シャオミ、新型SUV「澎程」4モデルを一挙投入、N90 Max探索版は車内を“2階建て”空間に

2026/09/8 11:32

中国・シャオミ(Xiaomi)は9月7日、北京で秋季フラッグシップ新製品発表会を開催し、新型SUV「小米澎程(Pengcheng)」シリーズを発表した。今回登場したのは、「澎程N70 Pro」「N70 Max」「N90 Max」「N90 Max探索版」の4モデル。いずれもシャオミ独自の「昆仑技術アーキテクチャ」をベースに開発された「インテリジェント可変大空間SUV」をうたう。

5人乗りのN70シリーズから、3列7人乗りの大型SUVであるN90 Max、そして電動昇降式ルーフを備え、車内を上下2層の空間として使えるN90 Max探索版まで、用途に応じた幅広いラインアップを展開する。

価格はN70 Proが20万9900元(約430万円)、N70 Maxが23万9900元(約490万円)、N90 Maxが26万9900元(約550万円)、N90 Max探索版が29万9900元(約610万円)。4モデルはいずれも9月7日22時から販売を開始した。

発売に合わせて、各モデルには期間限定の購入特典も設定された。

N70 Proには、前席回転シート、Nappaレザー、ホイール・ボディカラーのオプション券、HAD運転支援機能の生涯無料利用など、合計6万3000元(約145万円)相当の特典を用意。

N70 Maxでは、これに独立コンプレッサー式冷蔵庫や運転席側の防眩ミラーなどが加わり、特典総額は6万7000元(約155万円)相当となる。

N90 Maxは2列目のゼログラビティシートなどを追加し、8万1000元(約185万円)相当。最上位のN90 Max探索版には、電動ウェルカムステップやホイール・ボディカラーのオプション券など、4万3000元(約100万円)相当の特典を設定した。

N70は全長4960mm、全幅1998mm、ホイールベース2950mmの5人乗りSUVだ。

シャオミは「大きすぎず、運転しやすく、乗っても快適なSUV」と位置付けているが、このモデルの最大の特徴は、車内空間を単なる付加価値ではなく、車両開発の出発点として設計していることにある。

その象徴がフラットフロアだ。N70は全車でフラットな床面を採用。1列目から2列目、荷室までのフロアの傾斜はわずか2.95度で、フラット部分の長さは2.58m、面積は4.01㎡に達する。

さらに、最大1.56mのロングレールを5本配置し、2列目シートの前後スライド量は600mmを確保した。

2列目の標準的な足元空間は1010mm、ヘッドクリアランスは1021mm。シートを最後方まで移動させれば、乗員スペースは最大1410mmまで広がる。シャオミによれば、同サイズのSUVと比べて約50%広い空間を実現したという。

荷室容量も大きく、通常時で1203L。2列目を倒すと2425Lまで拡大する。最大38個の20インチスーツケースを収納でき、荷室の最大奥行きは1.9m。通常時でも10個のスーツケースを積載できるとしている。

後席ドアは約90度まで開き、乗り込み口の高さは385mm。電動ウェルカムステップも組み合わせることで、子どもや高齢者の乗り降りにも配慮した。

シートを動かして「家」のように使える。フラットな床とロングスライドシートを生かし、N70には複数の「ワンタッチ空間モード」が用意されている。

前席を回転させて家族が向かい合う「親子ティータイム」、前後のシートを後方へ移動させて広い空間を作る「親子プレイランド」、2列目を後方に下げてゆったり過ごす「ファーストクラスモード」、後席を倒して大容量の荷室を作る「超大型収納モード」などだ。

音声操作にも対応しており、車載AIアシスタント「スーパー小愛」は車両機能の95%をカバーするという。10種類以上の空間レイアウトを音声で切り替えることができ、「星を見上げたい」と話しかければ、シートや照明、エアコンなどを連動させて景観モードへ切り替えられる。

N70は全車に、いわゆる「冷蔵庫・大型ディスプレイ・快適シート」を標準装備する。9Lの独立コンプレッサー式冷蔵庫は、冷却だけでなく加熱にも対応。Flyback技術を採用している。後席には21.4インチのエンターテインメントディスプレイを搭載。シートは15層の積層構造とし、16ポイント式マッサージ、ベンチレーション、シートヒーターを標準装備する。

オーディオはN70 Proが14スピーカーシステムを採用。200mmの大型サブウーファーと2つのヘッドレストスピーカーを備える。

上位のN70 Maxには、シャオミが独自開発した「小米星弦音響システム」を採用。25個のスピーカー、7.1.4chの音響構成、最大4890Wの出力を実現する。

このほか、車内には33カ所の収納スペースを設け、1530mm幅のワイドなインストルメントパネル、6.14㎡のガラス面積、256色のアンビエントライトなどを採用。乗員が頻繁に触れる部分の95%をソフト素材で覆い、インテリアはOEKO-TEX®認証も取得している。

