2025年12月18日、歌手・王力宏(ワン・リーホン)の成都公演で、人型ロボットがバックダンサーとして登場するという画期的な演出が行われ、大きな注目を集めている。ステージに登場したのは、中国のロボットメーカー・宇樹科技(ユニツリー)が開発した人型ロボット「G1」。6体のロボットが人間のダンサーとともにパフォーマンスを披露し、商業コンサートにおけるロボットによる集団演技としては世界初の試みとされている。

披露されたのは、王力宏の代表曲「火力全開」。銀色のスパンコール衣装に身を包んだ6体のG1は、腕を振る、脚を蹴り上げる、回転するといった動きを高い精度でこなし、人間のダンサーとほぼ完全に息の合った動きを見せた。クライマックスでは、複数のロボットが同時に前方宙返り(ウェブスター)を成功させ、会場は大きなどよめきに包まれた。
このパフォーマンス映像は海外のSNSでも急速に拡散し、再生回数は4,000万回を超えた。電気自動車大手テスラの最高経営責任者(CEO)で、シリコンバレーを代表する起業家として知られるイーロン・マスク氏も反応し、動画を引用して「素晴らしい(Impressive)」とコメントを投稿したことが話題となっている。

鳳凰網科技の報道によると、今回の演出を実現するため、技術チームと公演側は長期間にわたるリハーサルを重ねてきたという。楽曲のテンポに合わせた動作の調整から、舞台上での安全性の確認に至るまで、幾度も検証と改良を繰り返し、ロボットを「集団ダンス」という形で商業コンサートに本格的に組み込むことに成功した。
なお、今年9月には、エンジニアとして知られる稚晖君(ジーフイジュン)氏が率いる智元ロボティクスが、人型ロボット「霊犀(レイサイ)X2(頭部なし仕様)」による前方宙返りの成功を発表し、「世界初」をうたっていた。今回の王力宏コンサートでは、出回っているクローズアップ映像などから、実際に使用された機体が宇樹科技のG1であることが確認されている。

G1は2024年5月13日に発売された人型ロボットで、販売価格は9万9,000元から。身長は約132センチ、体重は約35キロと比較的小型ながら、軽く走って毎秒2メートルを超える速度で移動できる。関節数は23~43におよび、広い可動域を生かして多様でダイナミックな動作が可能だ。最大関節トルクは120ニュートンメートルに達し、立ち上がりや折りたたみ動作、棒を使った動き、さらにはその場での360度回転キックまでこなす高い運動性能を備えている。 人型ロボットがエンターテインメントの最前線に立ち、人間と同じ舞台で観客を魅了する時代が、いよいよ現実のものとなりつつある。今回の演出は、ロボット技術の進化を示すだけでなく、商業公演や文化産業における表現の可能性を大きく広げる象徴的な出来事と言えるだろう。
(中国経済新聞)
