中国の航空大手4社である中国国際航空(CA)、中国東方航空(MU)、中国南方航空(CZ)、海南航空(HU)は、いずれも国際線の回復の遅れや輸送力のだぶつきで今年上半期は赤字となる見込みである。第1四半期に黒字転換したCZとHUは、第2四半期はそれぞれ10.6億~15.8億元(約231億円~344億円)および6億~6.7億元(約130億円~146億円)、CAは 23億~30億元(約501億円~654億円)、MUは24億~29億元(約523億円~632億円)の赤字計上と予想している。
これについて、業界関係者によると、航空界における今年の年間の赤字脱却という目標の達成は難しいと見ている。4社が赤字となった大きな理由は、需要の不振である。去年はリベンジ需要で旅行者が増えたが今年はだいぶ落ち着き、乗客がより安値のチケットを求めるようになっている。また高速鉄道との競争も不振の理由の一つである。
ただし、上場会社である春秋航空、吉祥航空、華夏航空はいずれも上半期は利益が出ると予想している。中でも好調なのが春秋航空で、会社帰属の純利益は前年比54%~60%増の12.9億~13.4億元(約281億円~292億円)となる見込みという。中間予想を見ると、国内の輸送力を13.3%増強した上で搭乗率が去年同期より2.7ポイント増えて91.7%と、好調そのものである。国際線も89.4%増強で搭乗率も9.6ポイント増の89.7%となっている。
コロナ禍前まではCAが国内航空会社の「利益頭」であったが、ある業界関係者によると、輸送力と利用者の数が一致しないという「需給アンマッチ」が解消するまでは春秋航空がトップの座に居座ると見ている。
2023年の中国全体の航空機利用者数は、前年比146.1%増ののべ6.2億人であったが、コロナ禍前の6.6億人には届かなかった。一方で旅客機の数は増え続け、2023年末時点では2019年末より368機多い4013機となっている。
機体が増える一方で移動需要は回復せず、特に国際線については中国民航局の最新データによると2019年の8割程度の回復にとどまり、これがチケット代や機体の稼働率に響いている。大手4社は国際線の本数割合が高く、大型機の数が多いので、国際市場の回復の遅れによる影響が大きく赤字がかさんでいる。一方で春秋航空など格安会社は、こうした影響が少ない上にコスト抑制力もあるので、競争の激しい国内線で利益を生み出せる状態にある。
複数の航空会社の関係者によると、多客期である夏休みに入った今、チケット代の値上がりの影響を受けているという。中国民航局によると、7月1日から8月31日までの夏休みシーズンの利用者数は2019年の10%増、2023年の5%増となるのべ1.33億人、1日当たりでは215万人となる見込みである。
ところがチケットの値段については、航空機利用サービスアプリ「航旅縦横」によると、7月11日から8月31日までの国内線は前年より約8%安い約1012元(約2.2万円)(税別)で、海外路線の平均価格も同じく約6%値下がりという。
中国民航管理幹部学院の鄒建軍教授は、2024年の航空市場はあまり期待ができず、年間で「山あり谷あり」という状態になると見ている。「市場の回復とは、単にコロナ禍前に戻ることではなく、構造の全面的な変化に向かうことだ。よって、今の中国の事情に適応させ、経験経済を注視し、「需要中心」を維持し、稼働効率や成長効果に目を向けることが、業界改革の重点となる」と指摘している。
(中国経済新聞)