ボディカラーは「バタフライバレーブルー」「遠山グリーン」「パールホワイト」「ボルケーノグレー」「オブシディアンブラック」「クールカーキ」の6色を設定する。

パワートレインには、シャオミ独自の「昆仑スーパー・レンジエクステンダー」と1.5Tエンジンを組み合わせたシリーズハイブリッド方式を採用。大容量バッテリーを搭載するのが特徴だ。

N70 Proは52kWhのLFPバッテリー「小米龍甲バッテリー」を搭載。CLTCモードでのEV走行距離は351km、総合航続距離は1351kmとなる。

駆動方式は前輪駆動で、0-100km/h加速は7.9秒。バッテリー残量が少ない状態での燃費は5.7L/100kmとしている。シャオミは、日常の通勤用途なら5日に1回程度の充電で済むとしている。

N70 Maxは76kWhの三元系リチウムイオンバッテリーを搭載し、EV走行距離は505km、総合航続距離は1461km。デュアルモーター4WDで、0-100km/h加速は5.5秒、バッテリー残量が少ない状態での燃費は6.1L/100kmとなる。

シャオミは、505kmというEV走行距離について、レンジエクステンダーSUVとしてトップクラスの水準としており、市街地ではEVとほぼ同じ感覚で使えるとしている。

充電性能も高く、N70 Maxは20%から80%まで最短18分で充電可能。15分の充電でCLTC換算最大310km分を走行できるとしている。公共充電器での充電成功率は99%という。

また、レンジエクステンダー用エンジンは初回点検後、3年または3万kmごとのメンテナンスで済み、92、95、98号ガソリンのすべてに対応する。

N70は、前輪にダブルウィッシュボーン式独立懸架、後輪にHアーム式マルチリンクを採用する。N70 Maxには、5段階調整式エアサスペンションと連続可変ダンパー、前後4つの油圧ブッシュを標準装備した。最小回転半径は5.67m。シャオミは、3車線道路でも一度の切り返しでUターンできるとしている。

ラック式電動パワーステアリング「R-EPS」を採用し、ステアリングのフィーリングは3段階で調整可能。100-0km/hの制動距離は38.25mで、10回連続の制動でも安定した性能を維持するとしている。

N90 MaxはN70よりさらに大型化され、全長5285mm、全幅1998mm、ホイールベース3080mm。2+2+3の7人乗りレイアウトを採用する。

シャオミはこのモデルを大型7人乗りフラッグシップSUVと位置付け、「陸上ビジネスクラス」と表現している。ビジネス用途を意識し、4席のゼログラビティシートを設定。1列目と2列目の双方でゼログラビティモードを利用できる。

1列目は2種類の仕様から選択可能で、ゼログラビティシートを選べばMPVのような広々とした空間を実現。一方、回転シートとテーブルを組み合わせれば、車内を移動式の応接スペースとして使うこともできる。

パワートレインは76kWhの三元系バッテリーとレンジエクステンダーの組み合わせ。CLTCモードのEV走行距離は464km、総合航続距離は1705kmに達する。

デュアルモーター4WDで、0-100km/h加速は5.9秒、最高速度は190km/h。WLTCモードでのバッテリー残量低下時の燃費は6.26L/100kmとしている。シャオミは、上海から北京まで途中で充電することなく走行できるとしている。

N90 Maxは、7人が乗車した状態での使い勝手にもこだわった。2列目の乗員空間は950mm、3列目へアクセスする中央通路は180mmの幅を確保している。シートを動かさなくても3列目へ移動できる設計だ。

3列目の乗員空間は890mm、ヘッドクリアランスは962mm。7人乗車時でも7個の20インチスーツケースを積載できるとしている。

さらに、収納を優先したモードでは700Cサイズのロードバイクを2台、ホイールを外さずに積載できるという。

先進装備では、後方に固体式LiDARを搭載。最大測距精度は2cmで、大型車ならではの複雑な駐車シーンへの対応を狙う。

車内では6画面の連携に対応。16.1インチ3Kセンターディスプレイ、20インチHUD、8.88インチのメーター、21.4インチ後席エンターテインメントディスプレイ、後席用モバイルコントロールスクリーン、助手席背面の拡張Padを組み合わせている。

さらに車内には220V電源も備える。ボディには「アーマーケージ構造」を採用し、2200MPa級の熱成形鋼を16カ所以上に使用。2200MPa級の内蔵式ロールケージや、一体型熱成形ドアリングも採用した。

ドアリングは13-in-1構造で、A~Dピラーと3列目までをカバー。12個のエアバッグを標準装備し、750mmの渡河性能、160km/hでのタイヤバースト時における安定制御にも対応する。

