広東省で、広州ー仏山間の南環状線および仏山ー東莞間の都市間鉄道が間もなく開通し、仏山ー肇慶線と東莞ー恵州線とつながって広州、仏山、東莞、肇慶、恵州の5都市が1本の線で結ばれる。全長258キロメートルとなるこの路線は、地下鉄のような一般の軌道交通として運営される大動脈となる。
この線は地下鉄会社が建設や運営をし、駅やロゴマーク、放送の仕方は地下鉄とほぼ同じであるが運賃は異なる。駅の数は39で、快速も走らせ最高時速は200キロに足する。利用の際は高速鉄道や都市間列車のように切符を用意する必要はなく、ICカードで乗車できる。
「軌道交通」方式の運営はこれまで、広州ー深セン線、広州ー清遠線、広州東環状線でも導入されており、今後はグレーターベイエリア全体が1本で結ばれ、「カード1枚でネットワークの都市全体へ移動」という交通網が形成されそうである。
こうした運営方式は、都市圈や都市群が整備されている故の導入である。都市圈や都市群が形成されつつある中、都市同士を結ぶ必要が生じ、地理的な境目が消えて統合していく。交通面の相互接続を基本とし、高速鉄道や都市間列車と軌道交通が一本にまとまっていく。
ただし、すべての都市で軌道交通の建設が可能なわけではない。中国は現在、300以上の主要都市が存在する中、軌道交通があるのは40か所に過ぎず、三、四線の都市の多くは取り残されている。軌道交通を造るには一定の利用者数や建設費を賄う財力が必要であり、経済力や人口が不十分であれば実現できない。
広東省が先駆けて「都市間軌道交通」を走らせる大きな理由は、グレーターベイエリアの存在が挙げられる。11の都市がほぼ統合され、中でも広州と深センは中国の中でも特に都市圈が充実化している。統合の程度が他地域よりはるかに高く、世界最大の製造業の拠点であり、空港や港の数も非常に多い上、高速鉄道も都市間列車も軌道交通も十分に整備されている。
グレーターベイエリア内の中国本土の9都市は、市外への通勤者数が120万人で、1日の移動者数はのべ600万人以上となっている。このような状況から、広東省は先駆けて「都市間軌道交通」を走らせるに至ったのである。
グレーターベイエリア内で香港、深セン、広州などは国際的な金融センターで、深セン、広州、東莞などは1兆元都市(GDP 21兆円以上)であり、さらには珠海、中山、恵州、肇慶、江門といった工業都市も存在する。広東省は、広州、深セン、珠江口西岸の3大都市圈の統合発展を目指し、珠江口周辺の100キロメートルを「黄金内湾」とする構想を出している。エリア内11都市は2023年のGDPが 14兆元(約301兆円)以上であり、経済域として世界で10番目の存在である。
(中国経済新聞)