2026年の中国中央テレビ春節聯歓晩会(春晩)合肥分会場で、低空経済を象徴する二つの飛行体が大規模に披露された。会場となったのは安徽省合肥市の合肥崗公园。夜空には2万2,580機のドローンが舞い上がり、16機の“空飛ぶタクシー”が編隊飛行を行った。
16機のEH216-Sが同時編隊飛行
上空で円陣を組んで飛行したのは、億航智能(イーハン)とその子会社が開発した電動垂直離着陸機(eVTOL)だ。使用されたのは同社の主力機種EH216-S16機で、国内における無人運航の有人eVTOLが同時に公開飛行した事例としては、現時点で最大規模となる。

EH216-Sは2人乗りの電動垂直離着陸機で、中国民用航空局(CAAC)から型式証明、生産許可証、標準耐空証明を取得している。
2025年3月には、同機を運航する合肥合翼航空有限公司が、全国初となる有人向け民間無人航空機の運航証明(OC)を取得。これを受け、合肥市内で小規模ながら定常的な商業試験運航が始まっている。
合肥市は中国における低空経済のモデル都市の一つとされ、試験運用が可能な空中交通運営センターを2カ所整備済みだ。今回の演出は、そうした制度整備と技術実証の積み重ねを背景に実現した。
もっとも、有人クラスの無人航空機が公開空間で編隊飛行を行うには、高度な運航管理能力と安全性を確保するための冗長設計が不可欠だ。イーハンの王釗最高執行責任者(COO)は、「当社の指揮・運航管理技術の成熟度と、さまざまな場面に対応できる応用力を示すものだ」と述べている。
2万2,580機のドローン、世界記録を更新
当夜、より大きな注目を集めたのは、2万2,580機によるGD4.0ドローンの大規模編隊飛行だ。夜空には「天空の城」や、徽派建築を象徴する馬頭壁などの立体的な図柄が描き出された。この飛行は「1台のコンピューターが同時に制御した最多ドローン数」としてギネス世界記録™に認定された。

GD4.0は編隊飛行専用の新世代機で、1機あたり約45分の飛行が可能。センチメートル級の高精度測位と大規模な協調制御に対応し、低温の夜間環境でも安定した運用ができるという。
大規模編隊飛行の技術的課題は、高密度な運航管理システム、電波干渉への耐性、多数機の同期制御の安定性にある。イーハンの胡華智創業者兼董事長(会長)兼最高経営責任者(CEO)は、「2万機超は当社の技術的上限ではない。将来はさらに大規模な群飛行も容易に実現できる」と語った。
低空経済は“構想段階”から“実用段階”へ
近年、ドローンの編隊飛行は観光演出や大型イベントにおける重要な演出技術となっている。有人飛行と比べ、事業モデルは比較的明確で、大型イベント受注、企業プロモーション、都市型ナイトツーリズムなどが主な収益源だ。
一方、eVTOLを含む低空経済全体はなお発展途上にある。中国では「第15次五カ年計画」に向けた新興産業クラスターの一つに位置付けられ、空域改革の試行、インフラ整備、実証事業の拡大が進められているが、本格的な大規模商業運航はこれからの段階だ。
業界関係者は、全国的な視聴者を持つ春晩の舞台が、無人航空機への社会的認知を大きく高める契機になったと指摘する。ただし、有人eVTOLが実演から日常的な商業運航へ移行するには、安全性の検証、コスト低減、航路設計などの課題をクリアし、持続可能な事業モデルを確立する必要がある。
華やかな舞台演出の背後で、低空飛行体は着実に実用化へと歩みを進めている。今回の春晩での大規模公開は、eVTOL分野を一気に可視化し、今後の商業化を巡る議論を新たな段階へ押し上げたと言えるだろう。
(中国経済新聞)
