9月下旬、フランスのランニングシューズブランドHOKAが、中国俳優の井柏然(ジー・バイラン)をブランドアンバサダーに任命することを公式発表した。アンバサダーキャンペーンの映像では、井柏然がHOKAの看板モデル「KAHA 3 GTX」ハイキングシューズとダイナミックハードシェルジャケットを着用し、火山や岩場などの複雑な地形を駆け抜ける様子が描かれ、「街野ともに自在」というブランドの主張を体現している。
2017年に中国市場に進出して以来、HOKAはますます多くのファンを獲得している。例えば9月のHOKAフライングフェスティバルは、浙江省寧波市奉化区で開催され、2000人以上のランナーが集結し、参加者数は過去最高を更新した。推定では、HOKAの中国での年間売上はすでに45億元(約900億円)を超えており、主なランニングシューズの価格帯は1000元(約2万円)以上だ。「私たちの国際戦略において、中国はブランドの長期的な成功の鍵となる。中国は世界最大のランニングおよびアウトドア市場になる可能性を秘めている」と、HOKAの高管チームは語る。彼らは、中国で成功すれば、アジア全体、さらにはグローバル市場での成功も確実だと確信している。

ランニングサークルやアウトドアサークルでは、HOKAに熱心なファンが多い。「以前はハイキングや登山で履いていたが、今は通勤でもHOKAを履くようになった」と、ある消費者が語る。最初は厚底の外見に抵抗があったが、快適なフィット感が彼女を虜にしたという。
ある参加ランナーは記者にこう紹介した。毎年フェスティバル会場では製品展示があり、一定の割引が提供される。「正規価格の7割をデポジットとして支払い、シューズを借り、完走後に返却すれば、割引価格で購入できる」という仕組みだ。例えば新作「MAFATE 5」は定価1500元だが、割引適用でコストパフォーマンスが格段に向上する。
HOKAはトレイルランニングからスタートしたブランドで、正式名称は「HOKA ONE ONE」。マオリ語で「飛躍せよ、地球よ」という意味を持ち、ブランドロゴは「飛ぶ鳥」を象徴する。2009年、フランスで誕生した同ブランドの創業者たちは、フランスのトレイルランナーでありUTMB(世界最高峰のトレイルランニングイベント)の3位入賞者であるニコ・メルモードと、トレイル愛好家のジャン=リュック・ディアールだ。両者は以前、アマフィン・スポーツグループでサロモンのマーケティングディレクターとCEOを務めていた。

創業当初、HOKAはプロマラソンランナーやロードレース、トレイルレース、トライアスロン選手をターゲットにしていた。中国進出時も、プロ向けトレイルランニングシューズとして位置づけられた。マウンテンバイクのホイール技術を参考に、HOKAはクッション中底、ロールバランス技術、埋め込み式インソールなどのコア技術を開発。長時間の運動や複雑な地形での走行に適している。
クッション性と保護性を高めるため、HOKAのシューズは超厚底ミッドソールと頑丈なアッパーを採用。外見はソールが厚く、後跟部は最大48mmに達するが、実際の単靴重量は従来のクッションシューズより30%以上軽い。
プロ領域で基盤を築くため、HOKAはマラソンやマウンテンランなどのプロイベントをスポンサーし、UTMB®ワールドシリーズレースの初のグローバルパートナーブランドとなった。高規格イベントを通じて、プロアスリートやトレイル愛好者の間で知名度を急速に高めた。
地形の難易度やペースに応じて、HOKAのシューズ価格は主に1000〜2000元(約2万円〜4万円)。プロの裏付け、中高価格帯、厚底デザインの高識別性により、HOKAは中産階級の「アイデンティティを示すおしゃれな選択肢」として際立っている。
現在、HOKAは上海、北京、深圳、広州、杭州などの都市に37店舗の直営店と約200店舗の提携店を持ち、20都市以上をカバーしている。今年5月には、グローバル初のブランドエクスペリエンスセンターを上海の新天地にオープン。面積1600平方メートルの3階建て施設で、先端の運動機能テスト機器を揃え、HOKAの全製品ラインナップ、中国限定モデル、コラボ商品を展示している。

過去数年、HOKAの業績は急成長を続け、最新会計年度の売上高は22.33億ドル(約158億元)に達した。公式によると、中国市場の単季売上比率は約3割を占める。これを基に推算すると、中国での年間売上は45億元(約930億円)を超える。
HOKA中国責任者の呉暁(ウー・シャオ)はインタビューでこう述べた。「HOKAが目指すのは、単に市場シェアNo.1になることではなく、ランナーたちの心に最も愛されるブランドになることだ」。
HOKAの物語は、プロフェッショナルなルーツから生まれた革新が、日常の快適さと融合し、中国のダイナミックな市場で花開く様子を象徴している。未来の「飛躍」は、まだ始まったばかりだ。
(中国経済新聞)