2025年、中国の無人航空機産業は目覚ましい成果を挙げている。特に、今年の国際低空経済博覧会では、中国の電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカー「沃蘭特(Volant)」が海外から17.5億ドル規模の仮受注を獲得し、業界最大級の契約として注目を集めた。中国全体では、すでに1,400機を超えるeVTOLの購入意向が報告されている。

しかし、このような華々しい数字の一方で、業界関係者の多くは慎重な姿勢を崩していない。なぜなら、eVTOLの本格的な商用化には依然として2つの大きな壁――実運用への導入と、正式な航空機としての「型式証明(TC)」「製造認定(PC)」「耐空証明(AC)」の取得――が立ちはだかっているからだ。
現在、中国国内でこれら3証をすべて取得したのは、億航智能のEH216-S型のみであり、峰飛航空のV2000CG型も取得済とされるが、他の多くの企業は依然としてそのプロセスの途中にある。
一方で、現実的な収益化の手段として、より構造がシンプルな物流用ドローンが注目されている。たとえば、浙江省舟山諸島では、早朝の海霧が漂う中、ドローンが港から新鮮な海産物を積み込み、内陸の物流拠点まで短時間で輸送する実証運用が行われており、商業的にも成立しつつある。
調査会社「天眼査」のデータによれば、中国には約3万6,000社のドローン関連企業が存在するが、そのうち安定した収益を上げている企業はごく一部にとどまる。技術的には「飛べる」段階に到達していても、「使える」「稼げる」体制を築けていない企業が大半だ。

展示会では、都市型空中タクシーや緊急医療搬送、ビジネス用空中移動などの将来像が描かれていたが、現時点ではいずれも設計段階にとどまり、実運用には至っていない。
さらに、eVTOLの開発と証明取得には多額の資金が必要であり、多くの企業が継続的な資金調達に課題を抱えているのが実情である。「空を飛ぶ夢」は魅力的だが、それを持続可能なビジネスモデルとして実現するには、地に足のついた経営戦略と実行力が不可欠だ。
低空経済の「盛宴」は、まだ前菜にすぎない。これからは単なる機体開発を超え、社会の中でどのように活用され、どのように利益を生むのかという根源的な問いに、企業が真正面から向き合う必要がある。真の意味での「飛躍」は、まさにこれからが本番だ。
(中国経済新聞)