智元機器人の人型ロボット「遠征A1」

2023/08/21 08:30

中国で8月18日、ロボットメーカー「智元機器人」による知能を備えたロボット「遠征A1」の発表会がライブ配信された。人の形に作られ、身長175cm、重さ55kgである。

「遠征A1」は自由度が49以上とされ、最大負荷は80kg、腕1本で5kgの物を持つことができ、関節モーターの最大トルクは350N・mで、水冷装置がついている。

さらに「遠征A1」は、足の部分が逆関節になっていて操作範囲が広範囲になり、歩速は7km/hに達する。

手は能動自由度が12、受動自由度が5で、指先にカメラがあり、対象物の色や形、材質を察知してつかみ具合を決める。この「クレバーな手」はコストが計1万元(20万円)以上という。

性能については、RGBDカメラ、LiDARセンサー、IMU(慣性計測装置)、マイクロホンアレイなどを備えて演算力は200TOPSという。発表会の会場では自らステージにのぼっている。

売値については、将来的にはハード面の費用を20万元(400万円)以下に抑える予定であり、まずは新エネ車の製造、3C製造での活用を目指して各社と調整を進めている。

さらにこの「遠征AI」は、汎用性を持たせるために開発の際に設計をモジュール化しており、2本の足を外して車輪に代えたり、手を外してドリルやねじ回しに変えたりすることができる。

智遠の公式発表ビデオを見ると、「遠征A1」は工場、生物科学研究所、家庭での利用が可能となっている。

自動車の生産ラインにおけるシャーシの組み立てや外観検査といった、繰り返しの単調な仕事も着実にこなしているほか、エレクトロニクス工場で組み立てや搬送などすべてを担っている。

「遠征A1」は、EI-Brainという脳の枠組みが備わっている。クラウドの超脳、大脳、小脳、脳幹がそれぞれタスクレベル、技能レベル、指令レベル、自動制御レベルで対応する。小脳が運動制御指令を生成し、大脳は理解し推理する能力が必要となる。

また「遠征A1」は、人間と同じレベルで仕事を果たせるように、膨大な先験的知識ベースや、知識を十分に理解する能力といった機能を持つWorkGPTを搭載している。

例えばテーブルの上のゴミを片づけさせたい時、自分で見分けられるので、どれがゴミかを伝える必要が全くないのである。

ただし、人型ロボットの開発について現在、姿勢や視覚のデータが少ないのが難点である。特に姿勢について、訓練に使える資源が決して多くない。どういった姿勢で指示を下すか、いかにして物を正確に見分けるかに影響するものである。

このロボットを生み出した智元の創業者は、実はファーウェイの天才少年であり、ネットで100万のフォロワーを抱える「稚暉君」こと彭志輝氏である。彭氏は1993年に江西省で生まれ、2020年に年俸201万元(約4000万円)でファーウェイに入社し、2022年末に起業のため退社を宣言し、2023年2月に智元機器人(Agibot)を立ち上げた。それからわずか3か月間で、バイドゥや経緯創投(matrix)などの有名投資機関からCラウンド融資を獲得し、時価総額は10数億ドルとなっている。

(中国経済新聞)