一汽トヨタ販売公司、北京から天津へ移転

2025/05/29 09:26

5月26日、北京のオフィスビル「ワールド・ファイナンシャル・センター(WFC)」のテナント営業部門は、一汽トヨタ汽車販売有限公司(以下「一汽トヨタ販売公司」)が2025年6月中旬にビルを退去し、本社を天津へ移転することを明らかにした。

この本社移転の噂は2024年中頃から業界内でささやかれていた。2024年7月には、「本社機能が天津工場に移され、従業員の大幅な人員調整が行われる可能性がある」との報道も出ていたが、今回それが現実のものとなった。

一汽トヨタ販売公司が本社を移転する背景には、中国国内の自動車市場における同社の苦境がある。中国乗用車市場情報連合会(乗聯会)のデータによれば、2021年から2024年にかけての一汽トヨタの新車販売台数はおおむね80万台前後で推移しているものの、成長率は年々鈍化し、2024年にはマイナス成長(-0.5%)となった。

こうした状況の中、一汽トヨタは電動化やスマート化といった市場の急激な変化に対応するため、コスト削減と業務効率化に本腰を入れ始めている。今回の本社移転も、そうした施策の一環だ。

WFCの関係者によれば、一汽トヨタ販売公司は2012年から同ビルに入居しており、9,000平方メートルを月額1平方メートルあたり240元で借りていた。年間賃料は3,002万元(約6億円)以上に上ると見られており、拠点移転によってこの経費を大幅に削減する狙いもあるとみられる。

さらに、トヨタ自動車が5月に発表した2024年度の連結決算では、中国市場での売上が1,827億円(約90.6億元)と前年から6.6%減少しており、中国市場への対応強化が急務となっている。

一汽トヨタでは2017年以降、研究開発、生産、販売の一体化を進めるための社内改革が進められてきた。2021年には販売会社が製造側に対してレポートする体制となり、従来の「買い取り・販売」モデルから「産販一体」へと実質的な関係性が転換された。

この点について、乗聯会の崔東樹(ツイ・ドンシュー)秘書長は「これまでの一汽トヨタは、販売部門と生産工場が独立した関係だったが、今後は市場シェアの拡大と利益構造の改善を同時に達成するため、統合が不可避となった」と述べている。

また、2025年に入ってからは、中国人エンジニア主導による開発体制の導入や地場企業との連携を通じた商品サイクルの短縮、積極的な販売促進活動などが奏功し、一汽トヨタの販売は回復基調にある。乗聯会のデータによると、2025年1〜4月の小売販売台数は23.7万台で、前年同期比15.2%の増加を記録している。

本社移転により、今後一汽トヨタの販売戦略や組織運営がどのように進化するか、業界内からも注目が集まっている。

(中国経済新聞)