ボディカラーは既存の6色に加え、N90 Max専用色として「ワインレッド」を設定した。

今回の発表で最もユニークな存在が、29万9900元からとなるN90 Max探索版だ。N90 Maxをベースに、「クルマの中にどこまで生活空間を作れるか」という発想をさらに突き詰めたモデルで、SUVとしては珍しい純正設計の電動昇降式ルーフキャビンを採用している。

ルーフキャビンは車体と同色に仕上げられ、展開時の高さの増加を100mm以内に抑えた。ルーフ周辺の気流も最適化し、空気抵抗係数は0.245としている。

ルーフを上げると、車内は上下2層のロフト空間に変わる。

室内高は最大2294mmに達し、身長1.8mの大人でも、後席を最も低い位置にすれば車内で立つことができる。

2階部分のスペースは2110×985mm。ベッドボードの有効長は最大1946mmで、アルミフレームとアルミハニカムパネルを組み合わせた構造により、最大200kgの荷重に対応する。

ルーフには3面5枚のメッシュウインドーを設け、前方の窓は全開可能。開口面積は1.7㎡に達する。

2階部分にはエアコンの吹出口、18W充電ポート、マグネット式の固定ポイント、30mm厚の純正コンフォートマットレスも備える。

2列目は約30秒でベッドに変身可能。探索版はN90 Maxの7人乗りから5人乗りへ変更され、2列目シートも専用設計となった。2列目はボタンひとつでベッドに変形。シートを取り外したり、別途マットレスを用意したりする必要はなく、約30秒で長さ1.87m、幅1.24mのフラットなベッドを作ることができる。

ベンチレーションとヒーターも備え、電動ヘッドレストは自動的に格納される。シートは4:6分割式で、左右を別々にベッドへ変形させることも可能。片側をベッドとして使いながら、もう片側にはレール式テーブルを設置し、「リビング+ワークスペース」のように使うこともできる。

床には1.7㎡の木目調アルミ合金フロアを採用し、6000回以上の耐摩耗試験を実施。純正の3段階調整式床暖房も備え、最高温度は38℃としている。

車内での過ごし方にも工夫が凝らされている。30インチの大型プロジェクションシステムを搭載し、2列目を最後方まで移動させた場合の視聴距離は1096mm。映像を投影せずスクリーンだけを下ろす「スクリーンモード」も備え、遮光やプライバシー確保にも利用できる。

さらに、220Vと15Vの電源を備えたフローティング式ベッドサイドテーブル、容量20Lのビルトインクローゼット、115度まで開閉できる11.5インチの化粧ミラーを装備。ミラーには4000Kのリング状ソフトライトも組み込まれている。

パワートレインはN90 Maxと共通で、76kWhの三元系リチウムイオンバッテリーを搭載。CLTCモードのEV走行距離は462km、総合航続距離は1688km、0-100km/h加速は5.9秒となる。

シャオミは探索版について、44km/hでの車両横転試験や1万回の開閉試験など、過酷な耐久試験も実施したとしている。

N90 Maxは17トンの荷重にも耐える。N90 Maxについては、車体剛性をアピールする極端な試験結果も公開された。車両のルーフにN90 Maxを6台、合計17トンの荷重をかける試験を実施。その状態でも4枚のドアは正常に開閉でき、乗員スペースの構造も維持されたという。A~Dピラーにも目立った変形は見られなかったとしている。

「クルマを生活空間に」――シャオミが描く新たなSUV像を作り上げる。シャオミによると、同社の累計納車台数は9月7日時点で80万台を突破した。29カ月でこの数字に到達したという。また、過去5年間にコア技術分野へ投じた累計投資額は1055億元に達したとしている。

今回の澎程シリーズは、単なるSUVのラインアップ拡大にとどまらない。シャオミが自動車を「移動するための道具」から「暮らしのための空間」へと再定義しようとする姿勢が、4モデルそれぞれに表れている。

N70では、フラットフロアとロングスライドシートによって、日常のファミリーカーとしての使い勝手を追求。N90 Maxでは7人乗りとゼログラビティシートによって、ビジネスとファミリーの双方に対応する。そしてN90 Max探索版では、電動昇降式ルーフによって車内を“2階建て”のロフト空間へと変えてしまった。

シャオミの雷軍CEOは今回、「クルマは単なる交通手段ではなく、生活空間の一部にもなり得る」と語った。この言葉こそ、今回の澎程シリーズを最も端的に表している。

20万元台(約460万円)から30万元(約670万円)弱という価格帯で、ここまで「車内空間の使い方」に踏み込んだSUVが、中国の消費者にどこまで受け入れられるのか。今後は販売台数だけでなく、実際のユーザーがこの新しいSUVの価値をどう評価するのかにも注目が集まりそうだ。

(中国経済新聞)