中国各地でトマト(中国語で「西紅柿」)の価格が異例の高騰を続けている。2026年1月現在、年初には1~2元/斤(約22~44円/500グラム、1元=約22.78円換算)だった価格が、7~10元/斤(約159~228円)へと急上昇し、高級品種では13元/斤(約296円)を超える例も出ている。SNSでは「卵さえトマトに見合わない」(鶏蛋都配不上西紅柿)という意味のジョークが拡散し、大きな話題となっている。

農業農村部のデータによると、2025年12月の全国卸売平均価格は1キログラム当たり8.59元(約196円)に達し、前年同月比で76.4%上昇した。ピーク時には9.36元(約213円)を記録。1月に入っても8.4元前後(約191円)で高止まりしており、歴史的な高値圏にある。
トマトは中国の食卓に欠かせない野菜だ。炒め物、サラダ、スープ、火鍋(中国式鍋料理)の具材として日常的に使われ、特に冬場はビタミン補給源として人気が高い。しかし、この冬は「トマトショック」とも呼べる事態が生じている。なぜこれほどまでに価格が跳ね上がったのか。農業農村部の野菜担当チーフアナリストである安民氏は、「単一の要因ではなく、複数の要素が重なった結果だ」と分析する。
最大の要因は供給量の減少だ。2024年末から2025年前半にかけてトマト価格は低迷し、6月には1キログラム当たり3.59元(約82円)まで下落した。このため農家の収益が悪化し、秋作の作付面積が大幅に縮小。2025年秋以降の栽培面積が減ったことで、冬場の供給基盤が弱体化した。
これに追い打ちをかけたのが異常気象である。2025年秋、主要産地では降雨量が過剰となり、定植初期に豪雨が続いたことで苗が冠水し、根が傷むなどして収量と品質が低下した。10月中旬には強い寒波が中東部を襲い、気温が急落。生育が遅れ、市場への出荷時期も後ろ倒しとなった。さらに11月の寒波、12月の降雪が重なり、雲南省や四川省、湖南省など南方産野菜を北方へ供給するルートが大きな打撃を受けた。北京最大の青果市場「新発地市場」の劉通氏は、「ナス科野菜、とりわけトマトは産地のリレー供給が難しく、供給逼迫が続いている」と指摘する。

コスト上昇も価格を押し上げている。肥料や種子といった農業資材の値上がりに加え、寒波時の凍結防止対策(保温材の使用や特殊車両の手配)、長距離輸送費の増加が重なった。中国最大の野菜産地である山東省寿光では、産地の買い取り価格が1斤当たり4.2元(約96円)を超え、かつての水準のほぼ倍に達している。
一方、消費側の変化も無視できない。近年の健康志向の高まりを背景に、果肉が柔らかくジューシーなトマトや、樹上で自然に完熟させたもの、イチゴ風味の高糖度トマトなど、高級品種の人気が急上昇している。1斤10元(約228円)を超えても、「味が違う」「栄養価が高い」と支持する消費者は多く、需要が供給を上回る状況だ。深圳、杭州、北京といった大都市では、こうしたプレミアム品が特に高値で取引され、全体の価格水準を押し上げている。
中国の野菜市場はもともと天候や季節の影響を受けやすいが、今年のトマト高騰は「低価格期の反動」「異常気象」「コスト増」「消費の高度化」という複数のショックが重なった結果といえる。消費者にとっては家計への痛手となる一方、農家にとっては久々の好況だ。春節(旧正月)を前に、家庭の食卓でトマトが“高級食材”として扱われる光景は、当面続きそうだ。
(中国経済新聞)
