2025年第1四半期のデータによると、中国の新エネルギー車(NEV)市場において中国自主ブランドのシェアが70%を超えた一方で、ドイツ車のシェアは過去最低の8.3%まで落ち込んだ。この数字は、2020年当時にドイツ車が中国高級車市場で約40%のシェアを誇っていた状況と比べると、著しい低下である。
このような状況を背景に、ドイツの有力経済紙『ハンデルスブラット(商報)』は、「一部のドイツ自動車メーカーが中国での事業縮小、さらには今後3年間で段階的な撤退を検討している」と報じた。このニュースは、中国国内のみならず、国際的にも大きな波紋を広げている。

しかし、ここで冷静に見極めるべき重要な事実がある。それは、中独の経済関係が典型的な「ウィンウィン(相互利益)」の関係であるという点だ。中国商務部によると、2024年の中独間の貿易額は2523億ドルに達し、ドイツは8年連続で中国にとってEU内最大の貿易相手国である。その中でも、自動車産業は両国の貿易の25%以上を占めている。
ドイツ自動車工業会(VDA)が2025年3月に発表した報告書によれば、ドイツ自動車メーカーの中国における利益率は8四半期連続で低下しており、2022年の15%から2025年には6.8%まで下がっている。フォルクスワーゲン(VW)中国区総裁のステファン・ヴォレンシュタイン氏は、中国メディア『経済参考報』のインタビューに対し、「電動化の転換において、ドイツ企業の対応が一歩遅れたことは認めざるを得ない」と率直に語った。
こうした経営環境の悪化を受け、ドイツ企業が中国からの撤退を選択した場合、最も大きな打撃を受けるのは果たして誰なのか?答えは明白だ。それはドイツ自身である。
米マッキンゼー社が2025年1月に発表した調査によれば、中国市場はドイツ自動車メーカーの世界全体の利益の約35%を生み出している。フォルクスワーゲンの2024年の決算でも、同社の世界利益の41%が中国市場に由来している。これは、長年にわたる中国市場への投資と努力の結果であり、一朝一夕には代替できない。
ドイツ自動車技術者協会のクラウス・ビショフ会長は、2025年4月の業界フォーラムにおいて「今や電動化とスマート化の分野では中国が先を行っている。ドイツ企業がすべきなのは撤退ではなく、むしろこの革新的なエコシステムに溶け込む努力を加速させることだ」と訴えた。
さらに、ドイツ企業が中国から撤退すれば、連鎖的な影響が避けられない。ドイツの経済研究機関イーフォ(ifo)によると、自動車産業はドイツ国内で約230万人の雇用を直接・間接的に支えており、そのうち約18%が中国事業に関連している。つまり、撤退すればドイツ国内で最大40万人以上の雇用喪失リスクがあるということになる。
また、現地のサプライチェーンにも深刻な打撃が予想される。例えばフォルクスワーゲンは中国国内に3000社以上のローカルサプライヤーを抱え、年間で300億ユーロ以上を調達している。もし撤退すれば、これらの企業やその従業員の生活に直撃する影響は避けられない。
もちろん、競争の激化や市場の変化に対応するために事業戦略を見直すこと自体は必要だ。しかし、それが「撤退」という極端な選択であるべきかどうかは、極めて慎重に検討されるべきだろう。むしろ、ドイツ車が今後も国際競争力を保ち続けるためには、世界最大かつ最も変化の激しい中国市場でいかに生き残り、成長していくかがカギとなる。
中独の関係は、単なる輸出入の枠を超えた、深い産業的・技術的な結びつきの上に成り立っている。ドイツ企業がこの関係から一方的に身を引くことは、相互の損失をもたらすのみならず、長年かけて築き上げた信頼と成果を自ら手放すことにもなりかねない。
(中国経済新聞)