中国最大手の集成灶(一体型キッチン機器)メーカー「浙江美大(Zhejiang Meida)」で、85歳の創業者・夏志生氏とその家族が経営から完全撤退する動きが起きた。7月16日、同社は控股权の変更を発表。夏志生氏と息子の夏鼎氏が保有する合計29.99%の株式を、深圳星蓝图産業投資合伙企業に12.9億元(約258億円)で譲渡した。これにより、夏氏家族は実質的な支配権を失い、越境EC資本の張海政氏チームが新たに経営を引き継ぐことになった。
取引完了後、深圳星藍図が新控股株主となり、実質支配人は越境EC企業「星商創新」の創業者である張海政氏に交代する。夏氏家族の持株比率は52.41%から22.42%に低下し、第二株主に退くことになった。発表翌日の株価は一時ストップ高となったが、数日後の7月21日には一時ストップ安を記録するなど、市場の反応は分かれた。

注目すべきは、深圳星藍図が2026年7月7日(契約締結のわずか10日前)に設立されたばかりの新設会社である点だ。張海政氏は株式を60ヶ月間譲渡せず、36ヶ月間質押しないこと、また36ヶ月以内に資産を注入しないことを約束している。取引後、張氏側は越境ECの販路を活用して浙江美大の製品ラインナップを拡充し、市場開拓やマーケティング支援を行う方針だ。
浙江美大は集成灶業界の開拓者であり、リーディングブランドである。2003年に世界初の集成灶を開発し、下排油煙方式の時代を切り開き、業界全体の成長を牽引してきた。2012年に深セン証券取引所に上場し、業界初のA股上場(一部上場)企業となった。
これまで同社は典型的な家族企業だった。創業者夏志生氏、息子夏鼎氏、娘夏蘭氏が一致行動人として合計52.41%の株式を保有し、実質支配権を握っていた。夏志生氏本人は21.20%、夏鼎氏20.99%、夏蘭氏10.22%を直接保有していた。
夏志生氏は現在85歳。息子夏鼎氏はモスクワ国立大学経済学博士、娘夏蘭氏は修士号を持ち、申銀万国証券での勤務経験もある高学歴の海外留学者だった。2017年、76歳の夏志生氏は健康上の理由で董事長を辞任し、息子夏鼎氏に経営を譲った。当時は円滑な世代交代が期待されたが、現実は違った。
夏鼎氏が経営を担った約2年半の間、会社は「佛系」(のんびりとした)経営スタイルと評され、業界が積極的に拡大を進める中で研究開発投資が低水準に留まり、販売網の構築も遅れた。その結果、火星人や億田智能などの後発企業にマーケティングと販路で追い抜かれてしまった。2019年末、夏鼎氏は「個人原因」を理由に董事を退任し、香港で投資業に転身した。
息子が去った後、娘の夏蘭氏が董事長兼総経理に就任したが、資本市場の経験は豊富だったものの、工場運営や販売店管理に不慣れで、わずか4ヶ月で総経理職を辞任した。やむなく79歳だったの夏志生氏が再び現場に復帰し、総経理を兼任して「火消し」に当たった。2023年には長年の部下である王培飛氏に董事長を譲り、自身は名誉董事長として後方に退いた。
しかし、職業経理人体制も業績低迷を食い止めることはできなかった。2026年6月の董事改選では、9人の董事のうち6人が外部出身者となり、夏鼎・夏蘭兄妹は董事を辞任。夏志生氏も名誉董事長という肩書きのみを残し、夏氏家族は実質的に経営から完全撤退した。
浙江美大の近年業績は厳しい。集成灶市場全体の需要減速の影響を受け、売上高は2021年の21.64億元(約433億円)から2025年には4.54億元(約91億円)まで急減(前年比48.24%減)した。親会社株主に帰属する純利益も1154.23万元(約2.3億円)と、前年比89.55%の大幅減益となった。
創業者が85歳という高齢で、子女が後継ぎを拒否した結果、家族経営の終焉を迎えた浙江美大。今後、跨境EC資本の新経営陣がどこまで業績を回復させられるか、市場の注目が集まっている。長年業界をリードしてきた老舗企業の新たな一歩に、中国製造業の世代交代の難しさが浮き彫りになった形だ。
(中国経済新聞)
