中国汽車工業協会、「無秩序な価格競争」に反対する提案を発表

2025/05/31 17:09

5月31日、中国汽車工業協会は「公平な競争秩序の維持と業界の健全な発展に関する提案」を発表し、自動車業界における無秩序な価格競争、いわゆる“内巻き式”の競争に対して強い懸念を示した。協会は、企業に対し公平な競争原則の遵守と、持続可能な市場環境の構築に取り組むよう呼びかけている。
今回の提案の背景には、国内メーカーによる相次ぐ値下げ競争がある。5月23日、中国最大手のEVメーカーであるBYD(比亜迪)は、「王朝ネット」および「海洋ネット」ブランドの22車種について、1万2000元〜5万3000元の値下げを発表した。これは、年間550万台の販売目標に対する進捗が25%未満にとどまっていることへの危機感の表れとも受け止められている。
その後、5月26日には吉利汽車(Geely)も「銀河シリーズ」の複数車種を5000元〜2万元値下げすると発表。BYDのエントリーモデルを標的に、市場シェアを確保する狙いがあると見られている。
この一連の値下げは、業界全体に波紋を広げただけでなく、資本市場にも深刻な影響を与えた。BYDの株価は、5月26日から27日にかけてA株市場で時価総額が1000億元以上も下落し、A株・香港株合わせて8%以上の急落となった。
中国汽車工業協会の提案は以下の三点に集約されている:
• 公平競争の原則の遵守
全ての企業が公平競争の原則に従い、法律と規則を遵守した事業活動を行うこと。市場支配力のある企業は、他の事業者の生存空間を不当に圧迫すべきではなく、健全な競争環境を維持すべきである。
• 無秩序な価格競争の排除
コストを下回る価格での販売や虚偽広告による販促など、市場秩序を乱す行為は禁止すべきであり、業界全体および消費者の利益を損なうべきではない。
• 企業による自主点検と是正
各企業は、国家の関連法令に照らし合わせて自社の経営活動を点検し、合法性と適合性を確保すべきである。
提案では、中国の新エネルギー車(NEV)市場が急速に成長し、新車販売に占めるNEVの割合がすでに40%を超えていることを肯定的に評価する一方、業界全体の収益性が悪化していることに強い懸念を示している。
その主因として、近年激化している“無秩序な価格競争”による“内巻き式競争”が挙げられた。企業が互いに消耗戦を繰り返すことで、通常の経営が困難となり、産業チェーンやサプライチェーンの安全性にも悪影響を及ぼしているという。最悪の場合、業界は“悪循環”に陥るリスクすらある。
中国汽車工業協会は、業界各社が短期的な利益にとらわれるのではなく、長期的な視点での市場秩序の維持に努めるべきだと訴える。企業間の協調と法令遵守を通じて、公平で透明な競争環境を構築し、中国自動車産業全体の持続可能な成長を共に支えることが重要であると締めくくった。

(中国経済新聞)