米半導体大手AMDの最高経営責任者(CEO)であるリサ・スー氏がこのほど中国を訪問し、AI(人工知能)の急速な普及について強気の見通しを示した。数日前には、ジェンスン・フアンCEOがドナルド・トランプ大統領の訪中に同行しており、米半導体業界トップによる相次ぐ中国訪問として注目を集めている。
現地メディアによると、リサ・スー氏は5月19日、上海で開催された「AMD AI開発者デー」に登壇し、約10分間にわたり講演を行った。
講演の中でスー氏は、中華圏市場への取り組みについて、「AMDは北京、上海、深圳、台北に研究開発拠点を持ち、4000人を超えるエンジニアが在籍している」と説明した。また、AMDのEPYCプロセッサーは、中国主要クラウドサービスの700以上のクラウドインスタンスで採用されているほか、100を超えるソフトウェア企業、スタートアップ、大学と連携しているという。

AI市場の将来についてスー氏は、「2020年時点で世界のAI利用者は約100万人だったが、2025年には10億人を超え、2030年には50億人に達する見通しだ」と指摘。「今後5年間で、50億人が毎日AIを利用する時代になる」との見方を示した。
イベントでは、李開復氏*との対談も行われ、「AIエージェントの新たなパラダイム」をテーマに議論が交わされた。
李氏は、AIのプログラミング能力が大きな転換点を迎えていると指摘。「1年前のAIはコード作成を補助する段階だったが、現在ではシステム全体を一括して構築できるレベルに達している」と説明した。AIエージェントの行動は最終的にコードとして実行されるため、AIのコーディング能力向上が、自律型AI実現への鍵になるとの認識を示した。
さらに李氏は、「単一のAIエージェントには限界がある」と指摘。現在は、計画、評価、研究、実行など役割の異なる複数のAIエージェントが相互に連携・議論しながら処理を進める「マルチエージェント型」の仕組みが注目されているという。
スー氏によると、AMD社内でもAIエージェントを活用し、製品設計や検証プロセスの効率化を進めている。「適切なツールと十分な計算資源があれば、以前はチーム全体で担っていた作業を、1人でこなせるようになっている」と語った。
一方で、AIエージェントの普及には膨大な計算能力が必要だと強調。単なる単体性能ではなく、「CPU+GPU」を含む統合型の計算基盤が重要になるとの見方を示した。
スー氏は、「AIは現在、大きな転換点にある」とも指摘。AI推論やAIエージェント需要の拡大に伴い、CPUの役割が再定義されつつあると述べた。2022~2025年ごろはCPUとGPUの構成比率が1対4程度だったが、現在は1対1に近づきつつあるという。
また、AIの企業導入は実証段階から本格運用へ移行しており、「AIはあらゆるデバイスに搭載され、社会の至る所で活用されるようになる」との見通しを示した。
さらに、スー氏はオープンソースAIコミュニティーの活況にも言及。「現在、最も刺激を受けているのは、世界規模でオープンソースAIの技術革新が進んでいることだ」と語った。
これに対し李氏は、「オープンソース化の流れは止められない」と指摘。中国のAI企業は、限られた計算資源の中で効率性やアルゴリズム最適化を重視してきたため、技術革新力が高まっているとの見方を示した。
両氏は、AI産業はまだ発展初期段階にあり、本格的な成長はこれからだとの認識で一致。李氏は将来的に、「複数のAIエージェントが部門横断的に連携する『自律型企業』が誕生する」と予測した。
注:李開復氏は米国のアップル、マイクロソフト、グーグルなどの名門企業で要職を歴任し、長年にわたり人工知能(AI)研究およびテクノロジー産業を牽引してきた人物。
(中国経済新聞)
