中国の全国工商連(全工商連)が本日、遼寧省沈陽市で「2025年中国民間企業500強」リストを発表した。JD.com(京東集団)が売上高1兆1588億元(約23兆円)で4年連続首位に輝き、中国最大の民間企業となった。同社はリスト唯一の「兆元クラブ」(売上高1兆元超)入り企業で、阿里巴巴(アリババ)や華為(ファーウェイ)などの老舗を大きく引き離した。一方、売上高の高さとは裏腹に純利益は400億元超にとどまり、同業他社に比べて低調な点が注目を集めている。
リストによると、上位500社の総売上高は前年比で43兆500億元(約890億円)を超え、総資産は51兆元を突破。民間経済の活力が顕在化している中、JD.comの勢いは特に際立つ。今年上半期の売上高は6578億元で前年比20%増と急成長。一季度は15.8%増、二季度は22.4%増と過去3年で最高を更新し、インターネット企業売上高ランキングやネットワーク小売百強リストでも首位を維持した。
しかし、売上高に比べて純利益が低い理由は、JD.comの「重資産」モデルにある。同社は倉庫・物流インフラへの巨額投資を継続しており、従業員数も膨張。2025年6月末時点で約90万人を超え、昨年1年間の人件費・福利厚生費だけで1360億元を支出した。上半期だけで20万人以上の新入社員を雇用し、そのうち15万人がフルタイムの配達員。1人あたり月額約2000元(約4万円)の社会保険料負担が、従業員増加とともに重荷となっている。

伝統的な電子商取引(EC)市場の競争激化を受け、JD.comは「第一主義」を掲げ、多角化を加速させている。劉強東CEOは「常に第一を目指す」との精神を強調。オンラインでは「新品」チャネルを強化し、「百千億元計画」で新製品を推進。オフラインでは24店舗のJD MALLを開設し、河北省涿州市のディスカウントスーパーは開業2日で10万人の来客を記録した。
本格的な野心は新分野にあり、外食デリバリー、酒類旅行、自動車、医療美容などのホット領域に進出。特に外食では「七鮮小厨」を展開し、3年以内に1万店舗開設を計画。10億元を投じて看板料理のパートナーを募集するなど、積極投資を進めている。しかし、第2四半期の新事業(外食含む)損失は前年同期の7億元から148億元に急増。業界からは「補助金による焼け石に水」との懸念の声が上がるが、CFOの単甦氏は「成長のボトルネック突破のため」と説明。劉CEOも「外食損失は顧客獲得の有効な手段」と正当化している。
こうした拡張の背景には、伝統EC市場の圧力がある。Pinduoduo(拼多多)やDouyin(抖音)がシェアを奪い、即時小売戦線ではアリババのTaobao閃購と美団(Meituan)と「三国志」状態に。美団の第2四半期純利益は89%減と苦戦を強いられている上、同社はJD.comの強みである3C家電分野に反撃を開始。Ele.me(餓了么)も脅威だ。一部では「本業に集中せよ」との提言があるが、管理層は「継続的なイノベーションが生存の鍵」と主張する。
JD.comは海外展開も強化。中東・欧州でレイアウトを進め、ドイツの小売企業買収や香港の佳寶スーパー取得を実施。サウジアラビアでは自社宅配サービスを導入し、サプライチェーン能力のグローバル輸出を目指す。ただし、アリババや美団などの巨頭も海外市場を狙う中、定着は未知数だ。
一方で、JD.comの社会貢献も見逃せない。近100万人の雇用創出は、雇用問題解決に寄与。売上高で他を圧倒する一方、重いコスト負担と新分野の損失を抱える同社は、「複雑な巨人」のような存在だ。それでも、未来投資、雇用促進、グローバル化への取り組みから、強い生命力を感じさせる。
リストの2位はアリババ(売上高9817億元)、3位は恒力集団。テスラや比亚迪(BYD)などの新興勢力も台頭し、中国民間経済のダイナミズムが浮き彫りとなった。JD.comの今後が、中国EC業界の行方を占う鍵となる。
(中国経済新聞)