中国人数学者が初のフィールズ賞受賞 鄧煜氏と王虹氏が快挙、数学界の歴史を塗り替える

2026/07/24 11:00

米国・フィラデルフィアで7月23日(現地時間)、4年に一度開催される国際数学者会議(ICM)が開幕し、「数学界のノーベル賞」と称されるフィールズ賞の受賞者4人が発表された。受賞したのは、中国の数学者である鄧煜(Deng Yu)氏と王虹(Wang Hong)氏、米国のジョン・パードン(John Pardon)氏、カナダのジェイコブ・ツィマーマン(Jacob Tsimerman)氏である。

左から:鄧煜(Deng Yu)氏、カナダのジェイコブ・ツィマーマン(Jacob Tsimerman)氏、米国のジョン・パードン(John Pardon)氏、王虹(Wang Hong)氏

今回、鄧氏と王氏が受賞したことで、中国国籍の数学者として初めてフィールズ賞を獲得する歴史的快挙となった。これまで華人の受賞者は、香港中文大学出身の丘成桐(シン=トン・ヤウ)氏と、オーストラリア育ちの陶哲軒(テレンス・タオ)氏の2人にとどまっていた。

また、王氏はフィールズ賞史上3人目の女性受賞者となった。これまでの女性受賞者は、イラン出身のマリアム・ミルザハニ氏と、ウクライナ出身のマリナ・ビャゾフスカ氏の2人のみであり、女性数学者の活躍という点でも大きな節目となった。

鄧氏と王氏はいずれも北京大学数学科学学院の2007年入学の同期生である。

1989年に広東省深圳市で生まれた鄧氏は、高校時代に中国代表として国際数学オリンピックで金メダルを獲得。その後、米プリンストン大学で博士号を取得し、35歳でシカゴ大学教授に就任した。

専門分野は非線形分散方程式、波動方程式、流体力学、調和解析、偏微分方程式の確率論、統計物理学など多岐にわたる。共同研究では波動運動方程式を厳密に導出し、硬球力学からボルツマン方程式を長時間スケールで導く成果を挙げている。

さらに2025年3月には、馬驍氏、Zaher Hani氏との共同研究で、125年間未解決だった「ヒルベルト第6問題」に歴史的な進展をもたらし、数学界と物理学界の双方から高い評価を受けた。

研究以外では囲碁愛好家としても知られ、受賞者インタビューでは「数学オリンピックも囲碁も、長時間にわたる高い集中力と膨大な計算力が求められる点でよく似ている」と語っている。

1991年、広西チワン族自治区桂林市生まれの王氏は、現在フランス高等科学研究所(IHÉS)の終身教授を務める。

共同研究者とともに100年以上にわたり数学界の難問とされてきた三次元掛谷予想を解決。この成果は解析学における長年の停滞を打破し、レーダーやリモートセンシングなど信号処理分野にも新たな理論的基盤を提供したと評価されている。

王氏は16歳で北京大学地球・空間科学学院に入学し、翌年に数学科学学院へ転籍。学部時代には「古典的ホッジ理論と距離空間上のホッジ理論」に関する卒業論文を執筆し、張瑞祥氏との共同研究では2+1次元波動方程式に関するSogge局所平滑性予想を証明した。

2011年に北京大学で学士号を取得後、フランスのエコール・ポリテクニークで工学学位、パリ第11大学で修士号を取得。2019年には米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得し、その後はプリンストン高等研究所で博士研究員を経て、2021年からカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の助教を務めている。

受賞後のインタビューでは、「両親は幼い頃から私に大きな自由を与えてくれた」と感謝の言葉を述べた。

今回受賞したジョン・パードン氏は1989年、米ノースカロライナ州チャペルヒル生まれ。スタンフォード大学卒業後、プリンストン大学で博士号を取得し、現在は同大学数学科教授を務める。幾何学的位相幾何学やシンプレクティック幾何学における画期的な研究成果で知られる。

一方、1988年に旧ソ連・カザンで生まれたジェイコブ・ツィマーマン氏は、1996年に家族とともにカナダへ移住。16歳でトロント大学に入学し、2011年にプリンストン大学で博士号を取得した。超越数論、解析的整数論、算術幾何学を融合した研究で大きな成果を挙げたほか、約40年間未解決だったアンドレ・オールト予想を完全に証明したことで知られる。

フィールズ賞は、40歳未満の優れた数学者に贈られる世界最高峰の賞で、カナダの数学者ジョン・チャールズ・フィールズの提唱により創設された。4年に一度、2~4人が選ばれ、受賞者には1万5,000カナダドルの賞金が授与される。

数学分野の最高栄誉として広く認知されるフィールズ賞は、受賞研究が5G通信や人工知能(AI)など最先端技術の理論的基盤を支えていることから、学術界だけでなく産業界からも高い注目を集めている。

これまで90人余りの受賞者の大半は欧米の名門大学に所属しており、特に米国とフランスの研究機関が中心を占める。受賞者の約8割は、プリンストン大学、ハーバード大学、パリ高等師範学校などで学んだ、あるいは研究・教育に携わった経験を持つとされる。

今回、中国国籍の数学者2人が同時に受賞したことは、中国数学界の国際的な存在感の高まりを象徴する出来事として、大きな注目を集めている。

(中国経済新聞)