通富微電、上期純利益317%増 AI需要で先端封装への転換加速

2026/09/7 11:30

世界的にAI向けコンピューティングインフラへの投資が拡大し、半導体市場の回復が進むなか、中国の半導体後工程大手、通富微電子(Tongfu Microelectronics、証券コード:002156.SZ)が大幅な増益を達成した。

同社が発表した2026年上期(1~6月)決算によると、親会社株主に帰属する純利益は前年同期比316.77%増の17億1700万元(約352億円)となった。AI向け高性能半導体やメモリー、自動車向け半導体などの封装・テスト需要が拡大するなか、同社は従来のAMD向け事業を軸としながら、先端封装プラットフォーム企業への転換を急いでいる。※円換算は1元=約20.5円で算出。

通富微電は、半導体の封装・テスト(OSAT)を手掛ける企業で、設計シミュレーションから封装、テストまでの一貫したサービスを世界の顧客に提供している。

製品はAI、高性能コンピューティング、大容量ストレージ、ディスプレードライバー、自動車電子、産業制御など幅広い分野に及ぶ。業界調査によると、2024年の世界OSAT市場における同社のシェアは8.01%で、世界4位、中国本土2位に位置する。

2026年上期の売上高は160億4100万元(約3288億円)で、前年同期比23.03%増。純利益は17億1700万元(約352億円)、非経常損益を除いた純利益は7億4700万元(約153億円)で、前年同期比77.78%増となった。

四半期別では、第2四半期だけで売上高85億5900万元(約1755億円)、親会社株主に帰属する純利益13億8800万元(約285億円)、非経常損益控除後の純利益5億7600万元(約118億円)を計上した。

同社によると、増益の主因は売上高の拡大で、とりわけ中・高付加価値製品の売上高が大きく伸びたことが寄与した。半導体封装・テスト事業の上期粗利益率は15.12%となり、前年同期から0.73ポイント上昇した。

一方、上期純利益17億1700万元のうち、9億7000万元(約199億円)は非経常損益だった。同社は、サプライチェーンや産業上下流への投資を積極的に進めた結果、投資収益が業績を押し上げたとしている。

研究開発投資も拡大している。上期の研究開発費は8億2500万元(約169億円)で、前年同期比9.25%増加した。2026年6月末時点で、同社グループの累計特許出願件数は1800件を超え、取得済み特許は800件を超えている。

さらに、今回発表された第三者割当増資では、1株55.38元で約42億2000万元(約865億円)を調達した。発行費用を差し引いた手取り額は約42億900万元(約863億円)。産業資本、公募ファンド、地方政府系ファンド、海外機関投資家、保険・証券系資産運用会社など、計18機関が参加した。

調達資金のうち31億7000万元(約650億円)は、4つの生産能力増強プロジェクトに投入する。主な内訳は、メモリー半導体の封装・テスト能力増強に約8億元(約164億円)、自動車など新興分野向けに10億5500万元(約216億円)、ウエハーレベル封装・テストに6億9500万元(約142億円)、高性能コンピューティング・通信分野に6億2000万元(約127億円)となっている。

AI向け半導体や自動車向け半導体、メモリーなど、今後の成長が期待される分野に重点的に投資する構成だ。通富微電の業績を支える最大の顧客が、米半導体大手AMDだ。同社はAMDと「合弁+協業」の関係を構築しており、AMDにとって主要な封装・テストサプライヤーとなっている。通富微電によれば、AMD関連製品の80%以上を同社が担っている。

AMDは2026年第2四半期、データセンター事業の売上高が前年同期比107%増となったことなどから、全社売上高が115億3600万ドル(約1兆6800億円)と前年同期比50%増加し、過去最高を更新した。GAAPベースの純利益も22億9700万ドル(約3350億円)と前年同期比163%増となった。

このAMDの好調が通富微電にも波及している。同社が間接出資する蘇州通富超威半導体有限公司(AMD蘇州)と、TF AMD Microelectronics(Penang)Sdn. Bhd.(AMDペナン)の上期売上高はいずれも過去最高を更新。それぞれ42億6600万元(約874億円)、53億9500万元(約1106億円)となった。

純利益はAMD蘇州が3億9500万元(約81億円)、AMDペナンが2億3300万元(約48億円)。両工場ではAIや高性能コンピューティング向け製品の需要拡大に対応し、高度な生産能力の増強や生産スペースの拡張、設備更新を進めている。

通富微電は2016年、約3億7100万ドル(当時約400億円)を投じてAMD蘇州とAMDペナンの両社の株式85%を取得した。AMDはそれぞれ15%を保有する。これにより、通富微電はAMDにとって世界最大級の封装・テストパートナーとなり、両社は資本と受注を通じて強固な関係を築いている。

ただ、AMDへの依存度の高さは同社にとってリスクでもある。通富微電によると、2023~2025年の上位5顧客の売上高比率はそれぞれ72.62%、69.00%、69.54%。2026年上期も単一顧客からの売上高が全体の48.98%を占めている。

同社自身も、AMDの経営状況が大きく変化し、半導体封装・テスト需要が減少した場合、業績が変動するリスクがあると認めている。このため通富微電は、国内外の有力半導体メーカーとの協業を拡大し、顧客基盤の多様化を進めている。

同社が掲げる次の成長戦略は、「AI+メモリー+車載+中国国内顧客」の4本柱だ。ウエハーレベル封装や先端封装分野では、音声チップ、電源管理IC(PMIC)、RF、エッジAIチップなどで中国国内の大手半導体設計企業との協業を拡大している。

自動車分野では、大手自動車メーカーやTier1サプライヤーへの近接供給体制を構築し、車載半導体の封装・テスト売上高は前年同期比で高い2桁成長を維持している。

地域別では、中国国内向け封装・テスト事業の売上高が55億8900万元(約1146億円)と前年同期比48.87%増加。粗利益率も前年同期から3.10ポイント上昇した。

AI半導体の需要拡大を背景に、通富微電は現在、AMD向けの大規模な封装・テスト事業を基盤としながら、メモリー、車載半導体、先端封装、国内半導体顧客へ事業領域を広げている。

今回の増資による約42億元規模の資金調達と、生産能力増強への大規模投資は、その戦略を具体化するものだ。

業界関係者からは、上期の業績拡大に続き、下期には増資資金を活用した設備投資が本格化することで、中・高付加価値の封装・テスト分野における同社の競争力が一段と高まるとの見方が出ている。

AIコンピューティング、自動運転、中国半導体の国産化という3つの成長テーマを背景に、通富微電が「AMD中心の封装企業」から「先端封装プラットフォーム企業」へ転換できるかが、今後の焦点となりそうだ。

(中国経済新聞)