全米小売業連盟はこのほど、2024年度の「世界小売業ランキング50社」を発表した。少なくとも3つの国・地域に進出している会社を対象とし、国内外の売上高を点数化してランク付けしたものである。
上位3社は、ウォルマート、アマゾン、シュバルツグループの順となっている。ウォルマートは、最新の決算報告によると2023年の売上高は6481.25億ドル,純利益は162.70億ドルである。アマゾンは同じく2023年の売上高が5747.85億ドル、純利益が304億ドルである。アマゾンは、アンディ・ジャシーCEOが先ごろ2023年度の株主あてにメッセージを発した直後に株価が急進し、過去最高額となって時価が2兆ドルに迫った。シュバルツグループは売上総額1763.7億ドルである。
今回のランキングを見ると、上位13社の順位は2023年と全く同じである。上位50社で、地域別に最も多いのはヨーロッパ勢で29社、また売上高の合計額はアメリカ州が最も多い。
50社のうち、中国勢はアリババとワトソンズの2社がランクインしており、アリババは去年より2つ順位を下げて16位、ワトソンズは同じく1つ下げて17位であった。
アリババのランクインは予想通りである。去年は海外事業も随分と伸ばしており、決算を見ると海外のECの売上高が44%の増加で、四半期ごとでは6期連続で予想を超えるものとなった。中でも子会社の越境ECアプリ「アリエクスプレス」は注文数が前年比60%増となっている。
ただしアリババは、2016年にジャック・マー氏が打ち出したコンセプト「ニューリテール」がやや頓挫している。マー氏は当時、「Eコマースという言葉は今後10年から20年でなくなり、ニューリテールのみが存在する」と述べていた。盒馬(HEMA)、大潤発(RTマート)、銀泰(Intime Retail)などが主力となって展開しているが、アリババが期待したほどの効果は上がっていない。
アリババの蔡崇信会長は今年2月の決算報告会議で、「グループにとってリアル店の小売りは主軸ではなく、撤退する可能性が高い」と述べた。アリババのメイン事業はやはりECであるが、激しい競争のさなかにある。急成長する拼多多、改革を急いでいる宿敵の京東、それとTiktokや快手などの後発組も追い上げており、一段とシェアを奪おうとしている。
アリババは、「1+6+N」という組織改革をしており、主力事業を担う6グループを発足させた。決算データを見ると、いずれも売上高は増加傾向で改革はひとまず順調ではあるが、まだまだ努力が必要である。
アリババは、これら各グループの上場を目指していたが、現在、クラウド・インテリジェンスグループの完全分離は行わず、盒馬鮮生の初の株式募集計画は棚上げでマーケットの様子見となり、菜鳥の上場申請は却下している。つまり、これら3グループの上場計画はいずれも見直しとなっている。
アリババは、取り組みの中心もECやクラウドコンピューティングなどの主力事業に集中化させようとしている。中国は今、大規模言語モデルについて、評価額が10億ドルに達しているユニコーン企業は「月之暗面」(Moonshot AI)、「智譜AI」(Zhipu AI)、「Minmax」、「零一万物」(01.AI)、「百川智能」(Baichuan AI)の5社が存在するが、アリババはこのすべてに投資をしていることから、取り組みの中でAIを重要視している様子がうかがえる。
アリババの各事業は今、タオバオ、Tmall、DingTalk、閑魚、盒馬などすべてが大規模言語モデルの「通義千問」を導入して新鮮な使い心地をもたらすなど、新たな伸びしろや競争メリットを求め続けている。アリババとAIとの接触でどのような変化が生まれるか、マーケットや時間の経過で見えてくる。
(中国経済新聞)