中国経済はどのような状態なのか

2026/06/25 08:30

「中国経済はどのような状態なのか」とよく尋ねられる。

 我は先週、上海市と江蘇省へ行き、いくつかの工業団地や工場を視察した。企業側の状況を言うと、不動産に関連した企業はおしなべて「低迷状態」に陥っており、建材や内装などのハウスメーカー、家具、家電といった業種が不振にあえいでいる。

 また、飲食業も不振のさなかにある。今後の見通しが極めて不透明になっている上、所得の減少で財布のひもを引き締める傾向にあり、深刻な消費のレベルダウンや不振に陥っている。経済水準が高く外国企業も多い無錫で、2軒のレストランに足を運んだが、客はほとんどいなかった。また上海では、有名な繁華街である淮海路で友人と待ち合わせて高級レストランに行ったところ、コロナ禍前は800元(約1・9万円)だったセットメニューの客単価が今は300元(約7110円)に落ちていた。店員の数も明らかに減っており、食材も以前ほど手の込んだものではなかった。それと客の数も、以前ほどは多くなかった。

 高級飲食店はさらに経営が苦しくなっている。中国政府が公務の接待や公務員の食事会について、「禁酒令」などといった形で厳しく制限をしている上、不動産市場の極度な不振もあり、ビジネスの接待が大幅に減り、上海の高級レストランは値段を下げ、あるいは店を閉じてしまった。

 それと、実店舗の小売り業も不振にあえいでいる。上海も含めてあちこちで「シャッター通り」が見られた。上海のあるショッピングセンターへ行ったところ、三分の一の店が閉店していた。スーパーマーケットも同様であり、前は賑やかだった所へ足を運んでみたら、店内の客の数は10人もいなかった。みんな通販サイトで野菜や果物、日用品を買っているのだ。値段もスーパーより安く、配達も無料である。夜中23時に小腹を満たそうと果物を注文すれば、30分以内に送り届けてくれる。

 中国国家統計局の最新データによると、2026年1~5月のオンラインでの小売り額は5・0%増加だった。しかしショッピングセンターやデパートの売上高は1・8%減、直営販売店では7・6%減だった。浙江省のある市では、1~5月の売上高がスーパーは9・2%減、ショッピングセンターは19・4%減少となっている。

 従来型の消費や一部の重工業、化学メーカーは存続すら危うくなっている中、人工知能(AI)やそれに関連するデジタル経済、新エネルギー車(バッテリーや充電など関連業種も)、飛行機の製造や鉄道、船舶など重工業品の製造、さらに航空宇宙や半導体、集積回路、バイオメディカルやヘルスケア産業は相変わらず好調を維持している。特に、政策的な支援(「第15次五か年計画」など)や技術革新が新たな経済成長の主軸を担っている。

 また、人型ロボットが新エネ車に次ぐ新たな成長株の産業になっている。人型ロボットを完成させられる会社は現在140社以上あり、品数も330種類以上で、中国はすでにこの分野で世界をリードしている上、これに伴ってAIや精密機械の開発や製造も進んでいる。

 ここ数年間好調を維持してきた新エネ車は今、曲がり角を迎えている。販売台数は自動車全体の中で60%以上に達しているが、今年1~5月は新エネ型乗用車の国内の販売数が19・7%減だった。蔚来自動車の李斌社長は、6月13日に行われた自動車産業フォーラムで、「2026年は中国自動車産業にとって最も厳しく、最も競争が激しい年になるだろう」と述べている。

 こうした中、中国では各社とも「海外展開」をスローガンに掲げている。いくつかの工業団地を視察したが、仕事のない工場もあれば、連日残業対応している工場もあった。残業に追われているのはいずれも輸出が好調な会社だった。ステンレスの研究所向けの設備を手掛けているある工場では、6人のセールススタッフが世界各地の展示会で製品を売り込んでいるという。販売先は南米やヨーロッパ、ロシアであり、従業員は連日の時間外労働も及ばない状態であった。

 中国は、GDP成長率4・5~5・0%を維持できるか。私はおそらく可能だと思っている。多くの民間企業や国営企業の一部は確かに伸び悩んでいるが、中国政府は公共投資へのてこ入れ策を緩めてはいない。三峡ダムで新たな水運の建設工事が始まり、総工費は770億元(約1・8兆円)という。鉄道、船舶、航空宇宙など重工業関連は、1~5月の設備投資額が23・6%増加している。つまり、経済の土台はやはりしっかりしており、問題なのは暮らしに直接関わる分野が軒並み不調ということである。

 よって中国経済は今、「政府は上向きだと見ているが、民間は坂を下る一方と感じている」というおかしな現象が生じている。政府と民間で受け止め方が違うのだ。

(中国経済新聞)

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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立、代表取締役社長に就任。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者クラブ会員。