単位管理」から、「排出総量規制と排出権取引(Cap-and-Trade)」へ移行するとした。2027〜2030年には、鉄鋼、セメント、アルミ精錬など高排出産業も全面的に市場へ組み込まれる見通しだ。

さらに、全国統一電力市場改革についても言及した。補助サービス市場では、蓄電池など高速応答電源に独立収益が与えられ、容量市場の導入によって「発電量への対価」から「供給能力への対価」へ転換が進むとしている。

報告書の中で特に注目されたのが、ガスタービンの役割に対する新たな評価だった。

生成AIの急速な発展によって巨大データセンター需要が拡大する一方、大量の再生可能エネルギー導入により電力網の慣性不足問題が深刻化している。太陽光や風力は同期発電機のような回転慣性を持たず、電力網安定性への課題が増しているという。

こうした中、ガスタービンは単なる化石燃料設備ではなく、AIインフラと再生可能エネルギー大量導入を支える「物理的中核設備」へ変化していると分析した。

さらに、現代型ガスタービンは30〜100%の水素混焼に対応可能で、「水素対応型(Hydrogen Ready)」技術として将来の水素経済インフラの中心になる可能性があるとした。

国際競争面では、中国は太陽光パネル、リチウム電池、新エネルギー車産業チェーンの優位性を背景に、世界エネルギー転換の中心的存在になっていると指摘した。

欧州連合(EU)の炭素国境調整メカニズム(CBAM)については、中国国内炭素市場との相互作用によって、高排出型輸出産業に深度脱炭素化を迫る構造になると分析した。

また、「一帯一路」構想の下、中国は再生可能エネルギーインフラ輸出と化石燃料戦略投資を並行推進していると説明。グリーン水素規格やBECCUS、核融合ガバナンスなど先端分野では、中国が国際ルール形成を主導する立場へ転換しつつあるとした。

報告書は最後に、「中国の脱炭素政策は、理念提示段階から本格的なシステム再構築段階へ入った」と総括した。そのうえで、脱炭素は単なる環境政策ではなく、「熱力学とミクロ経済学に基づく国家資産構造の再編」であり、中国はこれを通じて世界の気候ガバナンスと産業競争における長期的地位を確立しようとしていると分析している。

(中国経済新聞)