人気俳優朱一龍、長城で太鼓演奏し「日本太鼓」と非難され謝罪

2026/06/16 17:30

5月30日、北京の黄花城水長城で開催されたカナダ系スポーツブランドLululemon(ルルレモン)の「瑜見長城」ヨガ・カーニバルイベントに、中国人気俳優の朱一龍(シュ・イーロン)がブランド大使として参加した。イベントのハイライトとなった撃鼓(太鼓演奏)パフォーマンスが、思いもよらぬ大炎上を招くことになった。使用された鼓具が「日本太鼓」ではないかと疑われ、ネット上で激しい批判が巻き起こったのだ。6月15日には「朱一龍疑似在長城敲日本太鼓」というトピックが微博の熱搜に上がり、閲覧量は5000万回を超えた。

この一件は、単なる商業イベントのミスを超えて、中国国内の文化アイデンティティや歴史的記憶に対する敏感さを浮き彫りにした。長城という特別な場所で起きただけに、論争は急速に拡大した。事件から約2週間後の6月16日、朱一龍の事務所とブランド側、鼓団が相次いで声明を発表し、謝罪する事態となった。

イベント当日、朱一龍は「凡響HiiKo」鼓団と協力して「中華大鼓」を打ち鳴らすパフォーマンスを行った。ブランドの宣伝文句は「擂響中華大鼓」——中華の太鼓を響かせる、という国風を強調する内容だった。しかし、活動後まもなく、打楽器専門家やネットユーザーから「これは日本太鼓だ」との指摘が相次いだ。

専門家の一人、打楽器演奏家の徐洋氏はSNSで動画を公開し、「形制、演奏形式、演奏の本質において、日本太鼓の体系そのものだ」と分析した。現場の鼓具は長胴の桶型胴体で、日本太鼓の特徴的なデザイン。鼓皮の外翻構造と赤い縄索の交叉固定も典型的な日本太鼓の技法だ。一方、中国伝統の堂鼓は釘皮固定が主流で、麻縄が外露しない点が異なるという。さらに、傾斜した鼓架を使った大振りの肢体動作も、中国伝統鼓の演奏スタイルとは大きく異なると指摘された。

これに対し、鼓団側は当初「唐代の羯鼓を復刻したもの」と宣伝していたが、この説明が疑惑に拍車をかけた。長城という場所の選択も批判を呼んだ。黄花城水長城は、抗日戦争の血涙を刻む歴史的聖地であり、先烈たちが外敵から国土を守った象徴だ。こうした場所で商業イベントを行い、しかも「日本太鼓」と疑われる道具を使うことは、文化の無理解や歴史記憶への冒涜だと、多くのネットユーザーが憤った。

朱一龍本人へのバッシングも激しく、事務所の動画アカウントはフォロワーを大幅に失ったという。1988年湖北省武漢生まれの朱一龍は、北京電影学院卒業後、『消失的她』『人生大事』『河邊的錯誤』などの作品で知られる実力派俳優だ。ファンからは「国風を愛する俳優」として支持されてきただけに、今回の疑惑は失望を呼んだ。

6月16日、朱一龍工作室は公式声明を発表した。鼓具をめぐる議論について、ブランド側に全プロセスを検証するよう促したとし、「朱一龍は一貫して中国伝統文化の振興に努めてきた。今後、仕事内容により厳格に対応する」と強調した。同日、Lululemon貿易(上海)有限公司も声明を出し、「専門知識の不足から潜在的な論争を事前に認識できなかった」と謝罪。すべての関連宣伝コンテンツを下架したと明らかにした。鼓団側も同様に謝罪声明を発表した。

Lululemonの声明では、「中華文化を敬うという当初の目的に変わりはない」としながらも、企画・審査段階での慎重さが不足していたと反省を述べた。ブランドは1998年カナダ創業のヨガ・ランニングを中心としたスポーツアパレル企業で、中国市場に積極展開している。今回のイベントは「瑜見長城」というテーマで、文化とスポーツの融合を狙ったものだったが、結果として逆効果となった。

(中国経済新聞)