テンセントは5 月 14 日、全社員にメッセージを送る形でWechat事業群(WXG)の大幅な組織改革を発表した。組織の改善や人事異動を実行する中で、EC商品部の設立と、オープンシステム基礎部のオープンシステム部への格上げが焦点となる。
メッセージの全文は以下の通りである。
事業の成長に向け、検討の結果Wechat事業グループ(WXG)について次のような措置を講じる。
一、組織替え
1、EC商品部を設立。Wechatの取引モデルを模索する。取引の基盤およびエコロジーを成長させ、新たなモデルの取引を実行する。
2、オープンシステム基礎部をオープンシステム部に改め、Wechatアカウントやミニアプリの企画、開発、運営を担当する。
二、幹部交代
オープンシステム基礎部のリーダーであったLakezeng(曽鳴)がEC商品部リーダーに就任し、Wechat事業グループのAllenzhang(張小竜)部長のもとで、担当業務並びにスタッフの管理を全面的に受け持つ。
Angusdu(杜嘉輝)をオープンシステム部のリーダーとし、Lakezeng(曽鳴) のもとで担当事業並びにスタッフの管理を全面的に受け持つ。
「現代広告」はテンセントの今回の策について、「EC事業の本格展開」にほかならない、と分析している。月間利用者数13億人という膨大なアクセスを誇るWechatを改革する意義は大変なもので、単なる事業の再編ではない。事業計画や人事からエコロジーの構築や業界内の競争や提携に至るまでかなりの影響が生じ、中国のITの行方を塗り替えるものになりそうである。
Wechatはかねてから、ミニアプリ(1日の利用者数5億人以上)やアリペイ(利用者数10億人)、モーメンツ広告など基盤を整えてはいるが、商業化については長らくゲームや広告事業、および京東や拼多多など他のアプリへの誘導に依存してきた。QuestMobileによると、2023 年、Wechat全体のGMV(流通取引総額)は4.5兆元以上であったが、このうちテンセントの帰属分は15%以下であった。
今回テンセントがECの部署を別途設けた一番のねらいは、Wechat内部で取引サイクルを整えてアクセス分を取引へ変えていくことである。
今回の組織改革で注目されるのが、曽氏の異動である。Wechatオープンシステムのリーダーとしてミニアプリの立ち上げに努め、2023年には取引額が3兆元以上となって、社内で「Wechat商業化の第一人者」と称されていた。曽氏はミニアプリについて、当初のQRコード注文からライブコマース導入などへ拡大して用途を多様化するなど、「ツールからエコロジーへ」という成長モデルを打ち立てた。今回、EC部に異動することで、この成功事例を再現することが期望される。またEC部が張小竜氏の配下に置かれ、オープンシステム部が曽氏の配下に置かれることで、「EC優先、オープン化で支援」という枠組みが出来上がり、EC事業を主力に据えるというテンセントの戦略が十分にうかがえる。
(中国経済新聞)