7月12日、中国の週末が再び「外売戦争」(デリバリー戦争)の熱狂に包まれた。美団(Meituan)や淘宝閃購(Taobao Flash Sale)などの主要プラットフォームが、引き続き大規模な割引クーポンを配布し、ミルクティーやコーヒーを「0円」で購入できるキャンペーンが話題を呼んでいる。ユーザーからは「早起きは三文の得!朝イチで瑞幸咖啡(Luckin Coffee)を無料でゲットした!」と喜びの声がSNSで広がっている。

7月12日朝、上海の消費者がある女性が美団アプリを開くと、「0円外売クーポン到着!」の通知が表示された。クリックすると、0円でドリンクが購入できるクーポンや、瑞幸咖啡、古茗(Guming)のレモネード、朝食用のクーポンなど、計5枚の割引クーポンが即座にアカウントに追加された。あるユーザーは、わずか0.01元(約0.2円)で茶百道(ChaPanda)のミディアムサイズのジャスミンミルクティーを注文できたとSNSで報告。こうした「ほぼ無料」の注文が、週末の朝から多くの消費者を熱狂させている。
一方、「淘宝閃購」では、18.8元(約385円)以上で18.8元(約385円)割引、20元(約410円)以上で10元(約205円)割引など、さまざまな高額割引クーポンが配布された。記者が試しに注文してみたところ、通常19元(約390円)のミルクティーが、クーポン適用後わずか1.2元(約25円)で購入可能だった。このような破格のキャンペーンは、若者を中心に大きな反響を呼んでいる。
美団は7月11日夜、公式微博(Weibo)で「土曜日、楽しさは続く!」と投稿し、週末のキャンペーンを予告。淘宝閃購も12日朝、公式微博で「スーパーサタデー!188元(約3857円)のクーポンパックで、5食分をまるごとカバー」と発表し、さらなる購買意欲を刺激した。
前週の「デリバリー戦争」でも同様の盛り上がりが見られた。7月5日の美団内網データによると、同日22時54分時点で即時配達の注文数が1.2億件を突破し、うち飲食関連注文が1億件を超えた。一方、7月7日には淘宝閃購と餓了么(Ele.me)が共同発表を行い、淘宝閃購の1日注文数が8000万件を突破、非飲食カテゴリーの注文が1300万件、アクティブユーザー数が2億人に達したと明らかにした。これらの数字は、プラットフォーム間の激しい競争が消費者需要を大きく押し上げていることを示している。
中国のデリバリー市場は、コロナ禍以降、急速に成長を遂げてきた。特に若年層のライフスタイル変化に伴い、コーヒーやミルクティー、軽食の即時配達需要が急増。美団や淘宝閃購は、この需要を捉え、週末に集中的な割引キャンペーンを展開することで、ユーザーのアプリ利用頻度とブランドロイヤルティを高めている。
今回の「0円購入」キャンペーンは、単なる価格競争にとどまらない。プラットフォームは、クーポン配布を通じてユーザーデータを収集し、消費傾向を分析することで、将来のマーケティング戦略に活かしている。また、飲食店側もこうしたキャンペーンで注文が急増し、週末には「爆単」(注文殺到)の状況が頻発。ある上海の瑞幸咖啡店舗の店員は、「クーポン配布の日は朝から注文が止まらない。準備が大変だが、売上が大きく伸びる」と語った。

SNS上では、ユーザーが「0円でミルクティーをゲット!」「朝イチでアプリ開いて正解!」と興奮気味に投稿する一方、「クーポン争奪戦が激しすぎる」「人気店の注文はすぐ売り切れる」といった声も聞かれる。実際、キャンペーンの人気は高く、クーポンの配布直後にアプリが一時的に混雑するケースも報告されている。
専門家は、この「デリバリー戦争」が中国の消費市場に新たな活力をもたらしていると指摘する。上海の市場調査会社アナリストは、「プラットフォーム間の競争は、消費者にとって低価格で高品質なサービスを受けられるメリットがある。一方で、過度な割引は飲食店の利益率を圧迫するリスクもある」と分析。今後、プラットフォームは持続可能なビジネスモデルを模索する必要があるだろう。
7~9月は外売市場の繁忙期とされ、特に週末は消費者が外食やデリバリーを利用する機会が増える。美団や淘宝閃購は、こうした需要を見越し、今後も積極的なキャンペーンを展開する方針だ。一方で、消費者側も「クーポン経済」に慣れつつあり、戦略的なタイミングでアプリを利用する「賢い消費者」が増えている。
「デリバリー戦争」は、中国のデジタル経済と消費文化のダイナミズムを象徴している。プラットフォーム、飲食店、消費者が三位一体となって作り上げるこの熱狂は、2025年の夏をさらに盛り上げる。
(中国経済新聞)