中国で、他人の子とは知らず10年間息子を育てた男性が慰謝料などを求めて元妻を訴えた。
交際をしていた胡天さん(仮名)と陳佳さん(仮名)は、2011年6月陳さんが妊娠したことで入籍をし、翌年に息子のフーちゃん(仮名)が生まれた。夫婦はけんかが絶えず2018年に破局し、フーちゃんは父親の胡さんが引き取り、母親の陳さんが週末に会いに行くという形で協議離婚をした。ところが、フーちゃんは成長するにつれて顔立ちや性格が胡さんとまるで違うようになり、親戚に勧められて親子鑑定に行った胡さんは、DNA分析によりフーちゃんの間に血縁関係が存在しないと告げられた。
フーちゃんが自分の子供でないと分かった胡さんは、実の母親である陳さんに養育の義務があり、子供を引き取るべきだと見なして、子育てにかかった費用の返金や精神的苦痛への慰謝料を求めて訴訟を起こした。
陳さんは子供の引き取りには同意したが、胡さんの求めた養育費および慰謝料は成り立たないと主張した。結婚後の出費はほぼ陳さんが負担したほか、生活費については出産後に手に入れた集団経済による土地の移転や店舗の収益などで賄えると言った。
原告の胡さんは、事情を知らずフーちゃんが実の子であると思い込み、法的に果たす必要のない子育ての義務を果たした上、元妻の陳さんについて、子供本人にも財産を得る権利があるにしても子育ての義務は免れないと主張した。胡さんが出費をしたことと陳さんが利益を得たことに因果関係があり、法的に見て子育てに関わった費用の返金を求めることができる、との考えを裁判所も支持した。
また慰謝料について胡さんは、陳さんが交際期間中に他人と交際していたことを隠していたためにフーちゃんが実の子であると思い込み、10年間にわたり愛情を注ぎ育てた結果、他人の子であると知って人格権が著しく侵害されたと主張した。よって陳さんに対して慰謝料を支払うよう訴え、裁判所もこれを支持した。
裁判の結果、陳さんは、フーちゃんを引き取ったうえ、養育費として117600元(約232万円)を胡さんに返金し、慰謝料20000元(39.4万円)を支払うよう命じられた。
(中国経済新聞)