中国、国産の先端DUV露光装置を製造

2024/09/24 13:30

中国の工業情報化省が「ファーストセット重大技術装備推進応用指導カタログ(2024年版)」を発表した。同省の「微報」で「国の重要物であり、総合的国力や国家の安全に関わる」とされている重大技術装備のリスト中に、中国製のフッ化クリプトン露光装置(110nm)およびフッ化アルゴン(ArF)(65nm)露光装置が指定されている

これらはいずれもDUV露光装置で、仕様についてはフッ化アルゴンが解像度≤65nmでオーバーレイ精度≤8nm、フッ化クリプトンは解像度≤110nmでオーバーレイ精度≤25nmとなっている。

中国は2023年現在、半導体需要が全世界の3分の1を占めているが、露光装置は技術的難易度が高く、また半導体や露光装置が海外からの規制を受けていることから、国内業界におけるネックになっている。

海外における中国への販売禁止措置や規制は以下の通りである。

・アメリカ政府によるエヌビディアやAMDなどの先端AI半導体や設備の販売規制

特定の技術仕様の定義、制限適用の対象地や条件などについて修正や説明も加えられており、計算力の高いAI半導体やその製造器具を中国に入手させないようにするものである。

・露光装置の輸出規制

アメリカによる先端露光装置の輸出規制。オランダのASML社は、「NXT:2000i」およびさらに高度な液浸露光装置の輸出が規制されているが、「NXT:1980Di」などそれ以前のタイプは一定の条件を満たせば輸出可能である。

・「CHIPSおよび科学法案」

2022年8月、アメリカのバイデン大統領が、半導体の製造をアメリカ本土に「回帰」させ、補助金を得た国内および同盟国の企業が中国ならびに懸念される国で先端半導体工場を建設したり増設したりすることを防ぐための「CHIPSおよび科学法案」に署名している。

・中国の特定半導体製造関連に対する規制

アメリカ商務省の産業安全保障局 (BIS)が、,特定の半導体製造関連も含む中国の先端半導体やコンピューター設備の輸出制限を発表している。

中国が今回発表した露光装置は、果たしてどの程度のレベルなのか。

露光装置は、DUV(Deep Ultraviolet Lithography)とEUV(Extreme Ultraviolet Lithography)の2種類に分けられる。

DUVは、フッ化クリプトン(KrF)またはフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザーにより発生する波長が193ナノメートル前後の深紫外線光源を使用する。技術的には今は露光方式が主流で、数十ナノメートルから数ナノメートル(28nm、14nm、7nm品など)の製造工程に適用される。解像度をさらに上げるため、液浸露光や多重露出、位相シフトマスクといった先端技術を採用している。

EUVは、強力レーザーを特殊なコレクター(スズ液滴など)に当てることで生成される波長が13.5ナノメートル前後の極紫外線光源を使用する。より先端的な(5nm、3nm品など)製造工程における基幹技術である。 

EUVは製造コストやランニングコストが高価で技術も複雑であるが、性能を一段と引き上げ小型化する上で、業界内で重要なものである。

中国で最近発表された2種類の露光装置はいずれもDUVである。一つは波長193ナノメートルで作動可能であり、解像度は65nm以下、重ね合せ精度は8nm以下で、もう一つは波長248nmで作動し、解像度110nm、重ね合せ精度25nmである。

ではこの露光装置で、どのサイズの半導体を作れるか。手っ取り早く例を挙げると、TSMCは以前にASMLの1970i型で7nm品を生産していた。解像度は7nmを大きく下回っていたが、TSMCは多重露光により7nm品の製造を果たしている。しかしこれはベストな製造法ではない。多重露光をすることで設備の利用率が低下し、生産に時間がかかり良品率も落ちるからである。中国の65nmフッ化アルゴン露光装置は、多重露光により小型品の生産を果たせるものであるが、TSMCの1970iと同じく膨大なコストがかかり良品率も確保できない。よって、理論的には7nm品を作れるが大量生産はまず無理である。

それでは14nm品はどうかというと、ここでSMIC(中芯国際)が登場する。今すでに14nm品を生産しているが、露光装置はASMLから購入したDUV液浸露光を使っている。中国製の65nmフッ化アルゴン露光装置に比べると設備の解像度が高く生産量も多い。

この65nm装置は性能的にAMSLの液浸露光には及ばないので、14nm品の製造については優位に立てず、業界内の専門家に言わせれば最適な品種は8nmや14nmでなく28nm品であるとのことである。よって、ネットでは「28nm露光装置」などと言われることが多い。28nm品の工程はもはや最先端とは言えないが、技術的には安定し良品率も高く、生産コストも安上がりである。

28nmの半導体は、自動車や家電、IOT設備、医療機器など日常生活で広く利用されている。今回の露光装置の開発で、対象となる半導体品種が規制による影響を受けなくなる。先端テクノロジーというものでもないが、「われわれも露光装置を作れるので封じ込められることはない」と海外にアピールすることができる。

露光装置の開発は歴史的な意義を持つものであり、今回はまだ単なる初期段階に過ぎない。

(中国経済新聞)