10社超の自動車メーカーが相次いで値引き 中国で秋の商戦、価格競争が激化

2026/09/8 16:30

秋の商戦が始まる9月、中国の自動車市場で再び大規模な値引き競争が繰り広げられている。

米テスラは9月7日、9月30日までに注文し、在庫車を購入する顧客を対象に、主力EV「Model 3」と「Model Y」の全モデルで購入特典を打ち出した。Model 3は5000元(約10万円)、Model Yは1万元(約21万円)の現金割引を実施するほか、一部モデルでは8000元(約16万円)の保険補助も併用できる。

5年間の金利ゼロのローンを組み合わせた場合、Model 3の価格は22万2500元(約456万円)からとなる。テスラ中国は、2023年9月にModel 3を刷新し、2025年1月にModel Yを刷新して以降、両モデルとも「全モデルで過去最安値の水準」だとしている。

テスラだけではない。中国メディアの第一財経によると、9月に入り少なくとも10社を超える自動車メーカーが、相次いで購入支援策を発表している。対象は新興EVメーカー、中国の自主ブランド、日米欧などの合弁ブランド、高級車ブランドまで幅広い。

各社が打ち出しているのは、金利ゼロのローンや現金値引き、買い替え補助、期間限定の特別価格などだ。

中国の新興EVメーカーでは、零跑汽車が9月1日から「百万加速度」と銘打った秋のキャンペーンを開始した。全モデルを対象に期間限定の購入特典を用意し、Cシリーズでは最大1万5680元(約32万円)、BシリーズとLafa5では最大1万9680元(約40万円)相当の優遇を受けられる。さらに、初めて購入する非営業車両のオーナーには、4項目の生涯保証も付ける。

極氪(Zeekr)も9月、1万元(約21万円)の保険補助を実施。頭金20%から利用できる5年間の金利ゼロローンに加え、最大1万5000元(約31万円)の買い替え補助と2年間の金利ゼロローンを組み合わせたプランなどを用意している。

小米汽車は「SU7」と「YU7」を対象に、3年間の金利ゼロ、または6000元(約12万円)の保険補助を選択できるようにした。高性能モデルの「SU7 Ultra」では、5年間の金利ゼロに加え、4万9000元(約100万円)相当の特典を提供する。

小鵬汽車の「MONA M03」も、5000元(約10万円)の予約金を支払えば、最大2万2400元(約46万円)相当の購入特典を受けられる。頭金ゼロや2年間の金利ゼロローンなどが含まれている。

中国の自主ブランドや合弁メーカーも、値下げ競争を強めている。吉利汽車は「智擎金秋」と題したキャンペーンを展開し、買い替え時に最大2万元(約41万円)の補助金を支給。「星瑞i-HEV」は買い替え時の価格を8万2700元(約169万円)からとしている。

広汽埃安(AION)は「N60」の改良モデルを10万3800元(約213万円)から、「UT 530寧徳版」を期間限定の8万5800元(約176万円)という一律価格で販売する。

一汽トヨタの「RAV4栄放(RAV4)」も、1万8000元(約37万円)の現金特典に加え、買い替え時に利用できる政府の補助金を組み合わせることで、実質的な購入負担を引き下げている。

今回の価格競争で特に目を引くのが、高級車ブランドによる大幅な値下げだ。上汽アウディは9月1日から30日までの期間限定で、「A7L」を26万2800元(約539万円)から販売する。41万8700元(約859万円)のメーカー希望小売価格と比べると、15万5900元(約320万円)の値下げとなる。

「Q6」も27万9800元(約574万円)から。メーカー希望小売価格は46万7600元(約959万円)で、値下げ幅は18万7800元(約385万円)に達する。約19万元(約390万円)もの大幅値引きで、今年の中国高級車市場でも異例の水準となっている。

ボルボも大幅な値下げに踏み切った。新型「XC70」の2027年モデル「99周年感謝版Core」は、メーカー希望小売価格が41万1900元(約845万円)だが、9月の期間限定価格は22万9900元(約471万円)。

さらに、当月限定の15000元(約31万円)の割引と、15000元(約31万円)の政府補助金を適用すると、購入価格は19万9900元(約410万円)からとなる。

当初のメーカー希望小売価格からみると、値引きと補助金を合わせた差額は21万元(約431万円)を超える。

各社がここまで積極的な販売キャンペーンを打ち出す背景には、年間販売目標への焦りがある。中国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、2026年1~8月の自動車小売販売台数は1179万9000台で、前年同期比20%減少した。市場全体の低迷が続くなか、多くの自動車メーカーでは、8月までの年間販売目標の達成率が40~60%程度にとどまっている。

9月は第3四半期の最終月であると同時に、年末商戦を前に販売台数を一気に伸ばせる重要な時期だ。各社にとっては、9月に注文を積み上げ、年間目標との差を少しでも縮めたいところだ。

一方で、値下げ競争は収益を圧迫する。2026年上半期の中国自動車製造業の売上高利益率は3.8%にとどまった。販売台数を増やす必要がある一方、値引きを拡大すれば利益率はさらに低下するという厳しい状況にある。

そのため今回のキャンペーンでは、車両価格そのものを恒常的に引き下げるのではなく、金利ゼロローンや保険補助、買い替え支援、期間限定価格などを組み合わせ、購入時の実質的な負担を軽減する手法が目立っている。

「販売台数か利益か」迫られる難しい選択――中国の自動車市場では、EVを中心にメーカー間の競争が激しさを増している。価格そのものだけでなく、ローン金利、保険、保証、買い替え補助まで含めた「総合的な値引き競争」へと発展している。

今回の9月キャンペーンは、その象徴ともいえる。メーカーにとって値引きは販売台数を確保する有力な手段だが、過度な値下げは利益を削り、ブランド価値にも影響を及ぼしかねない。

「販売台数を確保するのか、それとも利益を守るのか」。中国の自動車メーカーは今、難しい選択を迫られている。9月の商戦で各社がどこまで価格攻勢を強め、消費者の購買意欲を引き出せるのか。中国自動車市場の今後を占ううえでも、今回の値下げ競争は大きな意味を持ちそうだ。

(中国経済新聞)