中国「五一映画」興行収入は約158億円、『Letters to Grandma』が高評価で話題

2026/05/7 20:00

2026年の中国大型連休「五一」(5月1日~5日)の映画興行は、総興行収入7億5800万元(約158億円)で幕を閉じた。前年同期を上回る結果となり、全体としては堅調な成績を記録した。

中国映画情報サービス「灯塔専業版」によると、期間中の興行収入ランキング上位5作品は、『消失的人(The Vanished)』『寒戦1994(Cold War 1994)』『穿普拉達的女王2(The Devil Wears Prada 2)』『10間敢死隊(The Ten Commandos)』『給阿嬤的情書(Letters to Grandma)』だった。5月6日正午時点で、5作品はいずれも興収6000万元(約12億6000万円)を突破している。

『消失的人(The Vanished)』が逆転首位——連休前の前売り段階では6位にとどまっていたサスペンス映画『消失的人』が、公開後に口コミ評価を伸ばし、最終的に首位を獲得した。累計興収は2億6800万元(約56億円)を突破し、AI予測による最終興収見込みも公開前の2億元(約42億円)から5億元(約105億円)へと上方修正された。

同作は、作家・貝客邦による小説『海葵』を原作とする。2022年にはドラマ『消失的孩子』としても映像化された。映画版では、日常的な集合住宅を舞台に、「子どもの失踪」「性的暴行事件の真相追及」「年金詐取のため父親の遺体を隠す賭博依存の男」という3つの事件が交錯しながら展開する。

監督は台湾の程偉豪(チェン・ウェイハオ)。『紅衣小女孩(The Tag-Along)』シリーズで台湾ホラー映画の興行記録を更新し、『目撃者之追凶(Who Killed Cock Robin)』では緻密な多層構成で高い評価を受けた。近年は『緝魂(The Soul)』『关于我和鬼変成家人的那件事(Marry My Dead Body)』など、ジャンル横断的な作品を手がけている。

『消失的人』では、密閉された日常空間を舞台に、人間の欲望や恐怖、家族間のすれ違いを描写。特に邱沢(ロイ・チウ)の演技が高く評価されており、破滅へ向かう男の内面を繊細に表現した。

また、地方都市での人気も顕著で、三・四線都市の興収比率は43.7%に達した。観客の65.4%が2人組での鑑賞であり、カップル需要が強かったという。

一方、前売り段階でトップを走っていた『寒戦1994』(Cold War 1994)は、最終的に2位に後退した。累計興収は2億元(約42億円)を超えたものの、予測最終興収は約3億8200万元(約80億円)にとどまり、2016年公開の『寒战2(Cold War II)』の6億7600万元(約142億円)には届かない見通しとなっている。

『寒戦』シリーズは、中国語圏を代表する警察サスペンス作品として知られる。従来の善悪対立ではなく、警察上層部の権力闘争や政治的駆け引きを描いてきた。

今作は1994年と2017年を行き来する二重構造を採用しているが、前2作の人物関係や背景知識への依存度が高く、新規観客にはやや敷居が高かったとの指摘もある。また、周潤発(チョウ・ユンファ)、郭富城(アーロン・クォック)、梁家輝(レオン・カーフェイ)、古天楽(ルイス・クー)ら豪華キャストの出演時間が予想以上に短かったことも、一部観客の失望につながった。

もっとも、1994年の香港返還前夜を立体的に描いた点や、銃撃戦・カーチェイスの迫力、多層的な人間描写などを評価する声も少なくない。続編『寒战1995(Cold War 1995)』はすでに撮影を終えており、今夏公開の可能性がある。

『給阿嬷的情書(Letters to Grandma)』が口コミで大躍進

今回の五一档で最大の“口コミ勝者”となったのが、潮汕方言映画『給阿嬷的情書』だった。公開初日の上映シェアはわずか3.6%だったが、観客の自発的な推薦によって評価が急上昇。5月5日にはレビューサイト「豆瓣」で9.0点を記録し、2026年中国語映画の初日評価として最高記録を更新した。累計興収は6336万元(約13億3000万円)を突破し、AI予測では最終1億5100万元(約32億円)に達する見込みだ。

監督・脚本は潮汕出身の藍鴻春(ラン・ホンチュン)。これまで『爸,我一定行的』『帯你去见我媽』などで地元文化を描いてきた。

物語は、潮汕地方の祖母・葉淑柔を主人公に、東南アジアへ渡った夫から届く「僑批(華僑送金書簡)」を軸に展開する。孫がタイで真相を追う中で、半世紀以上続いた“文通”の相手が実は別人の女性だったことが明らかになり、異郷で支え合った女性同士の絆が浮かび上がる。

「僑批」は19~20世紀、海外華僑が故郷へ送った手紙や送金証書を指し、2013年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」に登録された。

作品は過度な悲劇性を避け、静かな余韻と人間的な温かさを前面に押し出した。潮汕地方以外の地域でも支持を集めており、中国映画界で広がる“方言映画ブーム”を象徴する一本となっている。

今年の五一档の平均チケット価格は36.4元(約760円)で、前年同期の39.6元(約830円)から8%下落した。価格低下が観客の鑑賞ハードルを下げた面もある。

今回の結果からは、事前の前売り成績よりも、公開後の口コミ評価が興行を左右する傾向が一段と鮮明になった。中小規模作品でも、独自性のあるジャンル設定や地域文化を生かした作品であれば、市場を大きく動かせる可能性が示された。

(中国経済新聞)