製造業分野の外資参入制限を全面撤廃

2023/11/17 08:30

中国国家主席習近平氏は10月18日、第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開幕式で、「一帯一路」の質の高い共同建設を支援するための8つの行動プランを発表した。

そのうちの「開放型世界経済の建設」の行動プランでは、製造業分野における外資参入制限措置の全面的な撤廃に言及している。

なぜ今の時点で、「全面的な撤廃」を宣言したのか?

中国商務部研究院学位委員会委員の白明氏は、「製造業分野の外資参入規制措置の全面的な撤廃は事実上、順を追って一歩一歩進める過程だ。当初は自由貿易試験区内で撤廃されたが、現在はその範囲が全国に拡大し、自由貿易試験区から全国に広まる。試行から普及へと移り、自然な流れだ」と述べた。

ただし中国にとって、発表をこの時期にしたのは二つの背景が考えられる。

まず2023年に入り、新型コロナウイルスは終息したものの、外国の製造業の投資が進まない上、中国の工場を東南アジアやインドにシフトする動きも始まっている。アメリカ政府による締め付けが続く中、半導体やハイテクといった製造業が世界の産業チェーンを築き直そうとしており、日本も含めた一部の企業は生産ラインを部分的に国内に戻すか、東南アジアへのシフトを始めている。

北京日本商会が発表した最新のアンケート結果によると、2023年度に中国への投資を拡大するという会社は16・9%に過ぎず、ほとんどが現状維持といった策を講じている。また、旭化学などは中国での工場建設計画を撤回している。

中国商務省のとりまとめによると、2023年1~8月に新たに中国に進出した外国企業の数は2022年より33%増えて3万3154社となり、このうち製造業は6・8%増であった。ただし外国企業全体の投資額は5・1%減って8471億元(約17兆3325億円)である。特にアメリカ、日本、フランス、オーストラリアなどの落ち込みが目立っている。

外国の製造業を踏みとどまらせ、さらに各企業の中国投資を拡大させるには、製造業における参入規制を全面的に撤廃することが大切になってくる。呼び寄せるための大きな利益となるのだ。

「世界の工場」である中国は、輸出の半分が外国の企業によるものだ。特に製造業では、外国企業の技術や設備、それに製品の開発力がそのまま国内製造業のレベルアップとなり利益となる。よって、中国経済が苦境を脱し復活するにあたり、外国の製造業を引続き中国に残すことが大切な方策となっている。

もう一つは、中国が「一帯一路」を打ち出してちょうど10年である今年、北京で世界143の国と地域の代表が参加した第3回一帯一路国際フォーラムが開催されたことである。中国政府による大きなテコ入れ策の発表、それは世界各国への大きな土産である。また、改革開放を一段と進める決意や自信を示すものでもある。

2017年から、中国は5年連続で外資参入ネガティブリストを改定してきた。2021年版では全国と自由貿易試験区におけるネガティブリストの項目がそれまでの31項目から27項目に減り、種苗業、自動車・船舶及び航空機製造、証券、銀行、保険、職業育成など多くの業界・分野で、外資の持株比率の制限が撤廃または緩和され、海外の投資家のためにより多くの市場チャンスを創出した。

中国政府は2021年12月27日、2022年に外資系自動車メーカーの乗用車分野の出資規制を撤廃すると発表した。18年に電気自動車(EV)など新エネルギー車、20年に商用車の規制を撤廃済みだ。

中国政府は18年4月、自動車分野で段階的に外資規制を撤廃すると発表済み。残るのは中国の自動車市場全体の8割を占める乗用車分野だった。

自動車分野は従来、外資が中国国内で自動車を製造する合弁会社の出資比率を最大50%に制限し、新エネ車以外を除いて合弁会社数も原則2社までと定めてきた。世界最大の自動車市場となり、海外から早期の開放を求める声が多かった。

規制緩和によって、EV大手の米テスラは全額出資子会社を設立し、19年に中国で生産を始めた。独フォルクスワーゲン(VW)も20年、中国企業と組んだEV合弁会社の出資比率を50%から75%に引き上げた。

トヨタ自動車やホンダ、日産自動車も中国で現地企業との折半出資会社を運営する。経営の自由度は高まるが、「合弁相手である中国側との信頼関係を重視し、出資比率の引き上げは慎重に考える必要がある」(日系大手幹部)と、殆ど比率は引き上げていない。

製造業分野における外資参入制限措置の全面的な撤廃について、中国国際経済交流センターの魏建国副理事長(元商務部副部長)は、「中国の製造業は世界の生産チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンの中で、以前のミドル・ロークラスからミドル・ハイクラスへと躍進した。このたびの全面的開放は世界にとって好材料であり、製造業にとってはなおさらだ」とした上で、「このたびの製造業分野での外資参入制限の全面的な撤廃は、次の三つの重要なシグナルを発している」とした。

魏建国副理事長によると、まず中国が立ち上がる時によりどころにしたのは製造業という「背骨」であり、これから豊かになり、強くなる時にも引き続き製造業という「背骨」に寄りかかる必要がある。次に中国のハイレベルの対外開放は、中国製造業における外資参入制限の全面撤廃をポイントとした新たなスタートだ。第三に中国経済の今後の発展には、引き続き実体経済をよりどころにすることが必要で、これは過去に欧米の大国が発展の中で徐々にサービス業に向かって製造業を軽視した道を改めるものだ。中国には製造業で強い基礎と支えがあり、これからさらに高度化を果たすには、サービス業を発展させると同時に引き続き製造業の高度化を強化する必要があり、両方とも強くする必要がある。

上海市外商投資協会の黄峰会長は、「グローバル経済の回復が力不足であることを背景として、中国の外資導入は課題に直面しており、より方向性を持った実質的な価値が高い外資安定政策を持続的に打ち出すことが必要だ」との見方を示した。

(中国経済新聞)