6月15日午前11時44分、中国の商業宇宙企業CAS Space(中科宇航)は、東風商業宇宙イノベーション試験区から「力箭1号」14号機を打ち上げた。ロケットは「文物01星」など8基の衛星を搭載し、「1ロケット・8衛星」の方式で予定軌道への投入に成功した。
今回のミッションは「力箭1号」にとって14回目の飛行であり、「力箭」シリーズ全体では15回目の打ち上げとなる。これまでに同ロケットは計105基の衛星を宇宙へ送り出し、軌道投入されたペイロードの総重量は15トンを超えている。民間商業ロケットとしては、中国で唯一、累計打ち上げ衛星数が100基を突破した機種となっている。
CAS Spaceによると、「力箭1号」は2026年第2四半期だけで3回の打ち上げを実施した。高い信頼性と成熟した開発・運用体制を背景に、中国の民間ロケット打ち上げサービス市場でトップシェアを維持している。また、打ち上げの高頻度化に伴い、ロケット制御システムのソフトウェアとハードウェアの自主開発・自主制御も着実に進んでいる。
「力箭1号」の副総設計師である孟繁斌氏によると、初飛行時には、中国初となるデータ駆動型地上発射管制ソフトウェアや階層型飛行制御システムなど、13項目の新技術を採用したという。
階層型飛行制御システムでは、発射前の自律姿勢調整やオンライン閉ループ最適誘導技術、高出力電動サーボシステムを採用。発射準備から衛星の軌道投入・分離までの全工程を無人で自動制御できるようになった。
さらにCAS Spaceは、自社開発した汎用ソフトウェアプラットフォームを活用し、商業宇宙分野で新たな技術革新を実現した。
孟氏は、「これまでロケット開発では、機種ごとにソフトウェアとハードウェアをゼロから設計する必要があり、開発コストが高く、開発期間の短縮も難しかった」と説明する。
一方、汎用ソフトウェアプラットフォームの導入によって、ハードウェアの標準化とソフトウェアの共通利用が可能となった。孟氏はこれを「ロケットに搭載された汎用のスマートな頭脳」と表現する。
その結果、機体搭載設備は50%、地上設備は80%削減されたほか、従来約1カ月を要していた電気系統の検査期間も1週間以内に短縮された。
開発コストや打ち上げコストの削減に加え、共通設計による信頼性向上も実現している。
孟氏は、「従来の『ロケットごとに個別設計する時代』から、ソフトウェア定義型・スマート化による工業的量産時代へ移行しつつある。今後の高頻度・低コスト・大規模な打ち上げサービスの基盤になる」と語った。
また、「力箭1号」の副総指揮である孟祥福氏は、「高頻度・大量打ち上げによる規模の経済効果で固定費を抑制できるほか、共通ソフトウェアによって技術成果の再利用が可能となり、重複開発コストも大幅に削減できる」と説明した。
「力箭1号」は固体燃料ロケットで、主に低軌道の地球観測衛星や測位補強衛星、通信衛星の打ち上げに利用される。今回打ち上げられた「文物01星」「彩雲光学01星」「安鉄03星」「利川紅」など8基の衛星はいずれも高解像度の光学リモートセンシング衛星である。
一方、CAS Spaceは今年3月末、上海証券取引所の科創板(STAR市場)へのIPO申請が正式に受理された。
目論見書によると、売上高は2022年が595万2,900元(約1億2,000万円)、2023年が7,772万1,000元(約15億5,000万円)、2024年が2億4,400万元(約49億円)、2025年1~9月が8,422万3,900元(約17億円)だった。
しかし依然として赤字が続いており、親会社株主に帰属する純損失は2022年が17億6,100万元(約352億円)、2023年が5億1,200万元(約102億円)、2024年が8億6,100万元(約172億円)、2025年1~9月が7億4,900万元(約150億円)で、累計赤字は38億8,300万元(約776億円)に達している。
収益の大半は打ち上げサービスによるもので、2025年1~9月には売上高の98.13%を占めた。今年に入り「力箭1号」の打ち上げ頻度が高まっており、同社の商業化もさらに加速するとみられている。
(中国経済新聞)
