中国の大学入試、志望校届けが商売化

2024/06/30 08:30

6月9日に幕を閉じた中国の大学統一入学試験について、教育省のまとめによると、出願者数は去年より51万人増えて過去最高の1342万人であった。各省で今月23日から相次ぎ結果が発表されており、その後に受験生による志望校届けが始まるが、この時期に毎年脚光を浴びるのが有名インフルエンサーの張雪峰氏である。

張氏のスタッフは今年(2024年入学者)、志望校届けに関する相談サービスとして、料金が11999元(約26.3万円)の「夢のチケット」と17999元(約39.5万円)の「夢実現チケット」のプランを用意した。1.8万元(約40万円)近くもする「夢実現チケット」はたちまち完売となったほか(実行に向けて準備中)、「夢のチケット」についても2026年度入学対象分として8999元(約19.7万円)で用意したものが「売り切れ」となった。ライブ配信を見た受験生の親が高額のプランに飛びついてしまった。実施内容を見ると、張氏本人ではなくスタッフがマンツーマンで対応するというが、それでも人気殺到である。

その後、「張氏が3時間のライブ配信で2億元(約44億円)ゲット」との話題も出た。張氏に対する世間の評価は両極端であり、反対者は「焦りに乗じた『ぼったくり』だ」と見ているが、支持者はアドバイスできる人物とみなし、「話は荒いが理詰めで気持ちを静めている」と見ている。「飢餓商法だ」という批判に対し、張氏のスタッフは、「多人数に対して担当しうる講師が少ない」と述べている。

志望校届けに関して支払われた金額について、調査会社のiiMediaによると、2023年は2016年の7.3倍の9.5億元(約208億円)で、2027年には12.2億元(約268億円)となる見込みである。

受験生の1人である張欣さんは、「大学受験は大事で、自分で適当に選ぶのは不安だ。結果がどうであれ、お金を出せば安心だ」と言った。試験の出来が思わしくなかったので、志望校届けは大事だというのである。

張さんはある進路指導会社で、プランナーの勧めに沿って候補として11校を選び、その後に別の年配担当者と10分あまり簡単に話し合った。相談時間は合わせてわずか40分あまりだったが、料金は5000元(約11万円)以上だった。

張さんは「大損した」と言った。11校を候補に選んでくれたが、学科へのアドバイスがあいまいで、自分で頭を使うことになり、「結果的に志望した学科に決まったけれど、指導会社とはあまり関係がなく、ほとんど自分で選んだ結果だった」とのことだった。

このような高額の対応に嫌気がさし、「AIでの志願」に目を向ける親もかなり多くなっている。子供が受験生である河北省の李玲さんは、「入試が終わってすぐに志望届けについて研究してきて、今はもうほとんど『志願の達人』状態になった」と言う。たまたまの機会であるライブ番組でガイド用のチケットを360元(約8000円)で購入した結果、AIのおかげで随分自信がついたとのことである。

AIによる志望届けが受験生の世帯で人気を集める中、テンセント、アリババ、バイドゥ、ネットイースなど多くのIT企業が、好機と見て事業参入を始めている。

(中国経済新聞)