2025年5月15日、中国の人気歌手・陳奕迅(イーソン・チャン)が新型コロナウイルスに感染し、予定されていたコンサートを延期することが、公式Weibo(微博)を通じて発表された。医師の診断により新型コロナウイルス感染が確認され、すべての公演活動を中止し、静養に専念するという。
実際、ここ1ヶ月の間に、中国各地で新型コロナウイルスの再流行が見られている。中国疾病予防控制中心(CDC)は、2025年4月(第14週~第18週、3月31日~5月4日)の急性呼吸器感染症に関する全国監視データを公表した。それによると、新型コロナウイルスの陽性率は全体として上昇傾向にあり、特に南部の省で高い陽性率が報告されている。陽性率の上昇が早く始まった地域では、すでに増加の勢いがやや落ち着いてきている。

具体的には、外来・救急のインフルエンザ様疾患における新型コロナの核酸検出陽性率は、第14週の7.5%から第18週には16.2%へと倍増。入院が必要な重症急性呼吸器感染症の陽性率も、3.3%から6.3%に上昇した。また、第18週時点では南北を問わず、インフルエンザ様疾患から検出されるウイルスの中で新型コロナが最多となっている。
年齢別に見ると、15歳以上の年齢層において新型コロナの陽性検出率が最も高く、成人を中心に感染が拡大している。
香港・マカオ地域でも同様の傾向がみられる。5月8日、香港特別行政区政府の衛生署・衛生防護センターは「2019新型コロナ及びインフルエンザ速報」を発表し、4月19日までのデータで新型コロナの陽性率が4週間前の1.71%から8.21%へと急上昇したことを報告。4月27日~5月3日の一週間では、検査機関で新たに検出された新型コロナ陽性サンプルは972件で、前週から134件の増加となった。同期間には、31件の重症例および死亡例が報告されており、前週の約2倍に相当する。
香港では5月4日~7日だけでも、1日あたり131件から199件の陽性サンプルが確認されている。
ウイルス学の専門家である常栄山氏は、「NB.1系統の変異株が今後主流になる可能性があるが、病原性は過去の株よりも低下しており、重症化リスクはJN.1株流行時よりも低い」と分析している。入院者数もJN.1株が流行していた時期を超えることはないとの見通しを示した。
また、今回の流行の背景には2つの要因があると説明する。一つは、2022年12月以降、新型コロナとインフルエンザが交互に流行しており、2025年2月にはここ3年間で最も弱い全国的なインフルエンザ流行しか見られなかったこと。この結果、人々の集団免疫力が低下し、新型コロナの再流行の土壌ができた。もう一つは、前回の大きな流行(2023年12月〜2024年1月)から1年以上が経過し、自然感染によって得られた抗体の効果がほぼ失われている点だという。
とはいえ、常氏は今回の流行はすでにピークに近づいており、長期化することはないと予測している。
(中国経済新聞)