中国夏休み映画、興行収入が530億円を突破

2025/07/8 18:30

中国映画興行サイト「猫眼専業版」によると、今年の夏休み枠(6月〜8月)の興行収入(前売り含む)が7月7日8時の時点で26億元(約530億円)を突破、観客数は6600万人を超えた。

興収を作品別に見ると、現時点で4億元(約81.5億円)に達したものはなく、上位3本は「醬園弄・懸案」、「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」(碟中諜8:最終清算)、「ジュラシック・ワールド/復活の大地」で、このうち「ジュラシック・ワールド」は6億元(約122.22億円)に到達すると予測されている。

「抓娃娃」(じゅあわわ)「黙殺」の2作が興収10億元に達した昨年と比べると約4億元(約81.5億円)の開きがあり、今年はやや不調気味である。

抓娃娃(じゅあわわ)

6月はまだ皮切り段階で、7月、8月にはさらに多くの話題作が登場する。果たしてサプライズが見えてくるか。

戦争・歴史・アニメ、盛りだくさんの国産映画

国産映画の中で真っ先に上映された「醬園弄・懸案」は、評価が割れて売上に響いているようだ。灯塔専業版のAI予測では興収が4億元に届かない見込みで、期待を下回りそうである。

7月は、国産の新作が続々と公開される。5日には、脚本・陳思誠氏、監督・来牧寛氏で、チャン・シャオフェイやメイ・ティンらが出演するミステリー映画「悪意」が公開された。

がんの少女と看護師の転落事件の真相を暴く作品で、ある未解決事件を出発点にジャーナリストの視点から社会の縮図を描いている。灯塔専業版は興収を2億元と予想している。

7月25日には、「長安のライチ」と「君ならできる!」(你行!你上!)の2本が公開予定で、チケット予約サイトでは「観たい」という人が多かった。ダーポンが脚本・監督・主演を務める「長安のライチ」は、馬伯庸の同名小説を原作とし、主人公・李善徳の逆境を這い上がる姿を通じて、1000年前の中国の「労働者」を現実に重ね合わせ、肉親や友人の愛情、恋愛など多層なテーマを描く。なお同名のドラマが6月初旬にテンセントビデオで配信されており、映画の売上に何らかの影響が出そうである。

原題が「英雄出少年」でジャン・ウェンが監督・脚本・主演を務めたコメディ映画の「君ならできる!」は、父と子が瀋陽からアメリカに渡り、ピアノを通じて自らを証明する冒険ストーリーであり、ピアニストのランランをモチーフにしたもののようである

今年は抗日戦争および反ファシズム戦争の勝利から80年ということもあり、「東極島」、「731」、「南京照相館」、「坪石先生」などの歴史や戦争を描いた作品も公開される。

8月8日公開予定の「東極島」は、管虎氏と費振翔氏が監督を務め、チュー・イーロン、ウー・レイ、ニー・ニーらが出演。捕虜となったイギリス兵を中国漁民が救出した実話を描いており、この事件に関するドキュメンタリーで去年制作された方励監督の「リスボン丸沈没」をドラマ化したものである。「731」は旧日本軍の731部隊による生体実験を背景とし、ゆがんだ運命をたどるある人物の視点からその罪を暴く内容。「南京照相館」は「孤注一擲」でもメガホンを執った申奥氏が監督で、南京大虐殺における日本軍の罪状をテーマとし、リウ・ハオランやエリック・ワンが出演する。「坪石先生」は抗日戦争の時期に学生を守るため教育を続けた知識人の物語で、主演はツェー・クワンホウである。

また、「聊斎:蘭若寺」、「羅小黒戦記2」、「浪浪山小妖怪」といったアニメ映画も続々と公開される。7月12日上映予定の「聊斎:蘭若寺」は「長安三万里」に次ぐ追光動画の制作で、蒲松齢の「聊斎志異」を原作に「嶗山道士」「蓮花公主」「聶小倩」「画皮」「魯公女」などの短編をつなぎ合わせ、奇怪で幻想的な東洋の世界を描いている。「羅小黒戦記2」は人気を集めた前作の続編であり、黒猫の小黒の冒険を描く。「浪浪山小妖怪」は、「中国奇譚」シリーズの短編アニメ「小妖怪的夏天」を元にしたもので、小ブタの妖怪が浪浪山を離れ仲間と旅に出る冒険ストーリーである。

その他、同名の舞台劇を原作としチェン・ペイシが監督・主演であるコメディ映画「戯台」、チャン・ツィフォンが主演のサスペンス「花漾少女殺人事件」、ジャン・チーミンやチャン・イーファンがメインキャストの恋愛映画「7天」、同じく恋愛ものでチュー・チューシャオやワン・ズーウェンらが演じる「有多雲像你」、曹保平監督でグオ・チーリン主演のコメディ犯罪映画「脱韁者也」などもある。

この夏休み枠におけるハリウッド作品は、先駆けて公開された新作のうち、「ジュラシック・ワールド」を除き「新・ヒックとドラゴン」、「F1/エフワン」、「ミッション:インポッシブル8:最終決算」らがSNSでかなりの口コミを集めたが、売り上げは今一つである。一方で、名探偵コナンの劇場版「漆黒の残影」は封切り直後ながら安定した伸びを見せ、シリーズ作品で最高の興収となる勢いで、夏休み枠では4位につけている。

これから封切りされる洋画を挙げると、ジェームズ・ガン監督の新作「スーパーマン」が7月11日に公開予定である。最近とりわけ好調であった「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズを手掛けたガン監督は中国のファンから「滚監督」と呼ばれ、ブラックユーモアや音楽を作品に取り入れ、従来とは違った方法でスーパーヒーローを造り、独自の魅力をキャラクターとしている。音楽の趣味もなかなかの評判である。ただし今回のあらすじからは、「スーパーマン」の新たなアイデアが見えてこない。ヒーローの成長と葛藤にスポットを当て、力と責任のはざまに苦しむ姿を表現するという前例のない物語であり、過去に何度も映像化されているIPのため、新鮮味を打ち出せるかガン監督の手腕が問われることになる。

7月25日公開予定でマーベルの最新作となるSFアドベンチャー「ファンタスティック・フォー:初の挑戦」は、人気作品の「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ワンダヴィジョン」を手掛けたマット・シャックマン氏がメガホンを執っている。ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービーらが出演し、レトロでフューチャーな平行宇宙を舞台に、レジェンドなヒーローが使命と家族のきずなとのはざまに悩む姿を描く。家族を中身に取り入れてスーパーヒーローの人知れぬ弱さを見せた形になっている。シャックマン氏は「ワンダヴィジョン」でレトロな美学と今風の出来事をうまく混じり合わせており、MCUに新たな美学をもたらすことになりそうである。

8月16日には、ドリームワークスのアニメ「バッドガイズ」が3年ぶりに続編公開となる。同名漫画を原作としたこのシリーズは、悪名高き犯罪グループが改心して良い市民になろうと奮闘するコメディだ。中国本土で3.35億元の興収を記録した前作を上回る結果を残せるか。結果は間もなく見えてくる。

(中国経済新聞)