日本車が中国市場を諦めない理由

2025/06/1 07:30

4月23日、上海モーターショーが盛大に開幕し、トヨタ、ホンダ、日産、マツダなどの日本車企業が開発した新型電気自動車(EV)が注目を集めた。特に日産は、今後2年間で2000億円を投じ、中国の新エネルギー車市場に本格参入する計画を発表し、業界に衝撃を与えた。過去数十年間、日本車は技術力と品質で世界の自動車産業を牽引してきたが、近年、中国市場での苦戦が続いている。それにもかかわらず、なぜ日本車企業は中国市場を諦めず、むしろ投資を拡大しているのか。本稿では、その背景と投資動向を詳細に分析する。

日本車企の中国市場での現状

 日本車企業は、長年にわたり中国市場で成功を収めてきた。トヨタの「カローラ」、ホンダの「アコード」、日産の「ティアナ」、そして「CR-V」といったモデルは、中国の街中で広く見られ、信頼性と経済性で消費者から高い評価を得てきた。2020年時点で、日系車の市場シェアは24・1%に達し、4台に1台が日系車という状況だった。この成功は、中国での自家用車普及の歴史とほぼ重なる。

 しかし、2024年に入ると状況は一変した。日系車の市場シェアは12・3%にまで落ち込み、半分以下に縮小した。トヨタの販売台数は前年比6・9%減の177・6万台、ホンダは30・9%減の85・2万台、日産も12・2%減の69・7万台と、いずれも大幅な減少を記録した。一方、中国の新興メーカーであるBYDは381万台を販売し、日系3社の合計販売台数を上回る驚異的な成長を見せた。かつての「燃費が良く、耐久性が高い」という日系車の強みは、電気自動車(EV)時代において影を潜め、市場での競争力が大きく低下した。

日本車企が中国市場で苦戦する理由

 日本車企業が中国市場で苦戦する最大の理由は、電動化への対応の遅れである。中国の新エネルギー車(NEV)普及率は2024年に50%を超え、消費者のEV志向が急速に高まっている。しかし、日本車企業はこれまでガソリン車やハイブリッド車(HEV)に注力し、純粋な電気自動車(BEV)の開発に消極的だった。トヨタの「bZ4X」、ホンダの「e:NP2」、日産の「Ariya」といったEVモデルは中国市場に投入されたものの、BYD、ファーウェイ傘下のAITO、ジーカー(Geely傘下)、小米(シャオミ)などの中国ブランドに比べ、注目度や販売実績で大きく劣った。

 日産の前社長である内田誠氏は2024年3月に退任する際、「中国市場の変化のスピードは我々の予想を遥かに超えていた。電動化の波があまりにも速かった」と語った。この言葉は、日本車企業が中国の消費者ニーズや市場動向に追いつけなかった現実を如実に表している。

 日本車企業は、長年にわたり「燃費効率の高い内燃機関」や「ハイブリッド技術」に注力してきた。これに対し、中国市場ではバッテリー技術、ソフトウェア、自動運転技術が急速に進化し、EVが主流となった。日本の技術路線は、中国市場のニーズと乖離し、競争力を失う結果となった。特に、EVに不可欠なバッテリー、ソフトウェア、チップ、充電インフラの分野で、日本車企業は中国企業に大きく後れを取っている。

中国市場の重要性

 中国は世界最大の自動車市場であり、2023年には生産・販売台数が3000万台を突破し、世界全体の約30%を占めた。特に新エネルギー車市場は9年連続で世界一を誇り、グローバルな自動車産業の中心地となっている。中国市場での成功は、自動車メーカーの世界的な地位を決定する重要な指標となっている。トヨタ、ホンダ、日産にとって、中国市場を失うことは、グローバル競争の舞台から退場することを意味する。

 中国はEVの技術開発と普及において世界をリードしている。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2035年までに純粋な電気自動車が世界の新車販売の50%以上を占める見込みだ。現在、テスラが市場シェア19・3%、BYDが16%で首位を争う中、日産のシェアはわずか3・2%、ホンダは0・2%に過ぎない。トヨタはハイブリッド車で一定のシェアを維持しているものの、純粋なEV分野では大きく出遅れている。この状況下で、中国市場での巻き返しは、日本車企業にとって生き残りの鍵となる。

日本車企の「再出発」と投資動向

 一、トヨタ:中国での現地開発と高級EVブランドの強化

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