中国家電量販最大手「国美控股集団(Gome Holdings Group)」の本社ビルは、競売から2カ月が経過したたものの、未だ買い手が見つかっていない状態だ。11月1日、国美グループ本社は従業員への給料支払いを停止し、従業員に会社と進退を共にする「誓約書」に署名するよう求めた。
その結果、「国美、給料支払い停止」というワードが検索ランキングで上位に入り、国美が従業員に誓約書への署名を求めたことが労働法に違反するかどうかが注目されている。
また、関連ニュースの中で「国美の創業者である黄光裕氏は、妻が10年以上苦労して支えてきた状況を台無しにしてしまった」というコメントへの「いいね!」が最も多かった。
黄光裕(Huang Guangyu)氏は1969年5月、広東省汕頭市の農家に生まれた。その後、兄とともに北京で起業し、1987年に北京で小型家電の販売店「国美電器」を開業。それから 20 年も経たないうちに、彼は中国最大の家電量販店を築き上げ、家電量販店チェーン モデルの創始者となった。2006年には、フォーブスの中国富豪ランキングで 1 位を獲得し「中国企業において影響力のあるCEO」の称号を授与されている。
2008年、黄氏は違法営業と贈収賄の罪で逮捕され、14年の懲役と6億元(約122億円)の罰金、2億元(約40億円)の財産没収の判決を受けた。
2021年2月に黄氏は出所したが、中国の小売業界の風景は一変していた。刑務所にいた間、妻がCEOになり国美グループを支えていたが、新型コロナウイルス流行による、長期間の店舗休業、来客数の激減、店舗の家賃やスタッフの給料など、毎月の出費が国美の経営状況を更に悪化させた。
ビジネスの第一線に復帰した黄氏は、すぐに大きな動きを見せた。
まず、戦略的な事業調整を行った。この年、国美は「真快楽(zhenkuaile)」「打扮家(dabanjia)」「折上折(zheshangzhe)」という3つのアプリを立て続けに発表し、Eコマース事業へ参入した。
しかし、現状では、これら3つのEコマース事業は、いずれも失敗に近い状態にある。
2022年上半期、国美は562店舗を閉鎖し、60の県・市から撤退した。同社の2022年中間決算報告では、負債総額が585億元(約1.1939兆円)に達し、そのうち229億元(約4673億円)が1年以内に返済が必要な銀行等の借入金であった。一方、同社の現金および現金同等物は、現在24億元(約489億円)しかない。
翻弄され続けた国美は、業績が改善されないばかりか、今では従業員の給料すら払えなくなってしまった。
黄氏は10年以上刑務所にいたが、少なくとも国美はまだ手元にあり、倒産の心配はない。また、同社には上場企業以外にも優良な不動産資産が数多くある。
しかし、同じ中国の家電量販店「蘇寧電器(Suning Appliance Co., Ltd.)」の創業者である張近東(zhang jindong)氏(日本の免税店ラオックスを買収)は、長年苦労してきた甲斐もなく、蘇寧電器を失い、多額の借金も抱えることになってしまった。
中国経済を支えてきた家電量販店の多くが、今、経営危機に追い込まれている。
(中国経済新聞)