中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei Technologies)は3月31日、公式サイトで2025年の通期決算を公表した。売上高は8809億元(約18兆5,000億円)と前年比2.2%増、純利益は680億元(約1兆4,300億円)で同8.8%増となり、全体としては市場予想に沿った結果となった。
売上規模は過去最高だった2020年(8914億元)に次ぐ歴代2位となる一方、2024年の20%超の高成長と比べると、2025年は明らかに伸びが鈍化した。背景には、事業の選択と集中を進め、AI時代への対応に経営資源を振り向ける戦略がある。
輪番董事長の孟晩舟氏は、「人工知能は人類史上最後の大きな技術変革となる可能性があり、今後10年以上にわたる最大の成長機会だ」と強調。そのうえで、不確実性の高い環境下では成長スピードよりも戦略の精度が重要だとし、「ハードウェア中心の収益モデルを堅持し、事業領域の拡張を抑制しながら中核競争力を強化する」と述べた。

事業別では、通信ネットワーク構築などを担うICTインフラ事業が依然として最大の柱となっている。2025年の売上高は3750億元(約7兆9,000億円)で、前年比2.6%増だった。5G投資のピークアウトにより通信事業者の設備投資は縮小傾向にあるが、同事業は安定した成長を維持した。
端末事業は3444億元(約7兆2,000億円)で同1.6%増と、ICTに迫る規模となった。スマートフォン市場の低迷や米国規制の影響を受けつつも、サプライチェーンの改善と生産能力の回復により、エントリー機からハイエンド機まで全価格帯で製品展開を再構築した。
独自OS「HarmonyOS(鴻蒙)」のエコシステムも進展した。2025年末時点で、HarmonyOS 5および6を搭載した端末は3600万台に達し、開発者数は1000万人超、アプリ・サービス数は35万件を突破した。
孟氏は「鴻蒙エコシステムは生死の分岐点を乗り越えた」と述べ、開発者主導の成長が軌道に乗ったとの認識を示した。
新興分野では、スマートカー関連が大きく伸長した。スマートカーソリューション事業は450億元(約9,400億円)で前年比72.1%増と、全事業の中で最も高い成長率を記録。車両ブランド群を含む「鴻蒙智行」は年間58.9万台を納車し、同32%増となった。
デジタルエネルギー事業も773億元(約1兆6,200億円)で12.7%増と堅調だった。一方、クラウド事業は321億元(約6,700億円)で3.5%減と苦戦。AI分野での価格競争激化や、低収益案件の絞り込みが影響したとみられる。
ファーウェイは接続分野において、新たな成長機会の開拓を目的に「天水計画」「地水計画」「太平洋計画」という三つの戦略プロジェクトを推進している。
まず「天水計画」は、インテリジェント接続エコシステムの構築を主軸とし、5Gおよび5G-Aなどの無線分野において新たな「トラフィック入口」を創出することを狙うものである。通信インフラの高度化を通じて、データ需要の拡大を取り込む戦略といえる。
次に「地水計画」は、固定ネットワーク領域に焦点を当て、データセンター、スマートパーク(智慧園区)、デジタル家庭という三大中核シナリオの強化を進める。産業・都市・家庭を横断するネットワーク基盤の高度化により、安定的な需要の取り込みを図る。
さらに「太平洋計画」は、算力(コンピューティングパワー)を中核に据え、計算・ストレージ・ネットワークの各資源を統合。「算・網・存」の協調的な技術革新を通じて、計算およびストレージ分野の顧客に対する包括的な支援能力の強化を目指す。
計算産業の分野では、Huawei Technologiesは「クラスター+スーパー・ノード」を中核とするアーキテクチャにより、大規模な算力優位の構築を明確に打ち出している。
従来のように単一チップの性能向上に依存するのではなく、数千から数万規模のチップを高効率に相互接続し、論理的に統合されたスーパーコンピュータを構築する「システム工学的アプローチ」へと軸足を移している点が特徴である。これにより、個々の半導体性能の限界を超え、全体としての算力を飛躍的に引き上げることが可能となる。
加えて、マザーボードやモジュールの開放を進め、パートナー企業への技術提供を強化。企業向けの「エッジ小型算力」製品のラインアップ拡充を加速し、KunpengおよびAscendといった自社算力基盤の普及を図り、「あらゆる場所に算力を行き渡らせる」構想を推進している。
端末分野では、「AIのデバイス内実装(AI入端)」が新たな技術潮流として位置付けられている。華為は、独自OSであるHarmonyOSと、AIエージェント「小芸(シャオイー)」を中核に据え、AI機能の体系的な端末組み込みを進めている。
特に、鴻蒙OS上で動作する「インテリジェントエージェントフレームワーク」により、アプリケーション自体が高度なAI機能を内包する構造への転換が進行中である。すでに初期段階として、80種類以上の鴻蒙アプリ用AIエージェントが正式にリリースされており、端末側でのAI体験の高度化が加速している。
研究開発投資については、成長率の鈍化にもかかわらず、積極的な姿勢を維持している。2025年の研究開発費は1923億元(約4兆円)に達し、売上高の21.8%を占める過去最高水準を記録した。さらに、過去10年間の累計研究開発投資は1兆3820億元(約29兆円)を超えており、長期的な技術蓄積への強いコミットメントがうかがえる。
人材面でも投資は継続しており、2025年末時点の研究開発人員は約11万4000人と、全従業員の53.7%を占める。これは同社が依然として「技術主導型企業」であることを示す象徴的な数値である。
(中国経済新聞)
