尊界S800が江淮汽車の成長を後押しへ

2025/09/3 11:58

江淮汽車(600418.SH)は、輸出事業の減少や高級スマートEVの生産体制立ち上げに伴う負担から、2025年上半期の業績が市場予想を下回った。しかし、8月下旬から本格的に納車が始まった新型高級車「尊界S800」が今後の収益改善を牽引すると業界では期待されている。尊界S800を起点とした華為(ファーウェイ)との協業は、戦略・経営・製品・市場の全面的な高度化につながり、江淮汽車の長期的な企業価値を押し上げる可能性がある。

上半期決算によると、同社の上半期売上高は193.60億元(約3,970億円)で前年同期比9.10%減少。株主に帰属する純利益は▲7.73億元(約159億円)と赤字だった。業績悪化の背景には、海外市場の競争激化による輸出の減少や、高級EVの生産が立ち上げ段階で規模効果が出ていないことがある。

販売動向を見ると、全体的な販売は落ち込んだものの、一部車種は堅調だった。2025年上半期のピックアップトラック販売は3.29万台で前年同期比15%増。新エネルギー小型トラックは9,200台超で46%増、大型トラックは2,800台超で前年比180%以上の伸びを示した。

市場の注目を集めているのは「尊界S800」である。同車は「テクノロジー・ラグジュアリー」を掲げ、従来の高級車の枠を超えた設計が特徴。ファーウェイの最新運転支援システム「HUAWEI ADS 4」を初搭載し、独自の「WEWA」技術アーキテクチャにより処理遅延を50%削減、走行効率を20%改善した。さらに、同社独自のデジタルシャシープラットフォーム「途霊龍行」に基づき、高い安全性と快適性、機動性を実現している。

江淮汽車とファーウェイは2019年から全面的な協業を展開。2025年2月に尊界S800の主要技術を公表し、5月末の正式発表から19日で5,000台超の予約、87日で1.2万台超の受注を獲得した。6月には量産が開始され、7月以降本格的に納車が進んでいる。

同社は尊界ブランドのために5,000人規模の研究・開発チームを組織し、上海に研究拠点を設立。清華大学や中国科学技術大学などの学術機関や中国科学院の専門家とも連携し、先端素材や自動運転、電磁安全などの分野で研究を進めている。

2025年上半期の研究開発投資額は22.16億元(約454億円)で前年比34.47%増、売上高比率は11.44%に達した。重点分野は車両統合、応用開発、基幹技術開発、グリーン製造であり、独自のEV技術基盤や「三電」(バッテリー、モーター、電子制御)技術を確立している。

ファーウェイと共同で建設した「尊界スーパー工場」は、デジタル設計やグリーン生産を導入した世界的なモデル工場とされる。工場では1秒あたり30万件のデータを収集し、生産工程をリアルタイムで最適化。特に溶接や塗装工程で先進的なデジタルツイン技術が活用されている。

サプライチェーン面でも、自社生産と外部調達を組み合わせつつ、主要部品メーカーと戦略的な関係を構築。尊界プロジェクトを通じて産業チェーン全体を高付加価値化へと導く方針だ。

江淮汽車はファーウェイをベンチマークとし、IPD(製品開発)、ISC(供給チェーン管理)、LTC(営業プロセス)といった経営改革を推進。調達、品質、人材、デジタルなどの分野でリソースセンターを構築し、予算・インセンティブ・評価制度も刷新している。

さらに、ファーウェイとの協力範囲は拡大しており、2025年4月にはスマート電動部品での協業契約を締結。6月にはEV高速充電や企業のデジタル化・脱炭素分野での連携強化も発表した。

尊界S800の量産・納車が進むことで、江淮汽車の収益は改善に向かうとみられる。同車は単なる新型車以上に、同社の経営構造改革と技術進化を象徴する存在であり、中長期的な競争力強化の鍵と位置づけられている。

(中国経済新聞)