中国・上海市のライブコマース市場が急速な成長を続けている。上海市商務委員会の関係者は8月26日、「ライブ経済のエコシステム協同を探る―上海市ライブ経済集積区・楊浦区を訪ねて」と題したイベントで、2025年の上海市のライブ小売額が約5733億6000万元(約13兆5000億円)に達し、前年比16.1%増となったことを明らかにした。市場規模は4年連続で中国の都市別首位となった。
上海市は2024年、「上海市ライブ経済の高品質発展を推進する3カ年行動計画(2024~2026年)」を実施。これまでに長寧区、楊浦区、松江区、虹橋国際中央商務区の4カ所で、それぞれの産業特色を生かしたライブ経済集積区の整備を支援してきた。また、東方購物(Oriental Shopping)や容么么、国際ショート動画センター、5808など20カ所を上海市ライブコマース基地として認定している。
ライブ経済の主要な拠点の一つである楊浦区では、ライブ配信の拠点整備を加速させるとともに、ライブ経済とデジタル産業、コンテンツクリエーティブ、トレンド消費を融合させ、地域独自のエコシステム構築を進めている。

2025年の同区におけるライブ経済の総規模は780億元(約1兆8400億円)に達した。新たに140社のライブ関連企業を誘致し、区内のライブ配信拠点は100カ所を超えた。年間のライブ配信回数も1万回を突破し、多くの優良コンテンツクリエーターが集まっている。現在では、事業の立ち上げから販売への転換、さらには海外展開までをカバーする、要素のそろった「リアルとデジタルの融合型」エコシステムが形成されつつある。
楊浦区にある中船科技園ライブ配信インキュベーション基地は、旧船舶大楼を改修して整備された施設で、運営面積は1万5000平方メートル。共有スタジオや専門ライブ配信室などを備え、入居企業の賃貸コストは市場価格の約3分の1に抑えられている。
基地の責任者によると、現在はライブ配信関連企業40社余りと川上・川下の関連企業25社が集積し、400人以上の新興分野の従業者を受け入れている。35歳未満の若者が過半数を占めており、「初期の事業育成―中期の販売転換―後期の海外展開」までをつなぐ産業チェーンの構築が進んでいる。
上海メディアグループ(SMG)と東方明珠傘下の動画ショッピングプラットフォーム「東方購物」は、近年、ライブ経済を成長の突破口と位置付け、従来型のテレビショッピングから全域型のライブコマースへと事業モデルを転換している。
同社は2024年、楊浦区に約2000平方メートルのライブ配信基地を開設し、「1+4」のライブ配信マトリクスを構築した。楊浦区とSMGが締結したライブ経済の拠点形成に向けた戦略協力協定を生かし、「白玉蘭ライブ祭典」などの大型イベントも展開している。
上海の大型消費促進イベント「五五購物節」では、白玉蘭ライブスタジオの大小のスクリーンを合わせた配信時間が80時間を超え、累計で1000万人以上にリーチした。総売上高も大きく伸び、「一江一河」をテーマとする上海の観光ルートでは購入転換率が18%に達したほか、上海造幣廠との共同開発による貴金属商品は売上高500万元(約1億1800万円)を突破した。
五角場の中心商圏に位置する「白玉蘭都市共有ライブスタジオ」は、ライブ配信、没入型体験、ブランド展示を一体化した新たな施設だ。従来のライブスタジオが持つ物理的な空間の制約を打ち破り、楊浦区が進める「デジタルと実体経済の融合」の一例となっている。
これまでに「抖音AI科技潮品新享季」や「小紅書REDLAND冒険島」などの連動ライブ配信や、新商品・新サービスの発表イベントが同施設で行われている。
ライブ配信を単なるオンライン販売の手段としてではなく、産業、コンテンツ、消費、観光などを結び付ける新たな経済基盤として育成する上海。市場規模の拡大に加え、関連企業や人材、配信拠点の集積も進んでおり、ライブ経済を軸とした新たな都市型ビジネスエコシステムの形成が加速している。
※日本円換算は、2026年8月26日前後の為替水準「1元=約23.6円」を基準とした概算。
(中国経済新聞)
