AI人材争奪が過熱 春の採用市場で需要急増、月給は平均120万円超に

2026/04/14 11:30

 春の採用シーズンは、年間で最も人材の流動と産業需要が集中する時期だ。2026年の春季採用では、「人工知能(AI)」「アルゴリズム」「大規模モデル」といったキーワードが市場を席巻し、関連職種の求人が爆発的に増加した。平均月給は6万元(約120万円)を突破し、いわゆる“高収入職”として注目を集めている。

 ByteDance、Tencent、Alibaba Group、Baiduといった大手IT企業は、いずれもAI関連の採用規模を拡大し、大規模モデル開発、生成系AI、AIセキュリティなどの分野に注力している。

 一方で、この「AIブーム」の裏側では、求職者にとって高いハードルも浮き彫りになっている。2026年の大学卒業予定者は1270万人に達し、社会人求職者も加わる中、多くの人材がAI分野を目指すが、高度なスキル要件により参入は容易ではない。

 人材サービス関係者によると、近年はあらゆる業界でAI人材の需要が急増しており、特にデザイン分野では、AIツールを使いこなす能力が“標準スキル”となりつつある。企業の中には、生成系AIを活用したビジュアルデザイナーを直接採用するケースも増えており、動画制作やAI素材の処理能力など、実務レベルのスキルが求められている。

 こうした変化はデータにも表れている。ビジネスSNSの脉脉(マイマイ)が発表した調査によれば、2026年1〜2月のAI関連求人は前年同期比で約12倍に増加。新経済分野全体の求人増加率(12.77%)を大きく上回った。AI求人の比率も、前年同期の2.29%から26.23%へと急上昇し、4件に1件がAI関連となっている。

 AI人材の需要はインターネット業界にとどまらず、家電、育児、介護などの伝統産業にも広がっている。例えば、家庭用ロボットにAI機能を組み込むエンジニアなど、「AI+(AIプラス)」型の職種が増加しており、新卒者にとっての新たな就職機会となっている。

 給与水準の高さも大きな特徴だ。2026年春季採用におけるAI職種の平均月給は6万738元(約121万円)で、新経済分野平均の4万8189元(約96万円)を約26%上回った。

 職種別では、AI科学者・責任者の平均月給は13万7153元(約270万円)、年収は120万〜200万元(約2400万〜4000万円)以上に達する。大規模モデルのアルゴリズムエンジニアは月給8万元超(約160万円)、年収は最大220万元(約4400万円)。高性能計算エンジニアも月給7.5万元(約150万円)、年収は90万〜300万元(約1800万〜6000万円)と高水準だ。

 入門レベルでも、AIトレーナーやプロンプトエンジニアの月給は2.5万〜4万元(約50万〜80万円)、年収は24万〜48万元(約480万〜960万円)と、一般的なホワイトカラー職を大きく上回る。

 転職市場でもAI人材の価値は高く、主要ポジションでは転職時の給与上昇率が30〜50%、身体性AIや大規模モデル設計といった分野では50%を超えるケースも見られる。

 しかし、高需要・高待遇の一方で、労働市場では需給のミスマッチが深刻化している。AI職種の人材需給比は0.97と、求人が求職者を上回る「人材不足」の状態にあるが、これはあくまで条件を満たす高度人材に限った話だ。

 実際には、実務経験やプロジェクト経験を欠く求職者が多く、企業の要求水準を満たせないケースが目立つ。特にアルゴリズム関連職では、「実戦経験不足」が採用に至らない主因となっている。

 さらに企業側では「脱初級化」の傾向が鮮明だ。2026年初頭に新設されたAI求人のうち、3年以上の実務経験を求めるものが7割を超え、経験1年未満向けの求人は約2割減少した。企業は即戦力を重視しており、新卒や若手人材の参入障壁は一段と高まっている。

 その結果、就職難と人材不足が同時に存在する“二重構造”が生まれている。多くの求職者がAI分野への参入を目指す一方で、企業は高待遇を提示しても適切な人材を確保できない状況が続いている。

 AIの急速な進化は、雇用機会を生むと同時に、既存職種の在り方にも変化を迫っている。効率化の進展により業務量は増える一方、人員増加が不要となるケースもあり、現場では「AIに置き換えられるのではないか」という不安も広がっている。

 AI時代においては、企業と個人の双方が「実用化できる能力」を備えることが、選ばれるための決定的な条件となりつつある。

(中国経済新聞)