「和」を大切にする日本は、何事もバランスや安定を求める。会社の経営もしかりである。経営者は一時の荒稼ぎを求めず細く長く続く商売をする。会社を存続させるのは木を育てるのと同じで、そそくさと伐採して薪を売ったりせず、じっくりと育てるものと考えている。
こうした「和」の背後にあるのは、企業文化における「信頼」という二文字である。
驚くかもしれないが、価格競争はしないという「紳士協定」をいまだに踏襲している業界もある。明文化はせず、暗黙の了解である。各社とも、こうした「信頼関係」がひとたび崩れると業界全体が無秩序な状態になると見ているのだ。
創業百年以上という老舗の集まる京都では、和菓子店は売り上げを伸ばすのに安値で勝負することはまずない。そちらは饅頭を売り、こちらは抹茶ようかん作り、それぞれが平穏となる。清水坂を一巡りすると、八つ橋の値段はどの店もほぼ同じである。こうしたバランスは、お互いを尊重し永らく共存しているからこそのものである。