アリババと自動車メーカーの上汽を親会社とし、スマートシートのソリューションに特化しスマートカーのOSやAIトータルソリューション、車載システムを提供する斑馬網絡技術(斑馬智行, banma)がこのほど、香港証券取引所に上場を申請した。
目論見書によると、2022年以降の年間および2025年1~3月の売上高は順に8.05億元(約161億円)、8.72億元(約174億円)、8.24億元(約165億円)および1.36億元(約27億円)で、これらを合わせると26.37億元(約527億円)となっている。

しかしその一方で、赤字額は同じく8.78億元(約176億円)、8.76億元(約175億円)、8.47億元(約169億円)および15.82億元(約316億円)と増加傾向をたどり、累計約41.83億元(約837億円)となっている。
利益率を見ると、2022年の53.9%から2025年1~3月には38.9%まで減少している。この主な理由は研究開発費であり、この間年間で順に11.11億元(約222億円)、11.23億元(約225億円)、9.80億元(約196億円)で、2025年1~3月は1.96億元(約39億円)を数え、売上高に占める割合はいずれも100%以上である。2025年3月現在、開発者の数は全従業員の67.2%にあたる819人である。
資金面では、2025年6月30日現在の現金および現金同等物は3.16億元(約63億円)で、このほかに金融資産が6.55億元(約131億円)ある。
斑馬智行は売上高について、大口のユーザーへの依存度が高く、2022年以降では上位5社の合計分が全体の88%~93%で推移している。このうち上汽への売上は順に4.41億元(約88億円)、4.13億元(約83億円)、3.19億元(約64億円)および0.649億元(約13億円)で、多い時は全売上高の半分以上を占めた。斑馬智行のソリューションは智己、栄威(Roewe)、名爵、大通など上汽の各ブランドで利用されており、2024年末現在の搭載台数は計150万台以上となっている。
このような顧客集中リスクは、市場でも懸念感が出ている。斑馬智行は2025年3月に、中国の自動車に「元神AI」の技術ライセンスを提供することでにBMWと合意したが、それでも取引先構成はかなり偏っている。
斑馬智行は元々、アリババが2011年に打ち出したYunOSシステムであり、2015年にアリババと上汽が合弁会社を立ち上げ、翌2016年にRoeweの車種「RX5」への搭載で量産化を果たした。2021年には独自開発したシートのOSを搭載した智己の「L7」が発売されている。
株式出資割合を見ると、2025年8月現在でアリババが44.72%、上汽が34.34%である。
これら大手2社に支えられた斑馬智行は、評価額220億元(約4400億円)あまりというユニコーン企業に成長し、胡潤研究院によると2025年のユニコーン企業世界ランキングで331位である。またコンサルティング会社の灼識諮詢(CIC)によると、2024年の売上高やソリューションの搭載数から、ソフトウェアを軸とするスマートシートのサプライヤーとしては中国最大の存在という。

同業者との競争:ファーウェイ、バイドゥ、テンセントも取り組み強化
斑馬智行はスマートシートについて確固たる地位に立ったが、競争も一段と激しくなっている。
ファーウェイはシート、自動運転、動力など6つの分野をカバーするキャビンシステム「HarmonyOS」を打ち出した。この中でHarmonySpace 5では、シートにMoLA(Mixture of Large Model Agent)アーキテクチャを採用しており、音声のやり取り成功率が85%に達している。
バイドゥはプラットフォーム「Apollo」をバックに自動運転、スマートシート、地図などをカバーするエコロジーを形成しており、31車種で合計900万台以上に搭載されている。
テンセントは「車・クラウド一体化」を中心軸に据え、TAIスマートシート5.0バージョンまで進展しており、車を「エンタメキャビン」とした上、自動運転やデータサービスなども手掛けている。
斑馬智行はこれら競合各社と比べ、自動運転は規模を縮小しスマートシートに専念する形をとり、大規模言語モデル(LLM)の普及やエコロジーの形成を強調する「All in AI」という戦略を掲げている。
中国はスマートカーの普及が進んでおり、2024年の販売台数は2070万台で、世界全体の35.8%を占めている。今後も年に9%の割合で増え続け、2030年には3480万台となる見込みだ。こうした将来性から、斑馬智行も成長が期待できる。
アリババと上汽の資源に支えられた斑馬智行は、海外自動車メーカーとの提携などでさらに多くの顧客を取り込めば、売上高の中身の改善や利益の獲得も望めそうである。ただし、激しい競争を勝ち抜いて香港で上場が果たせるかはまだ不透明である。
(中国経済新聞)