労働関連のトラブル発生時、担当者が法廷調書や労働能力の鑑定書、労災認定書などを送信して主要情報に誤りがないかチェックしたのち、AI社員が直ちに仲裁判決文の初稿を作成する。「人の手で長時間かけて作成される仲裁書を、AI社員がたった数分間で書き上げる」といった場面を想像していただきたい。
また別の地域で、配車の運転に従事したいがどのように地元政府へ申し出たらいいかわからない人がいて、行政手続きAppの検索画面で「ディディに応募」と入力する。するとAppがこれを読み取り、手続き案内や許可の条件など「配車タクシー運転手営業許可証」に関する内容を送信してくれる。あちこち尋ねまわる必要もなく、Appの言うとおりに手続きを進めればよい。

いずれも、現在行われている「AI+行政手続き」というモデルである。「中国新聞週刊」によると、今は31の省・自治区・直轄市すべてで導入されているという。
以前に広東省深セン市福田区で、「AI社員70人が就任した」との情報が話題となり、「AI公務員」が人間の代わりを果たすのか、との論議を招いた。
福田区政務データ局の羅耿彪局長によると、AI社員は公務員の補佐役であり、実務面で公共管理をサポートしサービスを提供するものという。「AI社員は独自での意思決定はできず、それぞれ責任を負う管理者がいて、指導を受けながら働くものだ」と強調している。
「AI+行政手続き」の活用方法は
深セン市の窓口「民意速弁(市民の要望に即時対応)」には、12345(相談ダイヤル)や市長、区長あての電話などで寄せられた企業や市民からの訴えが集まる。羅局長は、「これまでは各部署の担当者が1日の苦情件数、問題に回答した企業の数、対応完了した問題の数をまとめ、分析した上でデイリーレポートを作成していた。これらを実行するのにほぼ半日かかっていた」と話している。
羅局長は、「今はAI社員がいて、その日の夜12時には過去24時間の状況が作成される。当日発生した苦情や片付いた問題、対応中の問題、未解決の問題を見やすく一覧表にしている」と述べている。
ボタン一つでのデイリーレポート作成や、冒頭に述べた労働仲裁の判決文の作成は、福田区のAI社員70人が実行しており、11のカテゴリーで計240件の行政手続きを実行する。これらはいずれも「AI+行政手続き」の実践における最初の事例であり、政府部門を対象にして都市管理、緊急管理、公文書処理、企業誘致などで利用され、部門内で管理の効率を引き上げるためのものである。
(中国経済新聞)