中国で3月11日まで開催された「全人代」で、様々な政策や報告、法律原案の審議や採択が行われたが、待望久しかった「民間経済促進法」は蚊帳の外になってしまった。
社会主義市場経済の重要な部分である企業は、経済成長の重要なエンジンであり、イノベーションの源で、雇用の主な出所でもある。
その民間経済が最近、様々な問題を抱えている。とりわけ顕著なのは市場参入時の目に見えない障壁であり、「ガラスのドア」「回転ドア」といった現象で、ある分野への企業の進出が妨げられている。また融資が難しく高額であり、資金を手に入れづらい状態である。さらに権益の保護について、一部の事例によると、民間企業や実業家の合法的な権益が時に十分に確保されず、個人の資産が守られなくなっている。
国内外の経済情勢が混とんとしている中、民間経済を成長させるために法を策定した。合法的な権益を法的手段で確保し、成長環境を改善し自信をつけさせることが狙いであり、市場の見通しを安定させ活力を与える有力な措置にほかならないものである。
民間経済支援のバロメーターとも見られる「民間経済促進法」の原案は、中国で初めての民間経済成長への土台となる法である。経済の下押しや国内消費の伸び悩み、デフレ、長引く不動産業界の低迷、さらに米中間の貿易関係が一段と悪化する中で、民間企業や実業家の合法的な権益を確保し期待感を持たせるための「民間経済促進法」は、民間企業の「駆け込み寺」とも見られている。
中国政府は2024年2月にこの法の制定にとりかかり、同年10月に原案となる意見募集稿を発表した。「権益保護を強化」と強調しており、批判の声が高かった他地域取り締まりや身柄の自由の制限、差し押さえ、勾留、資産の凍結をルール化し、行政や刑事手段による金銭トラブルへの違法な関与を禁止するものである。ただその一方で、企業は中国共産党の指導を支持し民間経済組織における「共産党組織のリーダー的な役割」を発揮すること、とも強調されている。
李強総理の政府活動報告では、地方の企業誘致をルール化する策を打ち出し、民間経済の環境改善に向けて全人大常務委員会で民間経済促進法の原案を審議するように求めている。
全人大常務委員会の活動報告でも、「2025年には社会主義市場経済の健全化への法的制度をめぐり、民間経済促進法を制定する」と表明されていた。
しかし今回の全人代では、この法案は採択されなかった。
中国企業資本連盟のチーフエコノミストである黄大衛氏は、「重要な経済政策となる法案が全人代で採択されなかったのは極めて異例だ。民間経済を促進すべきか、またどのように進めるかについて、関係者同士の対立が深刻だったのだろう」と見ている。
黄氏は、「中国政府が法律の制定を支配している中、この法が採択されなかったのはかなり意味深長だ。ある法案を採択する際は通常、共産党中央と全人代の代表が事前に十分話し合うものだが、今回は各界の委員(全人大代表)の対立がかなり大きかったと見られる。理由としてはまず、法の制定への考えに根本的な隔たりがあり、固定観念が激しくぶつかったのではないか。それと、法的手段により民間企業に期待感を持たせようとしたが、その一方で共産党の指導に強くこだわり、両者を顧みる必要があって、その間に固定観念上の重大な対立が存在している。民間企業が求めているのは法治社会における自由な市場経済であるが、共産党は計画経済の代表者だ。中国政府は、民間の実業家が資産階級となって政府の権力に立ち向かうことを恐れて、政治の安全性と経済成長のバランスを取りづらい状態が続いている」と述べている。
法案は年内に採択か
香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、北京の中国企業研究院の学者の話として、「この法案が今回の全人代で採択されなかったのは複雑な事情があるからではないか。この法の目的が法律の強化であることを考えれば、今回の見送りは先延ばしと見るべきでない」と伝えている。この学者はまた、反応や意見を取り入れて実施細則まで検討した後、4月または6月の全人大常務委員会で採択される見通しと推測している。
また「大公報」は、北京の清華大学金融研究院学者の話として、「法律原案は普通、全人大常務委員会で審議を3回行った上で採決される」とし、今年にその3度の審議を行い、特に問題がなければ採決へと引き渡され、採択ののちに実行されるとの見方を伝えた。
中国経済はコロナ禍を経て不振が続き、消費が伸びず民間投資の伸びが鈍化している。公式データによると、全国の固定資産投資額に占める民間分の割合は2018年の61%から2024年には50%に減り、中でも2023、2024年は連続で減少している。
習近平総書記は今年2月17日、民間企業の座談会で、「共産党と国家による民間経済成長への基本方針は、中国の特色ある社会主義制度体系に取り込まれており、徹底的に実行し、変わることはなく、変わってはならない。新しい時代、新しい道のりで民間経済は見通しが明るく期待感十分であり、多くの民間企業や実業家が今こそ大活躍する時だ。考えを一致させ、自身を固めて、民間経済の健全な成長や質の高い発展を進める。多くの民間企業や実業家は国に報いる心を持ち、ひたすら成長を目指し、法を守って経営し、富を自身から全体に広め、中国式現代化の推進へ新たに大きく貢献してほしい」と強調した
習主席はまた、「民間経済を成長させる上での問題や課題は、全般的に改革や発展、産業構造の改革の中で出てくるもので、全体的でなく部分的で、長期的でなく一時的で、解決不能でなく克服できるものだ。考えや行動を国内外の情勢に対する共産党中央の判断に合わせ、経済政策に対する共産党中央の意思決定に合わせ、問題や課題の中で先行きを見て、光を見て、将来を見て、発展の力を維持し、発展の自信を強め、闘って勝利するという元気を保たなければならない」とも強調した。
全人大の娄勤倹報道官が3月4日の記者会見で語った内容によると、「民間経済促進法」原案には「二つの『ゆるぎなく』を堅持する」との言葉が明記されている。これは、20年以上も前に掲げられた「ゆるぎなく公有制経済を固め発展させる」と、「ゆるぎなく非公有制経済の発展を支援し、支持し、リードする」の二つを示す。
娄報道官によると、今回の原案は2024年12月に国務院が全人大常務委員会に対し初回審議をさせ、先月に二度目の審議を行った。今後は、常務委員会による審議の進み具合や各方面の意見や提案を踏まえ、修正や改訂をした上で、早期の発表を目指すという。
(中国経済新聞)